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第五章「木漏れ日の欠片」
⑦ ★
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囁くように名前を呼ばれてスカーレットは顔を上げた。
「もう一回教えてくれる? 君の気持ち」
好きだ、と伝えようとして言葉に詰まる。
一度冷静になると自分の発言の大胆さを思い知る。顔から火が出そうだ。
告白にしては可愛げが無さすぎではないか。これだから可愛げがないと言われるのだ。せっかくのチャンスだ。今度こそ可愛らしく可憐に言おう。言えるはずだ。
「私も、オズ様のこと」
蕩けそうな蜂蜜色に決意が溶かされてしまった。期待に満ちた、どこか試しているような意地悪な目だ。
何度か唇の動きを練習して音に載せる。
「あ、あぃ……あいしてまっ」
言い切る前に言葉ごと奪われてしまった。触れるだけのキスで顔が離れてしまう。
せっかくいおうとしたのに、と軽く睨むと謝罪の代わりに額が触れ合った。
もう一度期待に満ちた目が向けられる。
どうせ繰り返されてしまうのなら。
スカーレットは悪戯好きな薄い唇に自分のを押し当てる。すぐに一度距離を取ろうと思っていたのだが、やはり見透かされていたらしい。
頬を手が撫でて、髪を梳いて奥に滑っていく。
「ん、む」
上唇のすぐ裏を舌先で擽られた。反射的に薄く開いた隙に舌が侵入してくる。
何度も味わわされた深いキスだ。好き放題にされる前にとスカーレットは舌を絡ませる。
驚いたのか僅かに動きが鈍ったのもつかの間、舌ごと吸い上げられ外に引き出される。くちゅくちゅと部屋に沁みていく静かな水音がスカーレットの思考を溶かした。普通なら触れ合うことの無い舌が、呼吸が奪われてくらくらする。
「ふぁ、あっ」
スカーレットの膝が崩折れた。床に座り込んでしまう前にとオズはスカーレットを抱き上げる。
向かう先に視線を滑らせて自分が期待しているのだと気付いた。
「レティ」
スカーレットをベッドに柔らかく下ろしてオズは微笑む。
「いい?」
薔薇色に染まった頬に手が寄せられる。その手が離れていかないように自分の手を重ねると、上目遣いにオズを見上げた。
「は、い」
髪で隠した表情が暴かれる。
「スカーレット」
恥ずかしくて顔を逸らしたいのに許されなかったようだ。
「レティ」
真っ直ぐに愛を注がれて、全身が心臓にでもなったように熱い。
「あっ」
顔が近付く。触れるだけの唇が眦、頬、そして唇へと落とされた。
そんな軽いものでは足りない、とでも言いたげな視線をオズに向ける。そうしてようやく貪るような口付けが寄せられた。
先程の比ではない深いまぐわいに頭がくらくらする。だが、ずっと待っていたものだ。
「ふ、あっ」
口端に溢れた唾液を舐め取られる。それだけで体は反応するようになっていた。
「可愛い」
オズがスカーレットにそう囁くのは何度目だろう。数え切れないくらい言われたせいか、だんだん言動が子供っぽくなってきている気がする。
「ひゃうっ」
服越しに胸部を愛撫されてつい声が出てしまった。布越しの感触はもどかしく、くすぐったいとすら感じる。もちろん、すっかり敏感になってつんと主張しているのだが。
「私の、小さいから楽しくないでしょう……?」
周りの令嬢に比べて控えめな胸がコンプレックスだった。
レオナルドもつまらないと言って抱く時は常に背後からだ。魅力がない体だからオズも無理をしてはいないだろうか。
「そう?」
「あっ」
オズはスカーレットの乳房を手のひら全体で包み込んで愛撫する。全体をくまなく、柔らかく揉まれ息が乱れた。
「こうして丁度いい」
布越しだったそれはいつの間にか服の中に侵入され直に揉みしだかれる。合間に耳や首筋の弱いところを舌がなぞって吐息がくすぐった。服も知らぬ間に脱がされている。
どうにか息をしながら目を開くと、真剣な眼差しに射抜かれた。
「レティの身体に不満なんてあるわけないだろう」
じわりと顔が熱くなる。みっともなく緩んだ涙腺を誤魔化すために腕で目元を覆った。
