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煙
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あなたを抱きしめると必ずタバコの強い香りがした。
セブンスターの箱と灰皿に転がる二三本の吸殻があたしの強い記憶。
街の喧騒に足場の踏み場もないくらいの息苦しさと戸惑いを覚えながら、あなたの煙香りが、あたしのよりどころだった。
強い恋慕があなたを強く抱いた。
私は、いつも思った。
あなたのすべてを奪いたい、と。
あたしのすべてを認めて欲しい、と。
もっと触れて、触れて頂戴。
体中に感じる確信は、すべての欲情となって全身を自らむさぼるように駆け巡り、溢れ出た分だけあなたを求めた。
それだけ愛しかった。
ベッドの上ではいつもあたしが上になった。
まるで荒馬にまたがるカウボーイみたいに、あたしはあなたを走らせた。
蜜の激しい音と、絶え間なく締め付け動かす、刹那の断続的な快感が、あたしを支配し、あなたを支配した。
あたしは、あなたのかわいい、くりっとした乳首に優しく舌を這わせ、腰を激しく動かす。
煙の匂いがする。
あなたに染み付いた、あなたの香りがあたしの鼻腔をくすぐる。
あたしはタバコが大嫌いだったから、余計にあなたをいじめようと、より多くの快感を与えようと膣にぐっと力を入れてあなたを締め付けて、激しく上で腰を上下させる。
あえぎ、かすれるあなたの声が、あたしにとっては憎かった。
その声が、あたしの名前を呼ぶ声だったらどんなに嬉しかったか。
愛しさは憎しみと背中合わせ。
あなたをどんなに愛しているか。
あなたがあたしの体をもっともっと触れて、優しく名前を読んでくれれば、愛しさは声をもかすれさせるほどにあなたの存在を求めたのに。
体中が悲鳴を上げてあなたを求めているように、言葉に出ない欲望は行動になってあなたを攻めた。
あなたのそそり立つ本能を攻め続けた。
吐き出す欲望と本能、そして現実とは別。
白濁した液を何度搾り取ったかわからない。
あたしの世界ではあなたがすべてだったはずが、あなたにとっての世界はあたしがすべてではなかった。
その現実を知ったのは、あたしの中で、あなたの欲望が震えているときに鳴ったあなたの携帯。
すべてがぶち壊される爆弾のタイマーみたいだった気がする。
あたしが、あなたの携帯を取ると、女の名前。
黙って携帯に出ると、甘えた声。
すべての現実を悟ったあたしはあなたに何も言わずに、ホテルの部屋を出た。
夜道の寒気さがあたしを包み込み、あたしは何も認めてもらえなかった悔しさで涙が溢れ出て、見えない影に雫を散らした。
まるであたしの愛しさは煙のように消えてしまった。
駅のホームで通勤列車を待つあたしは、あなたが吸っていたセブンスターを吸ってみる。
タバコの嫌いなあたしは、タバコを少し吸っただけで咳き込んで、やっぱりおいしくないと思った。
あたしは、吸いかけのタバコを駅の灰皿に捨てた。
火が、じゅっと音を立てて水に消されたのを聞いた。
そして、一本吸っただけのタバコの箱をぐしゃりと握りつぶして、ゴミ箱に投げ捨て、そしてゴミ箱を力いっぱい蹴り倒した。
通勤途中のサラリーマンたちがあたしを一斉に見ていたが、あたしはどこか優越感に浸っていた。
明日になれば、新しい男が来る。
もう、水に濡れたタバコのように、火は燃え上がらず消える。
吐き捨てられたタバコの煙のように、充実した欲望は消えていく。
轟音を轟かせるように、電車はホームへと入ってきて、あたしは人の波に流されて、煙のようにどことなく消えていく。
あたしは、あなたの吸っていたタバコではなく、どこかへ消えていく煙だった。
セブンスターの箱と灰皿に転がる二三本の吸殻があたしの強い記憶。
街の喧騒に足場の踏み場もないくらいの息苦しさと戸惑いを覚えながら、あなたの煙香りが、あたしのよりどころだった。
強い恋慕があなたを強く抱いた。
私は、いつも思った。
あなたのすべてを奪いたい、と。
あたしのすべてを認めて欲しい、と。
もっと触れて、触れて頂戴。
体中に感じる確信は、すべての欲情となって全身を自らむさぼるように駆け巡り、溢れ出た分だけあなたを求めた。
それだけ愛しかった。
ベッドの上ではいつもあたしが上になった。
まるで荒馬にまたがるカウボーイみたいに、あたしはあなたを走らせた。
蜜の激しい音と、絶え間なく締め付け動かす、刹那の断続的な快感が、あたしを支配し、あなたを支配した。
あたしは、あなたのかわいい、くりっとした乳首に優しく舌を這わせ、腰を激しく動かす。
煙の匂いがする。
あなたに染み付いた、あなたの香りがあたしの鼻腔をくすぐる。
あたしはタバコが大嫌いだったから、余計にあなたをいじめようと、より多くの快感を与えようと膣にぐっと力を入れてあなたを締め付けて、激しく上で腰を上下させる。
あえぎ、かすれるあなたの声が、あたしにとっては憎かった。
その声が、あたしの名前を呼ぶ声だったらどんなに嬉しかったか。
愛しさは憎しみと背中合わせ。
あなたをどんなに愛しているか。
あなたがあたしの体をもっともっと触れて、優しく名前を読んでくれれば、愛しさは声をもかすれさせるほどにあなたの存在を求めたのに。
体中が悲鳴を上げてあなたを求めているように、言葉に出ない欲望は行動になってあなたを攻めた。
あなたのそそり立つ本能を攻め続けた。
吐き出す欲望と本能、そして現実とは別。
白濁した液を何度搾り取ったかわからない。
あたしの世界ではあなたがすべてだったはずが、あなたにとっての世界はあたしがすべてではなかった。
その現実を知ったのは、あたしの中で、あなたの欲望が震えているときに鳴ったあなたの携帯。
すべてがぶち壊される爆弾のタイマーみたいだった気がする。
あたしが、あなたの携帯を取ると、女の名前。
黙って携帯に出ると、甘えた声。
すべての現実を悟ったあたしはあなたに何も言わずに、ホテルの部屋を出た。
夜道の寒気さがあたしを包み込み、あたしは何も認めてもらえなかった悔しさで涙が溢れ出て、見えない影に雫を散らした。
まるであたしの愛しさは煙のように消えてしまった。
駅のホームで通勤列車を待つあたしは、あなたが吸っていたセブンスターを吸ってみる。
タバコの嫌いなあたしは、タバコを少し吸っただけで咳き込んで、やっぱりおいしくないと思った。
あたしは、吸いかけのタバコを駅の灰皿に捨てた。
火が、じゅっと音を立てて水に消されたのを聞いた。
そして、一本吸っただけのタバコの箱をぐしゃりと握りつぶして、ゴミ箱に投げ捨て、そしてゴミ箱を力いっぱい蹴り倒した。
通勤途中のサラリーマンたちがあたしを一斉に見ていたが、あたしはどこか優越感に浸っていた。
明日になれば、新しい男が来る。
もう、水に濡れたタバコのように、火は燃え上がらず消える。
吐き捨てられたタバコの煙のように、充実した欲望は消えていく。
轟音を轟かせるように、電車はホームへと入ってきて、あたしは人の波に流されて、煙のようにどことなく消えていく。
あたしは、あなたの吸っていたタバコではなく、どこかへ消えていく煙だった。
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