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枯れたジキタリスの花
〖第1話〗初恋の続き
しおりを挟む『初恋は?』そう人に訊かれると僕は苦笑いをする。いつも僕は決まって『素敵な人だよ』と答える。あのひとだけだ。僕を甘く幸せにするのも抉るように僕を傷つけたのも。
けれど、あのひとはもう、遠い昔のように僕を傷つけるような言葉なんて使わない。ただひたすら大事に、壊れ物を扱うように僕を傍に置きたがる。
もちろん、今、僕があのひとを好意を抱いているのは本当だけれど、今更──同棲もして、世間で呼ばれる恋人、パートナーとなった今になっても、何処か僕は冷めている。
────あのひとは一度僕を忘れた。
必死で追いかけた僕を無かったことにした。あのひとは新しく見つけた恋に夢中で、そこに僕は存在しなかった。
僕の生きる灯火を消した。大学に受かった喜びも、先輩に再会できる嬉しさも、全て、先輩の『その他』に分類された僕の虚しさという思いに覆い尽くされた。
そして、まだ僕がそのことを引き摺っていることを、あのひとへの不信を、あのひとは知っている。そして悔いている。
「明彦、まだ起きてるのか? その本、面白い?」
「あ、はい」
「ほら、珈琲。明彦は確かモカが好きだったから、買ってみたんだ。どうかな。美味しいと思う。香りが良かったから」
手渡すタイミングを見計っていたのか、珈琲は若干冷えていた。僕の中身を探るような切ない顔。
この顔をさせているのは僕だ。感情を計算式で答えを出すのは間違っている。でも『解』を出さなくても解る。
先輩は先輩なりの僕への想いと、先輩なりに測った、僕につけた傷に見合う扱いをしてくれている。
先輩は優しく、もう間違わないように接してくれている。誤回答は出さない。またそこが僕をイライラさせる。
昔、学生時代に僕をいじめた奴らより、佐伯先輩は僕の心を引き裂いた。
憎くて、
憎くて、
愛しいひと。
僕は嗜虐と、先輩を故意に傷つけている罪悪感の狭間で揺れる。
先輩は僕を『自慢の恋人だ』という。けれど僕は僕みたいな、こんな面倒な恋人、要らない。
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