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16 帰りたいのに
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俺に結婚願望がないなんていうまさかの展開に、エリンも戸惑っているみたいだ。
だけど伴侶なんて一生のことを、俺の意思総無視で決められたくない。
そもそも俺の理想は恋愛結婚なんだ! 愛のない結婚なんて絶対御免だからな!
「俺の世界では違うの。神子本人が望んでないんだよ? 勘弁してってば」
「勿論、神子様のご意思が優先されるべきです」
俺がぶすっと膨れると、そこはきっぱりと言い切ったエリンが更に唸る。
「ですが正直なところ、神子様をお連れになったとすでに帝都中が歓喜で湧いている中、その、種族として微妙な狼の元に送り出すことは……かなり厳しいかと」
「そんなの、そっちの勝手な都合だろ!」
なんだよそれ! 勝手に連れてきておいて、自分勝手過ぎるだろ!
「も、勿論私は何とかして差し上げたいと思っております! ですが世論的に厳しいという話でして……っ!」
じわじわと、涙が滲んできた。
もう嫌だ。今すぐグイードのもふもふに包まって、「嫌な夢を見た、怖かった」って言ってグイードに甘えたい。
エリンがワタワタと焦った。
「ああ、神子様! 泣かないで下さいまし! これはあくまで獣王様や帝都の民がどう思うかを推測しただけで、本当に私の本意ではございませんから!」
するとエリンが、あ、という表情に変わる。今度はどうした。
「いいことを思いつきました! 神子様がいなくなられるのではなく、その狼をこちらに招くことなら可能性としてはまだあるのかと!」
「グイードをこっちに?」
そりゃ勿論、グイードと再会できるに越したことはない。でもこっちに来るのって、グイードにとってはどうなんだろう。だって、帝都は獣化した獣人はウエルカムじゃないんだろ?
確かにグイードは決してあの場所に好んで住んでいた訳じゃなかったと思うけど、だからってこっちに呼び寄せるなんて完全に俺都合――とまで考えて、ハッと気付いた。
いや待て俺! 単細胞すぎて騙されるところだった、危険! これさりげなく獣人側の押し付け入ってるから!
グイードを呼び寄せちゃったら、グイードが完全に人質になっちゃうじゃん。呼び寄せて住まわせてやってんだから誰かと結婚しろなんて言われて迫られたら……!
ひいー、危なかった、よく気付いた俺! 俺は帰りたいって言ってんのに丸め込まれるところだった……!
心臓をばくばく言わせながら、こっそり小さな息を吐く。
だけど現実問題として、誰かの協力なしにはきっと城から出ることすら叶わない。考えろ俺! 単細胞なりに、必死で考えるんだ!
「――あ」
思い出したぞ! 困った時は、優先順位を決めるんだ! 金が残り少ない時によくやった取捨選択。今やるべきはあれだよ! 俺ってば冴えてるかも!
まず最優先はグイードの安全、それと俺が結婚させられないことだ。それから、何とかしてさっさとグイードと合流すること。
ここに残ったら、いいように言い包められて結婚させられる気しかしない。俺は騙されやすいみたいなことを、神様も言ってたし!
……グイードがいない今、俺はひとりで戦わないといけないんだよな。心細いよグイード……グイードのもふもふな毛並みに埋もれて、嫌なことを全部忘れたい。
グイードの温かい毛並みを思い出したら、息苦しさを覚えるほど淋しくて心細くなってきてしまった。
「グイードは俺を助けてくれた恩人なんだよ。きっと俺が急にいなくなって心配してる……お願い、俺をここから出して」
「神子様……」
エリンが困ったように呟く。実際、とんでもなく困っているんだとは思うけど、それは俺だって同じだ。今頃グイードはどうしてるだろう。俺のことを探し回ってるんじゃないかな。もし怪我でもしてたら、俺――!
「……帝国騎士団の中に、私の兄がおります」
「え?」
小さく鼻をすすった俺の前にエリンが膝を突いて、俺の手を包み込んできた。
「今回の捜索にも参加しておりました。私の方から神子様のご希望を兄に伝えた上で、狼族のお方の状況を確認致します」
エリンは安心させるように小さく頷く。
「突然連れて来られて周りを信用できないのはよく分かります。ですが、私は神子様を裏切るようなことは決して致しません」
「エリン……」
「狼族のお方が心配だとは思いますが、今は暫し堪えていただけませんか」
でも、と言いかける俺の言葉を、エリンが遮る。
「神子様の属性は光かと思われます。獣王様は闇の魔法を得意とするお方。神子様のお話では、今回獣王様は闇魔法を使われたようです。言語道断な所業としか言いようがありませんが、その影響で神子様はかなり弱っておられるのかと」
「これって魔法の影響だったの?」
道理でおかしいと思った。俺の中にあんなに強力な宝珠が入ってるのに、やけに回復が遅いと思ったんだよな。
それにしても、そっか。みんな俺のことを太陽だの明るい気配だの言ってたけど、光属性なのか。で、日光を闇の魔法で遮っちゃったから俺がこんなにへたばってしまったと。
……俺と獣王の相性、最悪じゃん。うわあ、もう近付きたくない。
エリンが祈るような目で俺を見る。
「神子様、お願いです。まずはお身体をお休めになって下さい。必ずや狼族のお方の情報を掴んで参りますから……!」
「エリン……」
確かに、今のこのへろへろな体力じゃここから出ていくことも難しそうだ。悔しいけど、まずは元気になってその間に情報を入手するのが一番の近道なのかもしれない。
渋々にはなったけど、頷く。
「……分かったよ」
「神子様……!」
ぱあっと笑顔になったエリンに、それでも俺は笑いかけることはできなかった。
だけど伴侶なんて一生のことを、俺の意思総無視で決められたくない。
そもそも俺の理想は恋愛結婚なんだ! 愛のない結婚なんて絶対御免だからな!
