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人魚の恋と蒼い月
ブルームーン〖完〗
しおりを挟む「──君は、何が欲しい?今、何を願う?」
「海月とこれからも側にいたい。いや、いて欲しい。俺の願いはそれだけ。それだけだよ、海月。誕生日プレゼントに約束してくれ」
時計を見る。1、2、3。時計の針は進む。何事もなかったように。
──消えて、ない。一抹の水に戻ってないということは、君が生涯を全うするまで君の側にいて良いと許されたの?それが、君の願いなの?
僕のいのちをかけた、『相手の願いを叶える』という海神様の掟は、君の『僕とずっと一緒に居たい』という願いと相殺されたということだ。君と、いられる。君は僕を人魚と知りながら愛してくれていた。
君は呆然と涙を流し続ける僕に、やさしいキスを繰り返した。触れるようなキスが、段々深くなる。
初めて味わう思考が麻痺するような口づけ。思い出したのは、あのはじまりの日。
君と林檎と蜜柑を食べた日は、確かにあの大きな、蒼い月が出ていたね。
このカクテルは蒼い月《ブルームーン》身体に染み渡っていく華やかな、清々しいこの味は、あの日、あの海に浮かんだ綺麗な月のことだったんだ。
何年、経っただろう。君とあの田舎の村へ帰ってきた。君は海辺に朝と昼はブランチ、カフェ、スイーツ。夜はバーの店を構えた。僕は完全な主夫兼ウエイター。
ここら辺はサーフィンをやる若いヒトで、賑わうようになり、君と僕の店は中々繁盛している。
今日は蒼い月が出ると天気予報で言っていたのでを眺めるために防波堤に腰かけ、二人であのカクテルを飲んだ。ブルームーン。蒼い月。
「あのカクテルのもう一つの意味は『完全なる愛』だよ。ちょっと照れるな」
と言い、僕を抱き締めた。僕の願いは叶った。口づけを繰り返し、君に押し倒された僕は、手を伸ばし、夜空に浮かぶ大きな蒼い月を、君の肩越しに、掴んだ。
──────────Fin
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