異世界帰還者〜異世界で手に入れたチート能力で現実世界に復讐する〜

黒夜零

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1章帰還者

16話 魔導兵器の登場

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「隊長、第二部隊から連絡が来ました!」
「よし、来るまでの間、こいつを食い止めるぞ!」
「俺を食い止める? 図に乗るな」

 地を蹴り、隊長と呼ばれる男の懐に潜る。
 そのまま下から右の拳を突き上げる。

「く、なめんな」

 俺の拳は隊長の顔を掠り、それと同時にカウンター気味の拳がきた。
 反対の手で拳をガードする。
 腹部に目掛けて蹴りを入れる。
 ヅヅッと地面が削れる音をしながら、俺は後方へと下がった。
 隊長は蹴られた腹を押さえている。
 近接戦──接近戦はまだ、俺に分がある。

「隊長……」
「大丈夫だ。まだこのくらいは平気だ」

 このくらいね? 相当痛みを感じてる様子。
 問題はパージが、持ってこようとしている物。
 それがどのくらいの物か、未知数だが、叩き潰す。

「……来た!」

 パージの一人の言葉に俺は身構える。
 次の瞬間、俺の視界に増援と思われる兵隊に、布で大きく隠された物が持っている。
 あれが、俺に勝てる可能性がある物。
 少し様子見をしてから、ぶっ潰すか? それとも今すぐ潰すか。

「坂本隊長。第二部隊遅れながら到着しました」
「大丈夫だ。あれをちゃんと持ってきたな?」
「この通り。そしてあれが破壊者デストリシャですか」

 隊長と話している兵士は、俺に眼を飛ばしてくる。
 なんだ彼奴? 俺に眼を飛ばして生意気だな。
 ジロジロと見てきて、あまりにも気色が悪く、思わず声を掛けてしまった。

「てめぇさっきからなんだ?」
「お前が破壊者デストリシャ? 思ってたより弱そうだな」
「ほざいとけ」

 フゥゥゥと息を吸い、地を踏み込む。
 次の刹那、落雷の速さで男の眼前にまで、近寄り、左の拳を振う。
 男は片手でガードをし、吹き飛ぶ。
 隊長の横を勢いよく吹き飛ぶ。
 ドンッと音が鳴り響くが、手応えが一切ない。

「お、やべぇ! 人並み外れたパワーだ」

 男は楽しそうに言う。
 その様子に不気味さを感じていた。
 その時、男が指をパチンと鳴らす。
 次の瞬間、俺の左手から強烈な電撃が走る。

「く、あぁぁ」

 一体何が起きた? 何故俺に電撃が……この感じ。
 あの時の魔法に近いが、威力も魔素も感じない。
 一瞬驚いたが、すぐに慣れてきた。
 殴った時の手応えのなさ、そして左からの電撃……
 左手を見ると、小さく魔法陣が描かれていた。

「魔流の仕込みの籠手か」

 俺が考え、答えを独り言の様に言った。
 その時、男は可笑しそうに笑いながら、真剣な眼差しで再び指を鳴らす。
 パチパチと電流の音が、左手付近から聞こえる。

「あのな。からくりが分かれば、何も怖くねぇよ」

 再び左手から電撃が走る。
 異能の力の一部を使い、電撃と魔法陣は消え去る。

「一体何をした?」
「てめぇに教える訳がねぇだろ。クソガキ」
「祐二それも……」
「はい。これが本場の魔道兵器です」

 まさか──この世界で、魔道具を見る事になると、思わなかった。
 魔流仕込みの籠手。
 異世界でも、低ランクな魔道具として知られている。
 だが、使い方にしては最強の魔道具にもなり得る。
 それを良い例に、あの男は上手く使ってきた。
 ──魔流の籠手のからくりは簡単。
 魔素の流れを籠手がカバーし、籠手に触れた瞬間に小さな魔法陣を描かれる。
 少しの合図で魔法陣から、魔法を放たれる。
 使い手次第で、魔法の質量も火力も変わってくる。
 でもな、この程度の魔道具では俺には勝てない。

破壊者デストリシャを僕らは、見くびってたかもしれません」
「いやそれはお前だけだ」
「え、嘘!?」

 一体どうする? もう一気にあれを出して殲滅するか。
 いや、あれは奥の手だ。
 こいつら如きに使う訳にはいかない。
 次の刹那、ビューンと風切る音と共に、高圧な魔素が横を遠る。
 今、何が起きた? 理解が追いつかない。
 特に理由もないが背後を見た。
 そこには焦げ平地になっていた。
 ただ、少女が震え怯えている様子が目に入る。

「てめぇら、一体何をした? それにあの少女を巻き込む気か?」
「そんなの逃げないあの子が悪いでしょ」

 このくそ共! 

「何か言いたげそうだね。そんなにあの子が気になるならば、消してあげるよ!」

 次の瞬間、男の前方から、いきなり金色の光が飛んでくる。
 その光は俺ではなく少女に向かう。

「ごめんね若き少女よ」
「チッめんどくせぇな」

 地面を落雷の速さで踏み込み、地を蹴り、少女の前に立つ。
 俺は左手をかざし金色の光を受け止める。
 次の瞬間、俺の手に高圧で高威力の魔素が当たる。
 くそ、想定していた以上に威力が高い。
 だんだんと腕が後方に下がっていく。
 このままだと腕が持っていかれる。
 もし持っていかれたら、俺も少女も直撃する。
 一体どうすればいいんだ? その時。

「もういいです。私の為に体を張らないで下さい」

 と、少女の言葉が聞こえた。
 その時、俺が思った感情はたった一つ。
 不快だ。

「誰がお前の為に体を張るかよ! こんなの掻き消してやる」

 強引に腕を振り抜き、金色の光を消した。

「はぁはぁ」

 腕が重く痺れる、咄嗟に振り切った為、異能を一切使えなかった。
 それにしても喰らった事もない攻撃。

「おいおい。化け物にも程があるぞ!?」

 普通の人間がどうしてここまで、強力な魔素を放てる? 魔流の籠手では説明が付かない。
 今、俺は消す事ができた。
 だが、次も消せれるかは別だ。

「あ、あの」
「なんだ? 今俺は忙しいんだよ」
「だったら反応しなくていいです。でも聞いて下さい!」

 あの感じだと、まだ何発も撃ってると見込んだ方がいいだろう。
 だとしたらどうすればいいんだ? やっぱり殲滅するしかないと思い。
 右手に力を入れた時、少女の言葉が耳に止まる。

「あれは人の力の物ではない。兵器の力を借りてると思われます」
「だったら一体どうしろと?」
「あの光より速く、高威力な物をぶつければいいです」

 そんな簡単に言われてもな? 俺には魔素がない。
 そんな簡単に出せる物なんかない。
 俺が悩んでいる時、背中を押された。
 少女は何も言わず、俺を見ている。
 無言の圧か……

「やればいいんだろう!」

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