「顔、見せてよ」
つい、と腕をオズの指先が滑る。スカーレットは首を横に振った。
「もう一回教えてくれる? 君の気持ち」
好きだ、と伝えようとして言葉に詰まる。
一度冷静になると自分の発言の大胆さを思い知る。顔から火が出そうだ。
告白にしては可愛げが無さすぎではないか。これだから可愛げがないと言われるのだ。せっかくのチャンスだ。今度こそ可愛らしく可憐に言おう。言えるはずだ。
「私も、オズ様のこと」
蕩けそうな蜂蜜色に決意が溶かされてしまった。期待に満ちた、どこか試しているような意地悪な目だ。
何度か唇の動きを練習して音に載せる。
「あ、あぃ……あいしてまっ」
言い切る前に言葉ごと奪われてしまった。触れるだけのキスで顔が離れてしまう。
せっかくいおうとしたのに、と軽く睨むと謝罪の代わりに額が触れ合った。
もう一度期待に満ちた目が向けられる。
どうせ繰り返されてしまうのなら。
スカーレットは悪戯好きな薄い唇に自分のを押し当てる。すぐに一度距離を取ろうと思っていたのだが、やはり見透かされていたらしい。
頬を手が撫でて、髪を梳いて奥に滑っていく。
「ん、む」
上唇のすぐ裏を舌先で擽られた。反射的に薄く開いた隙に舌が侵入してくる。
何度も味わわされた深いキスだ。好き放題にされる前にとスカーレットは舌を絡ませる。
驚いたのか僅かに動きが鈍ったのもつかの間、舌ごと吸い上げられ外に引き出される。くちゅくちゅと部屋に沁みていく静かな水音がスカーレットの思考を溶かした。普通なら触れ合うことの無い舌が、呼吸が奪われてくらくらする。
「ふぁ、あっ」
スカーレットの膝が崩折れた。床に座り込んでしまう前にとオズはスカーレットを抱き上げる。
向かう先に視線を滑らせて自分が期待しているのだと気付いた。
「レティ」
スカーレットをベッドに柔らかく下ろしてオズは微笑む。
「いい?」
薔薇色に染まった頬に手が寄せられる。その手が離れていかないように自分の手を重ねると、上目遣いにオズを見上げた。
「は、い」
髪で隠した表情が暴かれる。
「スカーレット」
恥ずかしくて顔を逸らしたいのに許されなかったようだ。
「レティ」
真っ直ぐに愛を注がれて、全身が心臓にでもなったように熱い。
「あっ」
顔が近付く。触れるだけの唇が眦、頬、そして唇へと落とされた。
そんな軽いものでは足りない、とでも言いたげな視線をオズに向ける。そうしてようやく貪るような口付けが寄せられた。
先程の比ではない深いまぐわいに頭がくらくらする。だが、ずっと待っていたものだ。
「ふ、あっ」
口端に溢れた唾液を舐め取られる。それだけで体は反応するようになっていた。
「可愛い」
オズがスカーレットにそう囁くのは何度目だろう。数え切れないくらい言われたせいか、だんだん言動が子供っぽくなってきている気がする。
「ひゃうっ」
服越しに胸部を愛撫されてつい声が出てしまった。布越しの感触はもどかしく、くすぐったいとすら感じる。もちろん、すっかり敏感になってつんと主張しているのだが。
「私の、小さいから楽しくないでしょう……?」
周りの令嬢に比べて控えめな胸がコンプレックスだった。
レオナルドもつまらないと言って抱く時は常に背後からだ。魅力がない体だからオズも無理をしてはいないだろうか。
「そう?」
「あっ」
オズはスカーレットの乳房を手のひら全体で包み込んで愛撫する。全体をくまなく、柔らかく揉まれ息が乱れた。
「こうして丁度いい」
布越しだったそれはいつの間にか服の中に侵入され直に揉みしだかれる。合間に耳や首筋の弱いところを舌がなぞって吐息がくすぐった。服も知らぬ間に脱がされている。
どうにか息をしながら目を開くと、真剣な眼差しに射抜かれた。
「レティの身体に不満なんてあるわけないだろう」
じわりと顔が熱くなる。みっともなく緩んだ涙腺を誤魔化すために腕で目元を覆った。
「顔、見せてよ」
つい、と腕をオズの指先が滑る。スカーレットは首を横に振った。
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