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7 世界の成り立ち
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グイードと一悶着あったものの、その後は穏やかな日々が過ぎていった。
あの日を境に、グイードはこちらの世界のことを俺に話してくれるようになった。
「長いことひとりで過ごしていたから、現在はどうなっているか知らないが」と前置きして。
俺の中で一番大きな疑問だった、『大きな狼の姿のグイードが何故普通に会話ができて俺と同レベル――うん、いやひょっとしなくてもグイードの方が頭いいっぽいけど――の知性を持っているか』については、グイードの最初の説明で判明した。
ここは、獣がヒエラルキーの頂点に立つ、獣が支配する獣の世界だったんだ。俺の世界で人間が位置するのと同じところにいるのが、知性のある獣たちなんだって。
じゃあ森に生息しているグイードの餌になっている動物とはどう違うのかと尋ねてみたところ、「中には進化しなかった種族もいる」というあやふやな答えが返ってきた。あれかな? 頭蓋骨的に脳みそが変化に対応できなかったとか?
よく分からないままだったけど、グイードはこの話題に触れるのが嫌そうな雰囲気だったので、それ以上しつこく尋ねるのは控えた。
まあグイードと暮らしている限り、他の獣や動物はあんまり関係ないし。グイードに分けてもらうこともある動物の肉が喋らない種族だとさえ分かれば、うん。
俺なりの理解だけど、進化の過程で知性を得た種族とそうでない種族に分かれた。知性を得た種族が上位の存在になった、ということなんだと思う。
俺のことを変種の猿って言ってたことを考えると猿はどうも進化してない説が有力だけど、聞いたらちょっと悲しくなりそうだからやめておいた。世の中、知らなくていいことはあるし。
で、これまで毎日少しずつグイードからの知識を吸収していった俺の理解は以下の通り。
まず大前提として、この世界は獣が文明を築いたものであること。
大陸の中心には獣国と呼ばれる帝国の首都があって、立派なお城に獣王が住んでいる。帝国の周辺には小国がポチポチとあるけど、ほぼ帝国の従属国だそうだ。
現在の獣王は獅子――つまりライオンで、黄金の仮面を被っているらしい。なんでも、代々獣王に引き継がれている由緒ある仮面なんだって。
ちなみに今の獣王はちょっと変わり者で、歴代の獣王は沢山子供を作って一族を繁栄させてきたけど、今の獣王はずっと独身を貫いていて子供もいないんだとか。
もしかして若い頃に身分違いの恋に落ちて、添い遂げられなかったけど忘れられず――とかだったらロマンチックだなあ、なんてちょっと思ったり。
で、その獣王は毎回決まった種族がなる訳じゃなくて、神子の子供が獣王に任命されるんだって。……えっ?
そのことを聞いた時、俺は愕然としながらグイードに尋ねた。
「え、てことは、もし俺が獣王に会いに行ったら、俺もその内子供を作れとか言われたりするの?」
「行けばそうなるだろうな」
当然とばかりにグイードが頷く。
「うわあ……余計帝国の首都なんか行きたくなくなった! グイード、ずっと俺といてね!」
「ヨウタ、お前は全く……」
呆れ口調になりながらも、俺の顔に鼻先を押し付けてスリスリしてくれるグイード。うう、グイードから絶対離れないようにしよう。
そもそもさ、俺にとって動物は愛玩対象であって性欲の対象ではないから、かなり無理がある気がする。え、普通に無理だよね? ……これ以上は考えるのやめよう。
「グイード、続き話して」
「――神子の子供である獣王だが」
「うん」
その後百年間、獣王として世界の平和を守るのが獣王の大事な役割なんだそうだ。
普通の獣は、種族にもよるらしいけど人間とほぼ変わらない寿命を持っている。だけど神子の子供である獣王だけは長生きで、次の神子が降りてくるまでは殆ど年を取らないんだとか。
理由は宝珠の恩恵がどうのっていうのが通説らしいけど、本当のことは分かっていない。
ちなみにずっと気候が狂っていたのは、獣王が子孫繁栄させていなくて、世界にもたらされる宝珠パワーが足りてないんじゃないかって説もあるんだとか。こっちもこっちで子供を作れとか言われてるのかな。ちょっと同情する。
基本、獣たちは同種としか番わない。稀に似通った種族間で番うこともあるけど、メジャーじゃないらしい。同族意識が強いんだろうなと思っていたら、獣国の古くからの法律で異種族間の婚姻は制限されているんだって。
なんで? てグイードに聞いたら、「知らん」と返ってきた。だけどその後ボソリと言った言葉が、きっと本当のところなんだと思う。
「獣王を務めた種族は選民意識が強くなるからな。他種族の血が混じるのを厭うんじゃないか」
「あー。ありがちだね」
うんうんと頷いた。王家の血がーとか、ファンタジーでもエルフの血がーとかってあるあるネタだもんなあ。じゃあ獣王一家って鼻持ちならないセレブなのかな。うわー無理。もう絶対合わないの決定。俺は根が庶民なので遠慮しておきます。
ふと気になって、グイードの毛をもふもふと撫でながら尋ねる。
「ちなみに狼はどうなの? 過去に獣王を務めたことってあるのか?」
「……ない筈だ」
ぶすっとなってしまった。もしかして、帝国の首都から離れた場所に暮らしている理由のひとつにそれもあったりして。追いやられる的なさ。
グイードが不機嫌になってしまったのは完全に俺のせいなので、お詫びにグイードをヨシヨシと慰めることにした。
あの日を境に、グイードはこちらの世界のことを俺に話してくれるようになった。
「長いことひとりで過ごしていたから、現在はどうなっているか知らないが」と前置きして。
俺の中で一番大きな疑問だった、『大きな狼の姿のグイードが何故普通に会話ができて俺と同レベル――うん、いやひょっとしなくてもグイードの方が頭いいっぽいけど――の知性を持っているか』については、グイードの最初の説明で判明した。
ここは、獣がヒエラルキーの頂点に立つ、獣が支配する獣の世界だったんだ。俺の世界で人間が位置するのと同じところにいるのが、知性のある獣たちなんだって。
じゃあ森に生息しているグイードの餌になっている動物とはどう違うのかと尋ねてみたところ、「中には進化しなかった種族もいる」というあやふやな答えが返ってきた。あれかな? 頭蓋骨的に脳みそが変化に対応できなかったとか?
