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〖第38話〗
しおりを挟む実から少しだけ、力をもらう。指先から力が満ちるのが解る。全身に養分が行き渡る感じだ。清々しく、甘い。
『ごちそうさま』
『それで足りるのか?もっと食え。それにしても匂いたつような色香だ。今のお前なら力を全てやってもいいと、私が思えるほどにな……仙狐、絶対に正一が帰るまで表には出るな。悪い人間はその色香を嗅ぎつけ、惑う』
✳✳✳
夕方だった。ガタンガタンと音がする。家鳴りだ。家が危険を教える。嫌な予感がする。地震でもおきるのだろうか?
正一に、何かあったのだろうか?急に、玄関先が人の声で騒がしくなった。
「どちら様ですか?」
「足をくじいて、診て欲しいのですが」
「私の家は薬は出せますが診ることは………」
「お願いします、薬だけでも……」
戸を開ける。いきなり顔を張られ、私は板の間に転がる。
「おい、お前らァ、青い石を探せ!あれだけで三年遊んでくらせるぜ!」
母さんを殺した髭面の男だった。私は呻き声をあげて、髭面とその子分らしき男達を睨んだ。思い切り睨んだはずなのに、子分と髭面は、にやっと下品な笑いを浮かべる。
「兄貴、こいつ、とんだ上玉じゃないですか。売っちまいましょうよ。それとも、売る前に試してみますか?いやァ、それにしても色っぺぇ。吉原の花魁も裸足で逃げ出しますよ」
べったり張り付く嫌な視線に、腰を抜かしたまま後ずさる。髭面が臭い息をまき散らしながら、私に、にじり寄る。
「大人しくしてりゃあ、やさしくしてやっからよ、正一より良い思いさせてやるよ。なんてな」
下品に笑い、髭面は俺を押し倒した。力を使おうと思っても、人数が多いし、俺の正体が町に知れたら正一は暮らしていけなくなる。
触れられる場所すべてが腐って行くように感じた。暴れたら髪を結った錦の紐をほどかれ手首を縛られいきなり口唇を塞がれる。
気持ちが悪い。髭面の舌を噛んでやったら、罵声を浴びせられ思いっきり頬を張られた。
「あとから、たっぷり可愛がってやるよ。ヘへっ」
私が動きが取れないうちに、髭面と仲間は家を荒らしていく。
綺麗にしていた床が、箪笥が、グシャグシャに汚されていく。
大切にしてきた正一との幸せが踏み荒らされていく──。
「ありました!これっすかね。この青い石!からくり箱になんて入れやがって、正一の奴。苦労しましたよ」
奥の部屋から人の声がする。海の色の石。泪の石。
「お、多分それだな。今日は酒盛りだ。早く売っぱらってこい。足元見られんなよ」
「兄貴は?」
「これからお楽しみよ。お前ら先帰ってろ」
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