「俺の世界では違うの。神子本人が望んでないんだよ? 勘弁してってば」
「勿論、神子様のご意思が優先されるべきです」
俺がぶすっと膨れると、そこはきっぱりと言い切ったエリンが更に唸る。
「ですが正直なところ、神子様をお連れになったとすでに帝都中が歓喜で湧いている中、その、種族として微妙な狼の元に送り出すことは……かなり厳しいかと」
「そんなの、そっちの勝手な都合だろ!」
なんだよそれ! 勝手に連れてきておいて、自分勝手過ぎるだろ!
「も、勿論私は何とかして差し上げたいと思っております! ですが世論的に厳しいという話でして……っ!」
じわじわと、涙が滲んできた。
もう嫌だ。今すぐグイードのもふもふに包まって、「嫌な夢を見た、怖かった」って言ってグイードに甘えたい。
エリンがワタワタと焦った。
「ああ、神子様! 泣かないで下さいまし! これはあくまで獣王様や帝都の民がどう思うかを推測しただけで、本当に私の本意ではございませんから!」
するとエリンが、あ、という表情に変わる。今度はどうした。
「いいことを思いつきました! 神子様がいなくなられるのではなく、その狼をこちらに招くことなら可能性としてはまだあるのかと!」
「グイードをこっちに?」
そりゃ勿論、グイードと再会できるに越したことはない。でもこっちに来るのって、グイードにとってはどうなんだろう。だって、帝都は獣化した獣人はウエルカムじゃないんだろ?
確かにグイードは決してあの場所に好んで住んでいた訳じゃなかったと思うけど、だからってこっちに呼び寄せるなんて完全に俺都合――とまで考えて、ハッと気付いた。
いや待て俺! 単細胞すぎて騙されるところだった、危険! これさりげなく獣人側の押し付け入ってるから!
グイードを呼び寄せちゃったら、グイードが完全に人質になっちゃうじゃん。呼び寄せて住まわせてやってんだから誰かと結婚しろなんて言われて迫られたら……!
ひいー、危なかった、よく気付いた俺! 俺は帰りたいって言ってんのに丸め込まれるところだった……!
心臓をばくばく言わせながら、こっそり小さな息を吐く。
だけど現実問題として、誰かの協力なしにはきっと城から出ることすら叶わない。考えろ俺! 単細胞なりに、必死で考えるんだ!
「――あ」
思い出したぞ! 困った時は、優先順位を決めるんだ! 金が残り少ない時によくやった取捨選択。今やるべきはあれだよ! 俺ってば冴えてるかも!
まず最優先はグイードの安全、それと俺が結婚させられないことだ。それから、何とかしてさっさとグイードと合流すること。
ここに残ったら、いいように言い包められて結婚させられる気しかしない。俺は騙されやすいみたいなことを、神様も言ってたし!
……グイードがいない今、俺はひとりで戦わないといけないんだよな。心細いよグイード……グイードのもふもふな毛並みに埋もれて、嫌なことを全部忘れたい。
グイードの温かい毛並みを思い出したら、息苦しさを覚えるほど淋しくて心細くなってきてしまった。
「グイードは俺を助けてくれた恩人なんだよ。きっと俺が急にいなくなって心配してる……お願い、俺をここから出して」
「神子様……」
エリンが困ったように呟く。実際、とんでもなく困っているんだとは思うけど、それは俺だって同じだ。今頃グイードはどうしてるだろう。俺のことを探し回ってるんじゃないかな。もし怪我でもしてたら、俺――!
「……帝国騎士団の中に、私の兄がおります」
「え?」
小さく鼻をすすった俺の前にエリンが膝を突いて、俺の手を包み込んできた。
「今回の捜索にも参加しておりました。私の方から神子様のご希望を兄に伝えた上で、狼族のお方の状況を確認致します」
エリンは安心させるように小さく頷く。
「突然連れて来られて周りを信用できないのはよく分かります。ですが、私は神子様を裏切るようなことは決して致しません」
「エリン……」
「狼族のお方が心配だとは思いますが、今は暫し堪えていただけませんか」
でも、と言いかける俺の言葉を、エリンが遮る。
「神子様の属性は光かと思われます。獣王様は闇の魔法を得意とするお方。神子様のお話では、今回獣王様は闇魔法を使われたようです。言語道断な所業としか言いようがありませんが、その影響で神子様はかなり弱っておられるのかと」
「これって魔法の影響だったの?」
道理でおかしいと思った。俺の中にあんなに強力な宝珠が入ってるのに、やけに回復が遅いと思ったんだよな。
それにしても、そっか。みんな俺のことを太陽だの明るい気配だの言ってたけど、光属性なのか。で、日光を闇の魔法で遮っちゃったから俺がこんなにへたばってしまったと。
……俺と獣王の相性、最悪じゃん。うわあ、もう近付きたくない。
エリンが祈るような目で俺を見る。
「神子様、お願いです。まずはお身体をお休めになって下さい。必ずや狼族のお方の情報を掴んで参りますから……!」
「エリン……」
確かに、今のこのへろへろな体力じゃここから出ていくことも難しそうだ。悔しいけど、まずは元気になってその間に情報を入手するのが一番の近道なのかもしれない。
渋々にはなったけど、頷く。
「……分かったよ」
「神子様……!」
ぱあっと笑顔になったエリンに、それでも俺は笑いかけることはできなかった。
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