よく分からないままだったけど、グイードはこの話題に触れるのが嫌そうな雰囲気だったので、それ以上しつこく尋ねるのは控えた。
まあグイードと暮らしている限り、他の獣や動物はあんまり関係ないし。グイードに分けてもらうこともある動物の肉が喋らない種族だとさえ分かれば、うん。
俺なりの理解だけど、進化の過程で知性を得た種族とそうでない種族に分かれた。知性を得た種族が上位の存在になった、ということなんだと思う。
俺のことを変種の猿って言ってたことを考えると猿はどうも進化してない説が有力だけど、聞いたらちょっと悲しくなりそうだからやめておいた。世の中、知らなくていいことはあるし。
で、これまで毎日少しずつグイードからの知識を吸収していった俺の理解は以下の通り。
まず大前提として、この世界は獣が文明を築いたものであること。
大陸の中心には獣国と呼ばれる帝国の首都があって、立派なお城に獣王が住んでいる。帝国の周辺には小国がポチポチとあるけど、ほぼ帝国の従属国だそうだ。
現在の獣王は獅子――つまりライオンで、黄金の仮面を被っているらしい。なんでも、代々獣王に引き継がれている由緒ある仮面なんだって。
ちなみに今の獣王はちょっと変わり者で、歴代の獣王は沢山子供を作って一族を繁栄させてきたけど、今の獣王はずっと独身を貫いていて子供もいないんだとか。
もしかして若い頃に身分違いの恋に落ちて、添い遂げられなかったけど忘れられず――とかだったらロマンチックだなあ、なんてちょっと思ったり。
で、その獣王は毎回決まった種族がなる訳じゃなくて、神子の子供が獣王に任命されるんだって。……えっ?
そのことを聞いた時、俺は愕然としながらグイードに尋ねた。
「え、てことは、もし俺が獣王に会いに行ったら、俺もその内子供を作れとか言われたりするの?」
「行けばそうなるだろうな」
当然とばかりにグイードが頷く。
「うわあ……余計帝国の首都なんか行きたくなくなった! グイード、ずっと俺といてね!」
「ヨウタ、お前は全く……」
呆れ口調になりながらも、俺の顔に鼻先を押し付けてスリスリしてくれるグイード。うう、グイードから絶対離れないようにしよう。
そもそもさ、俺にとって動物は愛玩対象であって性欲の対象ではないから、かなり無理がある気がする。え、普通に無理だよね? ……これ以上は考えるのやめよう。
「グイード、続き話して」
「――神子の子供である獣王だが」
「うん」
その後百年間、獣王として世界の平和を守るのが獣王の大事な役割なんだそうだ。
普通の獣は、種族にもよるらしいけど人間とほぼ変わらない寿命を持っている。だけど神子の子供である獣王だけは長生きで、次の神子が降りてくるまでは殆ど年を取らないんだとか。
理由は宝珠の恩恵がどうのっていうのが通説らしいけど、本当のことは分かっていない。
ちなみにずっと気候が狂っていたのは、獣王が子孫繁栄させていなくて、世界にもたらされる宝珠パワーが足りてないんじゃないかって説もあるんだとか。こっちもこっちで子供を作れとか言われてるのかな。ちょっと同情する。
基本、獣たちは同種としか番わない。稀に似通った種族間で番うこともあるけど、メジャーじゃないらしい。同族意識が強いんだろうなと思っていたら、獣国の古くからの法律で異種族間の婚姻は制限されているんだって。
なんで? てグイードに聞いたら、「知らん」と返ってきた。だけどその後ボソリと言った言葉が、きっと本当のところなんだと思う。
「獣王を務めた種族は選民意識が強くなるからな。他種族の血が混じるのを厭うんじゃないか」
「あー。ありがちだね」
うんうんと頷いた。王家の血がーとか、ファンタジーでもエルフの血がーとかってあるあるネタだもんなあ。じゃあ獣王一家って鼻持ちならないセレブなのかな。うわー無理。もう絶対合わないの決定。俺は根が庶民なので遠慮しておきます。
ふと気になって、グイードの毛をもふもふと撫でながら尋ねる。
「ちなみに狼はどうなの? 過去に獣王を務めたことってあるのか?」
「……ない筈だ」
ぶすっとなってしまった。もしかして、帝国の首都から離れた場所に暮らしている理由のひとつにそれもあったりして。追いやられる的なさ。
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