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8 パンツがなくとも
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不機嫌になってしまったグイードの見た目よりずっと柔らかい毛並みを、ヨシヨシと撫でる。
グイードは、俺が手を伸ばすと結構な確率で少しこっちに傾けて押し付けてくるんだ。もうこれ、可愛い以外の何ものでもないよね。グイードの本能が俺のゴッドハンドを求めてるって証拠だろ。もふもふ最高! もふもふフォーエバー!
「これまでの神子はさ、見る目がなかったんだよ。狼はこーんなに優しくて格好いいのになー。俺が選ぶんだったら狼を選ぶのは間違いないからさ、元気出せよ」
「ゴホッ」
「どうしたの? 大丈夫?」
「……問題ない」
「じゃあ話の続きよろしく!」
「……」
その後のグイードの話によると、まあ当然そうだろうなとは思ってたけど、獣王の同種はその百年の間にとっても栄えるんだそうだ。
権力がある内に派閥を拡大しておけ的な? 獣がキャンキャンにゃーにゃー言いながら会議しているメルヘンな第一印象だったのに、今じゃすっかり腹黒そうな政治家の印象だよ。ささやかな俺の夢を返してくれ。
それから、グイードは神話についても教えてくれた。
争いばかりだった世界を救う為に神によって遣わされた、初代宝珠の神子に降りかかった悲しい結末。心から悔やんだ獣王に神が与えた慈悲。ここでようやく、俺は合点がいく。
「やっぱりあの声って神様だったのか! 薄々そっかなーって思ってたけど、やけにノリが軽いから本当かなってちょっぴり疑ってたんだよね」
「ノリが軽い? どういう意味だ」
俺が初対面の時――と言っても顔は見てないけど――に好き勝手評されたことをグイードに熱く語ると、グイードにあっさり返された。「本当のことじゃないか」ってさ。解せぬ。
大まかな全体像を聞いて、ようやくなんでグイードが俺が宝珠の神子らしいと知ってから突然突き放そうとしたかを理解した。
本当に事実が神話の通りなら、宝珠の神子である俺は番いになる獣を探して子供をもうけないといけない。じゃないと、次の獣王がいなくなっちゃうからだ。
到達した結論に、俺は不服を表明することにした。
「なんだよそれ! それじゃ俺が種馬ってことじゃないか!」
「種馬とはなんだ。ヨウタの言うことは時折訳が分からん」
そうか。人為的に繁殖させることがない世界なら、種馬が通じないのも分かる。ということで俺がざっと種馬の説明をすると、グイードが軽蔑の眼差しで俺を見てきた。
「人間とは……随分なことをするものなのだな」
「俺じゃないよ? 俺じゃないからね?」
「それは分かっている。だが確かに宝珠の神子に求められる役割は、お前の言うところの種馬な意味合いと近いだろうな。種というと若干齟齬はあるが……」
「うわああんっ! やだ! グイードが一生俺を養って!」
ひし、としがみつくと、グイードが呆れたような鼻息を吐いた。そんな態度を取っても、俺はこの手を離さないぞ!
「……まあとにかく、これがこの世界の大まかな説明だ。まさかこれだけのことを説明するのにこんなに何日もかかるとは思わなかったがな」
ジト目で見られて、俺は下唇を突き出した。
「俺のせいみたいに言うなよ」
「大体がお前のせいだ」
「時間はたっぷりあるだろ」
「……はあ」
説明が遅々として進まなかった理由は、明白だった。
俺がすぐにグイードに抱きついては「もふもふー! もふもふー!」と撫でまくるとグイードがでろんとしてしまって会話が終了になってしまうのと、やっぱりグイードの毛皮に包まれているとすぐに眠くなっちゃって……あふ。
合間にグイードの好物とかグイードが撫でられて気持ちいいところとかを聞きまくったら、「俺のことはいい。真剣に聞け」と怒られた。なんだよ、グイードのことの方が知りたいのにさ。
パッと顔を上げて、グイードに笑顔を見せる。
「とりあえずこれで聞かないといけないっぽいことは全部聞いた?」
「嫌々聞いていた感が凄いんだが」
苦笑するグイードの首に抱きついてスリスリした。はあー、もふもふ大好き。
「義務感で聞いてたけど、とりあえず話を聞いた上でやっぱり俺はグイードといるって決めたからな!」
「だが、次代獣王が……」
「そんな一日二日で決めるようなことじゃないだろ? 初代神子だって神話の感じじゃ年単位で活動してたっぽいし」
「要は先延ばし……」
グイードの呆れ口調にも、もう慣れた。こんなことを言ってる癖して実は喜んでいるのは、グイードの尻尾がパタパタと嬉しそうに揺れているから分かってるもんね。
「……グイード。俺はここにいたい。ここでグイードと穏やかに暮らしたい」
「ヨウタ……」
たとえパンツがなくて多少落ち着かないことはあっても、ここには悪意がない。優しさしかないから――。
「グイード、俺を拒絶しないで」
グイードの首に顔を埋めると。
「……する訳がないだろう」
「へへ」
グイードが、俺の身体を包み込むように身体を丸める。
この時の俺は、まさか幸福しかないグイードとの穏やかな生活があっさりと奪われてしまうとは考えてもみなかった。
グイードは、俺が手を伸ばすと結構な確率で少しこっちに傾けて押し付けてくるんだ。もうこれ、可愛い以外の何ものでもないよね。グイードの本能が俺のゴッドハンドを求めてるって証拠だろ。もふもふ最高! もふもふフォーエバー!
