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人魚の恋と蒼い月

ブルームーン〖3〗

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届かない愛を悟られるな。ヒトでないことも。その二つを守らねば泡沫うたかたとなって消えてしまう。ただ、その掟が破られたとき、お前が海を出る理由になったその者の願いを生命と引き換えに叶えてやれる。

お前が泡となり、一抹の水として消える代わりにな。これが大地を踏む道を選んだ場合の、私たちの掟だ。

──────────

君は去った。この村から、東京へ。連絡はどんどん減っていった。一週間から三日、

とうとう連絡が途絶えて、三ヶ月経った。夏が来ていた。

『久しぶりだな、海月。元気か?遊びにこいよ。旨いカクテル、飲ませてやるよ。やっとまともに休みが取れたんだ。友達も紹介するよ』

急な夜中に来た、君からのLINE。いきなりの誘いだった。スマートフォンの画面に、電子音と共に、僕が君のもとに行くことを前提として話は進められていく。

僕は夏の湿気を身に纏い読み、ベッドで仰向けになりながら、スマートフォンの文字をタップする。

暗闇の中、光りながら積み重なる数多あまたの文字の列。途中充電器を差しながらスマートフォンをタップ。暗い部屋に赤い充電中のランプが灯る。

まるで君は、僕が断れないことを知りながら話をしているみたいだ。君はいつもそう。

でも、君の前で僕は頷くことしか出来ない。否定されたら怖い、嫌われたくないという、僕の意気地の無さ。そして最後に行き着く答え、

君の傍にいられたら、それでいい。

君に心から愛するヒトができたら、海へ帰ろうと決めているから。

そういえば、そろそろ君の誕生日だ。『死の穢れ』もほとんど尽きている。

だから傍にいたいと思うのは、ただの僕の想いだけ。大地にあがり、色んな本を読んだけれど、恋の終わりには胸が苦しくなって、たくさん泣くものらしい。海とは違う。

海では泳ぎながら泣いても、誰にも解らない。それが涙。地上では、色々な意味をもつらしい。

君は僕なんてそっちのけで、僕と一緒に行く、東京観光の計画を立てていく。

強引さに呆れたような、気遣いのない以前と変わらない無神経さに少し腹立たしい気持ちもあった。それでも、君らしいと心の奥では微笑んでしまう。君に逢える、僕にあるのはただそれだけ。
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