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〖第11話〗月曜日の決戦《③》
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この騒動の頃、私はそこにいなかった。2年の自転車置き場。
私はこれ以上2人の会話を聴きたくなくて、親密に話す二人を見たくなくて、逃げた。
『倉橋くんと、斎藤さん、お似合いだよね~。可愛いと格好いいは並ぶとある意味目の保養よ』
『ルッキングって大事だよね。そう言えば、いつも一樹くんと一所にいる女?不釣り合いだったよね~。何か可哀想。一周回って滑稽だもん。見ちゃいけない感あったよね』
みんな、私をチラチラ見ていく。見た後は、目を背けて何かを話す。変わらないのかな。変われてないのかな。あれだけ練習したのに。お姉ちゃんに協力してもらって最後にコーディネートしてもらった服達。惨めになった。
「ごめんね……お姉ちゃん、お母さん……」
クラスで独りぼっちでも、あの2人の真奈美の見せつけるような様子を、見ても、一樹がクラスで嫌な思いをしなければいい。だから、もう関係ない。私は終わりにしたと、メイクの練習中にも思った。思っていたのに。
メイクをして、お洒落をして変われたと思った、宗谷くんにも似合ってるって言われたのに、自信がなくなる。どうやったらこの想いは消えてくれるんだろう。
「誰か、助けて。助けてよぅ……」
私はその場所に蹲った。何で今更、私にブレスレットなの?
遠くから見た、一樹と真奈美は悔しいけどお似合いだった。これで良かった。正解だ。私は震える手でブレスレットを投げ捨てた。校舎の壁にあたり、カシャンッと跳ねた。
「だめ、だめぇ!」
這いつくばってブレスレットを拾う。良かった、壊れてない。一樹にとってこれは何?『ごめんな、選べなくて』ていうことなのかなぁ。握りしめて泣いた。馬鹿だな、私。自嘲しながら、砂にまみれたブレスレットをアナスイの化粧ポーチにいれた。
「どうしたの?」
蹲った私にかけられた声に顔を上げる。声をかけたのは、箒を持つダンディーな3つ揃えのお洒落なネクタイの先生。イケオジさん。だってこんなお洒落すぎる用務員さんいないもの。イケオジさんは、やさしく言った。
「ハンカチ、つかう?」
私がコクンと頷くと、先生は綺麗な紺の刺繍入りのハンカチを差し出した。私は丁寧に目元を拭いた。
「悩みがあったら誰でもいいから言うんだよ。あと、20分でホームルームだ。あ、これ。チョコレート。頭の働きにいいよ。ハイカカオ83。開けてないよ。また、泣きそうな顔してないで。名前とクラスは?」
「2年2組、結城智美です」
「ああ、この間の全国模試で50位に入った子だね。教師間でも期待の子だと聞いているよ。ほら、チョコレート食べて。元気だして」
ピリッと袋を開ける。チャックがついている。『美味しい』と私が呟くと、
「自信をもちなさい。色々なことに興味をもったり、恋をしたり、夢をもったり、夢を見たり。お洒落を楽しんだり、君は可能性のかたまりだよ。それに、テスト勉強は積み重ね。良く頑張ってる証拠だ。でもね、それでもまだ結城さんは原石だ。ちゃんと綺麗に磨いてあげるんだよ。お洒落さん」
行ってらっしゃい。新しい1日の始まりだよ。
「先生、あの、名前を教えてください」
「中野暁だよ。校長先生だ。今度珈琲でも飲みにきなさい。生徒の声を広く聞かないと。さ、行ってらっしゃい」
こんな穏やかで素敵な先生がうちの校長先生なんだ……。チョコもらっちゃった!
ご利益あるかも。つい顔が綻ぶ。
──────────────
《月曜日の決戦》
「おはよう」
静かな声でドアを引くと、ざわつくクラス。自分の席に座るともっとざわつく。
『あれ、結城?誰だよ?』
『結城しかいねーだろ、結城の席に座るんだから。結城って美人だな~!大人の色気。あんまメイク濃くないのにな』
『全然ガリ勉、陰キャじゃないじゃん。脚長げー。』
『めっちゃ綺麗だね。メイクも格好いい!どうやるか聞かない?』
『あの髪型どうやってやるんだろ』
男子、女子ともにざわついてるクラス。浮いてはいるけど、悪い言葉はなくて、ほっとする。周りは転校生を見るように私を遠巻きに見る。ありがとう、お姉ちゃん。褒めてくれてありがとう、宗谷くん。チョコをくれた校長先生。
HRがはじまり、遅れて真奈美と来た。私は真奈美の勝ち誇った視線を受けて、素直に笑った。汚い笑顔じゃなく、これで、一樹も安心だと思えた。真奈美は面食らった顔で私を見ていた。その後、一樹と腕を組み席について、
「あきらめたんだ~」
と一言言って、音をたて椅子に座り笑った。
諦めたよ。でも私は後悔してない。だから手を離した。暗闇を走った。泣きながらお別れした。終わりにした。昼休み、一樹は購買にパンを買いく所だったけれど、真奈美に、
「カズくんのお昼つくってきたの!」
と言われていた。私はお母さんが作ってくれたお弁当。何かなと、蓋を開けようとしていたら、出入り口のドアのところに宗谷くんが、とクラスの女子に、精一杯の愛想笑いを浮かべて話しかけていた。
「結城先輩いらっしゃいますか?」
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