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9 家を建てる
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グイードと過ごす平和な暮らしにすっかり慣れ切った俺だったけど、相変わらず温暖な気候の中、今はちょっぴり汗をかいていた。
洞穴もいいけど、どうせなら家に住みたくない? という話になって、木材を運んだりしていたからだ。
原因は、軽く雨が降った日にあった。
外に出るのも億劫だし、とグイードと話をしながらゴロゴロしていた時、雨を避ける為か俺とグイードの洞穴に侵入者が現れたんだ。
「ぎやああああっ! ネズミ! ネズミ怖い!」
俺が住んでいたボロアパートはリアルにボロアパートだったので、時折こいつらが出た。俺の貴重な財産である米を齧られたりと、結構、いやかなり大変だった記憶は新鮮なままだ。
朝起きて米袋を見たら一箇所に齧られた穴が空いていて米が床に散らばっていたのを見た瞬間、声にならない悲鳴が出たよ。ネズミ自体も怖いけど、それ以上に食料が無駄になるのが恐怖だった。本当勘弁してくれ。
ということで、ネズミは俺の天敵と言っても過言ではない。それが「チュウッ」なんて言いながら入り込んできたんだから、溜まったもんじゃなかった。
「高床式! 今すぐ高床式倉庫おおおっ!」
「落ち着けヨウタ、お前の言っていることは分からん」
グイードの黒い背中によじ登りながら高床式倉庫を連呼する俺の為にグイードがネズミを追い払ってはくれたけど、この日から俺の頭の中は高床式倉庫で一杯になったんだ。
俺のつたない高床式倉庫の説明を受けたグイードは、「要は鼠返しが付いた家に住みたいということだな」と言った。そうそれ! 鼠返し! こっちの世界に存在してよかったよ、話が早い!
ということで、ないなら作ればいいじゃんの精神で俺達は家を作ることにした。
ちなみにグイードも一族の狼たちと一緒に暮らしていた時は家の中に住んでいたそうだから、「家ってなに?」というところから説明せずに済んでよかった。まあお城の存在を知ってたくらいだもんね、知ってるか。
と言っても、俺はひ弱なシティボーイ。片やグイードはどれだけ賢かろうが狼。
板ってどうやって削り出すの? という初歩的問題が勃発し、最終的に「四角に積み上げた木材の上に丸太を敷き詰めて、後は隙間を粘土とかで何とか詰めてみよう」というフワッフワな作戦を決行することになった。
グイードが、丸太を魔法で切り倒す。それからグイードが丸太を咥えて引っ張っていき、グイードが四角に丸太を敷き詰めていった。
ん? グイードしか作業してないって? 勿論、最初は俺だってちょっとは位置を直したりしてたんだよ? だけど「お前が触ると面倒なことになる気しかしないから見てろ」と言われちゃ、仕方がないだろ。
結局見ている以外することがなくて早々に眠くなった俺は、積み重ねられた丸太に腰掛けようとして――つまずいて転んだ。
「ぶへっ!」
「ヨウタ!」
だけど、つまずいた先がよろしくなかった。丸太が裂けた部分に手を突いてしまい、腕がずっぽりと裂け目の中に入っちゃったんだ。手のひらと腕をグサッ! ザクッ! という肉を切り裂く音に少し遅れて、じわじわと痛みが押し寄せてくる。
「ツ――ッ!」
「ヨウタ、怪我をしたか!」
慌てて駆け寄ってきてくれたグイードが、俺の腕が丸太の裂け目にすっぽりと入り込んでしまっているのを目を大きくして見た直後。
前足を丸太の裂け目にドン! と置いた。
「グイード! そこは危ないよ!」
「お前の怪我の方が重要だ!」
メキメキ、と不快な音を立てて、丸太の裂け目がグイードの前足によって開いていく。だけど、グイードの前足までどんどん傷だらけになっていくじゃないか。黒い毛の奥から、血がじわりと滲んできている。
「グイード、怪我!」
それでもグイードは、力任せに丸太を引き裂くのを止めなかった。やがて、バキイッ! と派手な音を立てて、丸太が半分に割れる。すっごい力だ。だけど、丸太にグイードの血が付いてしまっている。
「グイード!」
「俺は平気だ。それよりもお前の怪我を見せろ!」
グイードに急かされて、ようやく自由になった擦り傷だらけの腕を見せた。腕の方は大したことはなかったけど、手のひらの親指と人差し指の間、水かきの部分が血だらけになっている。血が次から次へと溢れてきていて、かなり傷は深そうだ。
痛い。普通に痛い。ぼとぼと地面に血が落ちては吸い込まれていくのを見ていたら、血に慣れてない俺はクラッとしてしまった。
だけど、俺はここでちゃんと思い出したんだ。神様っぽい奴、もとい神様の話を。
「――うん、大丈夫! 神様が怪我とか病気しにくくなるって言ってたし!」
即座にグイードの叱責が飛ぶ。
「馬鹿者! トゲが入っていたらどうする!」
グイードは唸るように言うと、俺のお腹を大きな口で甘噛みし、なんと持ち上げてしまったじゃないか。ぷらーんとぶら下がった俺。うっそ、グイードってどれだけ強いんだよ。
「グ、グイード?」
グイードはぎろりと俺を睨むだけで、何も言わない。まあ口に俺を咥えてるしね。
