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君ハ龍ノ運命のヒト【第1章】

帰ってきたミズチ⑯

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空が、曇り空が割れて光が差し込む。光の雨が降る。金色の、霧から浮かび上がる影。

「ミズチ!」
「美雨!コウ!」

 あの頃と変わってない黒髪の貴方。私は裸足で駆け出しミズチに抱きついた。

「会いたかった。会いたかったよ、ミズチ」
「オレも。美雨。会いたかった」
 
 見つめ合い、口唇を重ねた。

「十二年よ。十二年待ったの!あなたを待ってた。私がどれだけ嬉しいか解る?解らないわよ。会いたかった!会いたかった!」

 大声で泣きながらミズチを抱きしめる。ミズチは小さく耳元で、

「コウがいるから。美雨。あとから、ゆっくり二人で」

 囁きの温度はあたたかい。私はハッとして、コウの存在を思い出す。バツが悪そうにコウが私を見ている。私は縁側のタオルで素足を拭き、靴下を穿く。
 
 ***

 主がいなくても掃除は欠かさなかったミズチの部屋。

初めて家族三人揃う新年。
婆様が『こたつ』を用意して、甘栗と蜜柑をテーブルに置いておいてくれた。
 
 辰年担当の龍は新旧交代だという。今年の辰年担当は、ミズチの弟さん。弟さんの息子さんも大きいらしいので、多分『辰』の龍の家系は弟が継ぐ。だからミズチはここにいる。ミズチは干支の『辰』──『龍』だった。 

「コウに記憶を見せてもらった。大変だったね。二人きりで。美雨、独りにさせてごめんね。もう、オレは美雨を独りにさせないから。何処にもいかないから。コウ。もう、寂しい思いはさせないよ」

「お父さんが言うと、大丈夫っていう気になる」

    コウは、笑う。けれどだんだん表情がほどけてコウは泣いた。

 ミズチにしがみついて「お父さん」と繰り返した。大人びた言動をしてもまだコウは小学生だ。まだ幼い。

「お母さん、マグカッププリン作って!」
    
 コウはミズチの胸の中で泣いた。

「お母さんは何でも作ってくれた。魔法の手。でも、マグカッププリンだけは作ってくれなかった。『あれはお父さんがいるときにね』って言ってた。だけど今、お父さんいるよ!僕も食べる。プリン!お母さんのプリン、お父さんと一緒に食べる!みんな一緒!一緒だよ!」
  
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