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2)鍋焼きうどん
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「ん? あ~……まぁ、それはあとでいいんじゃねぇか? とりあえず飯、食えよ」
そう言われれば、フラフラの頭でその方がいいのかも? と思ってしまい、春霞は誘われるままにちゃぶ台の前に置かれた桜色、翡翠色、空色の座布団の内の翡翠色の座布団に座った。
すると目の前に鍋敷きが置かれ、それから土鍋が置かれる。
「気をつけろよ?」
ひょいっと伸びた手が土鍋の蓋の取っ手を掴むと、温かい湯気と共にお揚げ、海老天、卵、報連相、かまぼこの乗ったうどんが現れた。
「……美味しそう」
「ほれ、七味」
「あ、りがとうございます」
咄嗟に受け取ったものの、それを苦手な春霞はコトン、と横に置くと、土鍋の前に用意された箸を手にした。
「い、いただきます……」
「おう、食え食え」
手を合わせ、頭を下げてから箸を動かし、白い麺をつまんで口に入れると、そのまま啜りこみ、麺の熱さにハフハフと息を吐き熱を追い出しながら食べ進める。
麺つゆをたっぷりと吸って柔らかくなったてんぷらの衣を齧ると中からプリプリのエビが飛び出し、かみ切ったお揚げは口の中でふわふわと甘く、硬くなった白身に箸を入れればとろりと黄身の流れ出て味がまろやかになり、報連相のシャキシャキとした歯ごたえが、心地よい。
「箸休めにどうぞ」
顔をあげれば、先ほど出て言った少女が小さな小皿をトントン、と三つ並べてくれている。
梅の形を模した小さな小皿には、塩昆布、白菜の梅肉あえ、しめじと油揚げのお浸しが載せられていて、つい箸を伸び、どんどん食べ進める。
気が付けば、
「……おいしかった……ごちそうさまでした」
土鍋の中の最後の露の一滴まで飲み干し、ふぅっと息を吐いた春霞は、自分を見つめる二人に気付き、はっとした。
「あ、あの……」
「お口にあってよかったですわ」
梅の絵柄の掛かれた急須を傾け、香ばしい香りのする玄米茶を湯呑に注いだ少女が、それを春霞の前に置く。
「え、あ。あの、ありがとうございます」
「腹も溜まれば気持ちも落ち着くからなぁ。しかし相変わらず辛いのが苦手とは。まだまだ甘ちゃんだなぁ」
ははっと笑いながら湯飲みを傾け茶をすする大男に、少女が手に持っていたお盆を振り下ろす。
ぱかーん! と、乾いた音とともに、大男の頭をはたいた少女はぎろりと彼を睨みつける。
「辛ければ辛いほど好きとかいう馬鹿舌の貴男と霞の君を同じにしないでくださいませ! 霞の君は昔から繊細でいらっしゃるのですわ!」
ぷいっと顔を背ける少女に、はたかれた部分を押さえて大男はブーブーと文句を言う。
「いやいやいやいや! それっくらいで盆で叩くことねぇじゃねぇか! 相変わらず俺には容赦ないな!」
「当然ですわ! 貴男に気遣う必要はありませんもの!」
「ひでぇな! 俺は相変わらず、星駒ちゃん一筋だってのに!」
「貴男の厚意なんて必要ありませんわ!」
ちょっと目を吊り上げ、しかしまんざらでも顔で少女にそういう大男に、ぷいっ! と横を向いて悪態をつく少女。
「あ、あの……」
そんな様子を見ていた春霞は口を開く。
「それより、あの、ここは……あなたたちは誰ですか?」
その言葉に、少女と大男はあぁ、と顔を見合わせ、それから二人、春霞を真正面から向き合った。
「俺は音羽零」
「私は小鳥遊星駒です」
二人はそう言うと、春霞に向かってにっこりと笑う。
「貴男を」
「お前を」
「(お)迎えにやってき(まし)た」
そう言われれば、フラフラの頭でその方がいいのかも? と思ってしまい、春霞は誘われるままにちゃぶ台の前に置かれた桜色、翡翠色、空色の座布団の内の翡翠色の座布団に座った。
すると目の前に鍋敷きが置かれ、それから土鍋が置かれる。
「気をつけろよ?」
ひょいっと伸びた手が土鍋の蓋の取っ手を掴むと、温かい湯気と共にお揚げ、海老天、卵、報連相、かまぼこの乗ったうどんが現れた。
「……美味しそう」
「ほれ、七味」
「あ、りがとうございます」
咄嗟に受け取ったものの、それを苦手な春霞はコトン、と横に置くと、土鍋の前に用意された箸を手にした。
「い、いただきます……」
「おう、食え食え」
手を合わせ、頭を下げてから箸を動かし、白い麺をつまんで口に入れると、そのまま啜りこみ、麺の熱さにハフハフと息を吐き熱を追い出しながら食べ進める。
麺つゆをたっぷりと吸って柔らかくなったてんぷらの衣を齧ると中からプリプリのエビが飛び出し、かみ切ったお揚げは口の中でふわふわと甘く、硬くなった白身に箸を入れればとろりと黄身の流れ出て味がまろやかになり、報連相のシャキシャキとした歯ごたえが、心地よい。
「箸休めにどうぞ」
顔をあげれば、先ほど出て言った少女が小さな小皿をトントン、と三つ並べてくれている。
梅の形を模した小さな小皿には、塩昆布、白菜の梅肉あえ、しめじと油揚げのお浸しが載せられていて、つい箸を伸び、どんどん食べ進める。
気が付けば、
「……おいしかった……ごちそうさまでした」
土鍋の中の最後の露の一滴まで飲み干し、ふぅっと息を吐いた春霞は、自分を見つめる二人に気付き、はっとした。
「あ、あの……」
「お口にあってよかったですわ」
梅の絵柄の掛かれた急須を傾け、香ばしい香りのする玄米茶を湯呑に注いだ少女が、それを春霞の前に置く。
「え、あ。あの、ありがとうございます」
「腹も溜まれば気持ちも落ち着くからなぁ。しかし相変わらず辛いのが苦手とは。まだまだ甘ちゃんだなぁ」
ははっと笑いながら湯飲みを傾け茶をすする大男に、少女が手に持っていたお盆を振り下ろす。
ぱかーん! と、乾いた音とともに、大男の頭をはたいた少女はぎろりと彼を睨みつける。
「辛ければ辛いほど好きとかいう馬鹿舌の貴男と霞の君を同じにしないでくださいませ! 霞の君は昔から繊細でいらっしゃるのですわ!」
ぷいっと顔を背ける少女に、はたかれた部分を押さえて大男はブーブーと文句を言う。
「いやいやいやいや! それっくらいで盆で叩くことねぇじゃねぇか! 相変わらず俺には容赦ないな!」
「当然ですわ! 貴男に気遣う必要はありませんもの!」
「ひでぇな! 俺は相変わらず、星駒ちゃん一筋だってのに!」
「貴男の厚意なんて必要ありませんわ!」
ちょっと目を吊り上げ、しかしまんざらでも顔で少女にそういう大男に、ぷいっ! と横を向いて悪態をつく少女。
「あ、あの……」
そんな様子を見ていた春霞は口を開く。
「それより、あの、ここは……あなたたちは誰ですか?」
その言葉に、少女と大男はあぁ、と顔を見合わせ、それから二人、春霞を真正面から向き合った。
「俺は音羽零」
「私は小鳥遊星駒です」
二人はそう言うと、春霞に向かってにっこりと笑う。
「貴男を」
「お前を」
「(お)迎えにやってき(まし)た」
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