そのままスタスタと洞穴の寝床まで連れて行かれると、ドスンと丸く座り中心に俺をそっと下ろした。
洞穴もいいけど、どうせなら家に住みたくない? という話になって、木材を運んだりしていたからだ。
原因は、軽く雨が降った日にあった。
外に出るのも億劫だし、とグイードと話をしながらゴロゴロしていた時、雨を避ける為か俺とグイードの洞穴に侵入者が現れたんだ。
「ぎやああああっ! ネズミ! ネズミ怖い!」
俺が住んでいたボロアパートはリアルにボロアパートだったので、時折こいつらが出た。俺の貴重な財産である米を齧られたりと、結構、いやかなり大変だった記憶は新鮮なままだ。
朝起きて米袋を見たら一箇所に齧られた穴が空いていて米が床に散らばっていたのを見た瞬間、声にならない悲鳴が出たよ。ネズミ自体も怖いけど、それ以上に食料が無駄になるのが恐怖だった。本当勘弁してくれ。
ということで、ネズミは俺の天敵と言っても過言ではない。それが「チュウッ」なんて言いながら入り込んできたんだから、溜まったもんじゃなかった。
「高床式! 今すぐ高床式倉庫おおおっ!」
「落ち着けヨウタ、お前の言っていることは分からん」
グイードの黒い背中によじ登りながら高床式倉庫を連呼する俺の為にグイードがネズミを追い払ってはくれたけど、この日から俺の頭の中は高床式倉庫で一杯になったんだ。
俺のつたない高床式倉庫の説明を受けたグイードは、「要は鼠返しが付いた家に住みたいということだな」と言った。そうそれ! 鼠返し! こっちの世界に存在してよかったよ、話が早い!
ということで、ないなら作ればいいじゃんの精神で俺達は家を作ることにした。
ちなみにグイードも一族の狼たちと一緒に暮らしていた時は家の中に住んでいたそうだから、「家ってなに?」というところから説明せずに済んでよかった。まあお城の存在を知ってたくらいだもんね、知ってるか。
と言っても、俺はひ弱なシティボーイ。片やグイードはどれだけ賢かろうが狼。
板ってどうやって削り出すの? という初歩的問題が勃発し、最終的に「四角に積み上げた木材の上に丸太を敷き詰めて、後は隙間を粘土とかで何とか詰めてみよう」というフワッフワな作戦を決行することになった。
グイードが、丸太を魔法で切り倒す。それからグイードが丸太を咥えて引っ張っていき、グイードが四角に丸太を敷き詰めていった。
ん? グイードしか作業してないって? 勿論、最初は俺だってちょっとは位置を直したりしてたんだよ? だけど「お前が触ると面倒なことになる気しかしないから見てろ」と言われちゃ、仕方がないだろ。
結局見ている以外することがなくて早々に眠くなった俺は、積み重ねられた丸太に腰掛けようとして――つまずいて転んだ。
「ぶへっ!」
「ヨウタ!」
だけど、つまずいた先がよろしくなかった。丸太が裂けた部分に手を突いてしまい、腕がずっぽりと裂け目の中に入っちゃったんだ。手のひらと腕をグサッ! ザクッ! という肉を切り裂く音に少し遅れて、じわじわと痛みが押し寄せてくる。
「ツ――ッ!」
「ヨウタ、怪我をしたか!」
慌てて駆け寄ってきてくれたグイードが、俺の腕が丸太の裂け目にすっぽりと入り込んでしまっているのを目を大きくして見た直後。
前足を丸太の裂け目にドン! と置いた。
「グイード! そこは危ないよ!」
「お前の怪我の方が重要だ!」
メキメキ、と不快な音を立てて、丸太の裂け目がグイードの前足によって開いていく。だけど、グイードの前足までどんどん傷だらけになっていくじゃないか。黒い毛の奥から、血がじわりと滲んできている。
「グイード、怪我!」
それでもグイードは、力任せに丸太を引き裂くのを止めなかった。やがて、バキイッ! と派手な音を立てて、丸太が半分に割れる。すっごい力だ。だけど、丸太にグイードの血が付いてしまっている。
「グイード!」
「俺は平気だ。それよりもお前の怪我を見せろ!」
グイードに急かされて、ようやく自由になった擦り傷だらけの腕を見せた。腕の方は大したことはなかったけど、手のひらの親指と人差し指の間、水かきの部分が血だらけになっている。血が次から次へと溢れてきていて、かなり傷は深そうだ。
痛い。普通に痛い。ぼとぼと地面に血が落ちては吸い込まれていくのを見ていたら、血に慣れてない俺はクラッとしてしまった。
だけど、俺はここでちゃんと思い出したんだ。神様っぽい奴、もとい神様の話を。
「――うん、大丈夫! 神様が怪我とか病気しにくくなるって言ってたし!」
即座にグイードの叱責が飛ぶ。
「馬鹿者! トゲが入っていたらどうする!」
グイードは唸るように言うと、俺のお腹を大きな口で甘噛みし、なんと持ち上げてしまったじゃないか。ぷらーんとぶら下がった俺。うっそ、グイードってどれだけ強いんだよ。
「グ、グイード?」
グイードはぎろりと俺を睨むだけで、何も言わない。まあ口に俺を咥えてるしね。
そのままスタスタと洞穴の寝床まで連れて行かれると、ドスンと丸く座り中心に俺をそっと下ろした。
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