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人魚の恋と蒼い月
ブルームーン〖1〗
しおりを挟むずっと一緒だった。幼稚園、小学校、中学校、高校。でも、もうそれきりになるんだね。見納めの学ランが少しだけ、せつない。
でも、これが運命。良かった。もうすぐ君は十八歳になるね。
『死の穢れ』
がつきまとうの運命の歯車も、もうすぐ切れる。だから、もう僕と居る必要はないんだね。今僕がここにいるのは、君を『死の穢れ』から守るために海神様と、期限つきの約束をしたから。
君は知らないだろうけど。僕は君たちが知る『人魚』っていう生き物なんだ。本当の僕の姿をみたら君は化物って呼ぶかもしれないね。
少し、つらいけれど仕方ないね。僕の居場所は海なんだ。君の居場所は大地。違うんだ、生き物として。最初から。
それに君はもうこんな田舎には帰ってこない。もしまた会うときはお洒落なベビーカーを押して、流行りの天然素材で作られたブランドの高価な服を着て、二人目でお腹を大きくした可愛い奥さんを連れてやってくるんだろうね。やっぱりお洒落な無精髭なんか生やして。それが、関の山。
卒業式、桜の花の下、皆と笑って写真を撮るとき、僕は君を見つめて言った。
「あっという間。大学生だね。元気で。この海を忘れないで」
さよならになるのかな。笑わなければならないのに、声が震えてしまう。
「うん。東京行ってもLINEするから。忘れねえよ。海月もな。俺のこと、忘れんなよ」
そう言い君は笑った。
「まあ海に月って書いて『うみつき』なんて忘れられねぇよ。変な名前。クラゲって読むんだぜ、本当は」
卒業証書を持ってそう言い君はまだ笑っている。本当は忘れたい。君も、忘れて欲しい。
僕の寿命は長いんだ。君たちヒトなんて僕にとっては『ため息』のようなものだよ。
わざわざ海神様に誓いを立ててまで人間のカタチにして貰ったのに。君と僕は、互いの別れを悲しむ間柄ではなかったね。いや、なれなかったね。
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