愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】

カシューナッツ

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奏の『力』〖8─①〗

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「湖は気に入らない、奏?」

 学校を出てからずっと黙っている奏に、ロールスロイスの後部座席で、ドクターは外用の眼鏡を中指であげながら言った。 

「──どうして涼を巻き込んだの?関係ないよ。部外者じゃないか。僕らの世界に涼を関わらせないでよ!放っておいて!」

 奏は、そうドクターに怒鳴り、俯いた。 僕らの世界。
 穢い世界。
 僕の仕事──『人殺し』の仕事。


 近づく一学期最後の全校集会。涼だけは何とか逃がそうと思っていた。

涼が死ぬのだけは嫌だ。
絶対に。 
けれど、涼に自分の正体がばれてしまうのも嫌だ。
しかし、そんなことはどうでもいい。

涼が死んでしまうより、ずっといい。 僕は、彼のもとをひっそりと去ろう。



『化け物のようなもの』と 
『沢山の人間を殺してきた殺人鬼』として。さよならもいえないだろうけれど。 





蛍は手のひらからあるべき場所へ、逃がしてあげなければならない。

包む手のひらが自分の穢い手の中でも、彼は輝いてくれた。
 ─────────────────── 

「難しい顔だね。チョコレート、食べるかい?」 
「いらない」


何が入っているか解ったもんじゃない。 




獣に成り下がりΩを無理矢理抱き殺し
α自身も精が尽きて息絶える、
これ以上もない穢い死に方。 

不様な醜態を恥じることなく、
集団でただ本能のままΩと抱き合うα達。
理性のタガが外れた本能のままの乱交。Ωとα、互いにあるのは
痛みなど脳内麻薬で消し去った、ただの恍惚。

 ある意味幸福なのか?
我を忘れるほどの快楽を手にして死ぬのだから。 

そんな、狂乱と享楽の舞台を奏の力は作り出せる。

幾度も見てきた。
奏は手を握りしめる。
それが自分の仕事なのだ。
そうさせるのが、自分の仕事だ。

何度も震える身体を抑えるように、

『自分は仕事をしただけだ』

と自分に言い聞かせた。
気が触れてしまいそうだった。 
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