「これまでの神子はさ、見る目がなかったんだよ。狼はこーんなに優しくて格好いいのになー。俺が選ぶんだったら狼を選ぶのは間違いないからさ、元気出せよ」
「ゴホッ」
「どうしたの? 大丈夫?」
「……問題ない」
「じゃあ話の続きよろしく!」
「……」
その後のグイードの話によると、まあ当然そうだろうなとは思ってたけど、獣王の同種はその百年の間にとっても栄えるんだそうだ。
権力がある内に派閥を拡大しておけ的な? 獣がキャンキャンにゃーにゃー言いながら会議しているメルヘンな第一印象だったのに、今じゃすっかり腹黒そうな政治家の印象だよ。ささやかな俺の夢を返してくれ。
それから、グイードは神話についても教えてくれた。
争いばかりだった世界を救う為に神によって遣わされた、初代宝珠の神子に降りかかった悲しい結末。心から悔やんだ獣王に神が与えた慈悲。ここでようやく、俺は合点がいく。
「やっぱりあの声って神様だったのか! 薄々そっかなーって思ってたけど、やけにノリが軽いから本当かなってちょっぴり疑ってたんだよね」
「ノリが軽い? どういう意味だ」
俺が初対面の時――と言っても顔は見てないけど――に好き勝手評されたことをグイードに熱く語ると、グイードにあっさり返された。「本当のことじゃないか」ってさ。解せぬ。
大まかな全体像を聞いて、ようやくなんでグイードが俺が宝珠の神子らしいと知ってから突然突き放そうとしたかを理解した。
本当に事実が神話の通りなら、宝珠の神子である俺は番いになる獣を探して子供をもうけないといけない。じゃないと、次の獣王がいなくなっちゃうからだ。
到達した結論に、俺は不服を表明することにした。
「なんだよそれ! それじゃ俺が種馬ってことじゃないか!」
「種馬とはなんだ。ヨウタの言うことは時折訳が分からん」
そうか。人為的に繁殖させることがない世界なら、種馬が通じないのも分かる。ということで俺がざっと種馬の説明をすると、グイードが軽蔑の眼差しで俺を見てきた。
「人間とは……随分なことをするものなのだな」
「俺じゃないよ? 俺じゃないからね?」
「それは分かっている。だが確かに宝珠の神子に求められる役割は、お前の言うところの種馬な意味合いと近いだろうな。種というと若干齟齬はあるが……」
「うわああんっ! やだ! グイードが一生俺を養って!」
ひし、としがみつくと、グイードが呆れたような鼻息を吐いた。そんな態度を取っても、俺はこの手を離さないぞ!
「……まあとにかく、これがこの世界の大まかな説明だ。まさかこれだけのことを説明するのにこんなに何日もかかるとは思わなかったがな」
ジト目で見られて、俺は下唇を突き出した。
「俺のせいみたいに言うなよ」
「大体がお前のせいだ」
「時間はたっぷりあるだろ」
「……はあ」
説明が遅々として進まなかった理由は、明白だった。
俺がすぐにグイードに抱きついては「もふもふー! もふもふー!」と撫でまくるとグイードがでろんとしてしまって会話が終了になってしまうのと、やっぱりグイードの毛皮に包まれているとすぐに眠くなっちゃって……あふ。
合間にグイードの好物とかグイードが撫でられて気持ちいいところとかを聞きまくったら、「俺のことはいい。真剣に聞け」と怒られた。なんだよ、グイードのことの方が知りたいのにさ。
パッと顔を上げて、グイードに笑顔を見せる。
「とりあえずこれで聞かないといけないっぽいことは全部聞いた?」
「嫌々聞いていた感が凄いんだが」
苦笑するグイードの首に抱きついてスリスリした。はあー、もふもふ大好き。
「義務感で聞いてたけど、とりあえず話を聞いた上でやっぱり俺はグイードといるって決めたからな!」
「だが、次代獣王が……」
「そんな一日二日で決めるようなことじゃないだろ? 初代神子だって神話の感じじゃ年単位で活動してたっぽいし」
「要は先延ばし……」
グイードの呆れ口調にも、もう慣れた。こんなことを言ってる癖して実は喜んでいるのは、グイードの尻尾がパタパタと嬉しそうに揺れているから分かってるもんね。
「……グイード。俺はここにいたい。ここでグイードと穏やかに暮らしたい」
「ヨウタ……」
たとえパンツがなくて多少落ち着かないことはあっても、ここには悪意がない。優しさしかないから――。
「グイード、俺を拒絶しないで」
グイードの首に顔を埋めると。
「……する訳がないだろう」
「へへ」
グイードが、俺の身体を包み込むように身体を丸める。
この時の俺は、まさか幸福しかないグイードとの穏やかな生活があっさりと奪われてしまうとは考えてもみなかった。
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