異世界転移して岩塩を渇望していたらイケメン冒険者がタダでくれたので幸せです

緑虫

文字の大きさ
11 / 21

11 親子の優しさ

しおりを挟む
 ひと通り泣いた後は二人に「ごめんなさい」と頭を下げて、食事を再開した。

「謝る必要はどこにもないぞ」とか「親父に言いにくいことがあったら後で言えよ。俺がちゃんと言ってやるからなー」とか、二人に慰められてしまう。何だかすごく気を使わせてしまったのが申し訳ない。

 よく考えたら、これまでこちらの世界で一度も涙を流したことはなかった。なのに泣いちゃって、すごく恥ずかしい。多分ホームシックになったと思われてるんだろうな。

 実際はホームシックとはちょっと違うんだけど、僕の語彙力じゃうまく説明できそうにないから笑い返すに留める。

 二人とも、僕に笑顔が戻ったのを見てホッとした様子だった。

「本当にヤバいしか出てこないくらいの旨さだなー! イクトはマジで天才だよな!」

 それにしても、明るい笑顔でとにかく褒めてくれるユージーンさんはすごい。人を褒めることも褒められることも全然慣れていなかった僕は、ユージーンさんに褒められる度に擽ったくて仕方がない。いい意味の擽ったさではあったけど。

 ローランさんが、ユージーンさんをギロリと睨む。

「お前なあ、にしてもちょっと食い過ぎだぞ!」

 ユージーンさんが、笑いながらべーっと舌を出した。こういうのはこっちの世界も同じらしい。

「うっせーよ。親父が食いすぎて病気にならないように俺が食べてやってるんだよ! それにこんな旨いもん、独り占めしたいだろーが」

 ローランさんが、くはっと笑う。

「思い切り本音ダダ漏れしてんじゃねーか」
「素直なのが俺の魅力なの」

 相変わらずポンポン言い合う親子だなあと微笑ましく眺めている間に、大量に作った料理は全てなくなってしまった。予想外だった。

 かなり作った筈だったのに、大半はユージーンさんの腹の中に収まっている。本当にものすごい食べたな、この人。

 三人で横並びになってわいわい言いながら、食器を片付けた。風呂に入って歯磨きもしてさあ寝ようというところで、ユージーンさんが僕の肩を抱き寄せる。風呂上がりでほかほかした手が、温かい。

 まだ濡れた青い髪が、僕のこめかみに触れた。ユージーンさんは大雑把な性格なのかもしれない。

「なあイクト、一緒に寝ようぜ」
「えっ」

 一緒に寝る? え、どういう意味!? えっ、えっ!? と思っていたら。

 ユージーンさんは照れくさそうに頭を掻いた。

「親父は色々と聞いてるんだろうけど、俺は異世界の話をまだ聞いてないからさ。気になっちゃって仕方なくてさあ」
「あ、異世界の話……はは、あはは」

 ちょっとドキッとしてしまった自分が恥ずかしい。単に異世界の話を聞きたいだけなのに、ユージーンさんの距離感がかなり近いのとイケメンさんなこともあって、思わず意識してしまった。うう、穴が入ったら飛び込みたい。

「ま、まあ……いいですけど」
「やったー! じゃあ部屋に行こうなー」

 曇りのない笑顔を向けられて、やっぱりちょっとドギマギしてしまった。かつてこんな距離で母さん以外の人と接触したことがなかったからだ、きっと。

「でも、そんなに面白い話じゃないかもですけど」
「そんなこと言うなって。イクトのこと、もっと詳しく知りたいんだよ」
「……はい、じゃあ」

 小さく微笑むと、ユージーンさんの顔に満面の笑みが広がった。

 ユージーンさんの真っ直ぐな物言いは、日頃あまりはっきりと主張できない僕には羨ましく感じる。押しは強いけど、不思議と嫌だと思わないのは、元の世界の陽キャの人たちと違って僕に対する好意が感じられるからだろうか。

「ほら、行こう行こう!」
「あはは、はい」

 余程楽しみなんだろう。嬉しそうにニコニコ笑う大人の男性なのに子供みたいな顔を見ていたら、自然と笑みがこぼれた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

処理中です...