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あくる日のメロンソーダ
グリーンランド〖1〗
しおりを挟む真夏日を超えた坂道には陽炎。追いかけても追いかけても追い付けない。高原を貫く幹線道路。真っ直ぐな日差しに覆われる。慣れない競技用自転車は漕ぎづらい。
「ユラ、飲む?熱中症になっちゃうよ?」
坂道の前で止まったリュウカの自転車は丁寧に磨かれていた。
君が手渡したメロンジュース。もう、真昼の太陽が中点から降り注いで、君の汗が、形の良い額から伝って、顎から直径1.2cmのペットボトルの入口に一滴、滴落ちた。添えられた紅い唇を見つめた。
「要らない? ユラも汗だくでしょ?」
君は微笑んで振り向いた顔を、普段運動に慣れない君より息を切らして、僕が思ったより疲れきっている姿を見て困ったように眉を下げた。
「ごめん。足引っ張ってるね。慣れなくて」
君が口を開くより早く、何故か僕の方が謝って、君が何か言いかけた言葉に僕は黙って遮るように、そのメロンジュースを受け取って飲む。いつもと味は変わらない。ただ慣れたはずのその甘い少しべたつくジュースを飲むと身体が熱くなった。
喉を通り抜けたのは君。その時、僕は触れることもないだろう君の味を僕は知った。
汗は、美しいものだ。正しいものだ。心と身体が正しく作用していないと、発生しない。
唾液は、物を食べたり興奮したりすれば出る。鼻水なんて論外だ。
精液なんて、性的に興奮すれば雄なら誰でも吐く。相手なんて選ばない。でも、僕は興奮してる。身体は情けないもので、サイクリング後の火照った身体から、海綿体に血液が送られ、安易に反応してしまったこんな自分が嫌になる。君には、
「トイレ、まあ、山だから。ちょっと行儀悪いけど」
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