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第6章 逆襲の魔王軍(仮)

202話 名探偵?

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 紫音達が荷物の積み込みをおこなっていた頃、昨日の夜にアルトンの街に到着していたユーウェインは要塞に帰還する前に、盟友スギハラに会いに来ていた。

「スギハラ、今回の戦いの指揮と勝利に本当に感謝している。クリス君も補佐で苦心してくれた事感謝する」

 彼はスギハラとクリスに、指揮の代行とそれによる勝利の成果に謝辞を述べる。

「俺はあまり苦心してないから気にすんな。副団長が、色々気を使ってくれたから、うまくいっただけだ」

「いえ、私は副団長として補佐しただけです」

「だが、二人のお陰で予定通りオーク本拠点を攻略することができる。本当に感謝している」

 彼は再び二人に感謝の言葉を口にした。

「今、その準備をしているところなので、私はこれで失礼します」

 ユーウェインの言葉を聞いたクリスはそう言って、明日出発する者達の準備の指示を与えるために戻る。

「二日後の出発にしては、少し慌ただしいな」
「ああ、実はな……」

 スギハラはユーウェインに、アキがゴーレムを制作するために一日早く出発して、その護衛をする為に準備を急いでいると説明した。

「アキ君が、そのようなことを……。俺も四騎将の1人を護衛に付ける指示を出すとしよう」

 ユーウェインは栞を取り出すと、タイロンに連絡をして明日の護衛の準備の指示を出す。

「では、俺もそろそろ戻って、本拠点侵攻の準備をする。明後日の出発にまた会おう」

 彼はスギハラと握手をすると、要塞への帰還の途についた。
 紫音達は夕方まで作業続けて、荷物の積み込みを終えるとシャワーを浴びた後に夕食を取り、明日に備えて自室でゆっくりすることになった。

 そして、事件は起きる……
 紫音が自室の冷蔵庫に楽しみにとっておいたプリンが無くなっており、代わりにこの様な紙が置かれていた。

 ”プリンは俺様が確かに頂いたぜ 怪盗13代目 ルパン”

「よくも私のプリンを……。必ず犯人を見つけてみせる。これは、サブタイトルは『名探偵シオン』だね…。この謎は絶対に解いてみせる、おばあちゃんの名にかけて!」

 紫音はその紙に書かれていた文章を読むと、怒りに震えながら彼女は漫画のことはあまり詳しくないので、作品が混じってしまっていた。

 さっそく紙を見ながら、紫音は推理を始める。
 ―が、すぐに犯人の目星がついてしまう。

 紫音は犯人の部屋の前まで来ると、扉をノックする。
 扉が開き部屋の中から出てきたのは、アキであった。

「紫音ちゃん、どうしたの? 何の用?」
「ここでは何だから、部屋に入らせてもらうよ!」

 紫音は、やや強引にアキの部屋に入ると部屋の中には、先客として椅子に座ったエレナが居た。アキは紫音の後ろから、強引に部屋に入ってきた彼女に対して、困った感じでこう言ってくる。

「もう、紫音ちゃんは強引だな~。これで、私とエレナさんが懇ろな関係だったらどうするつもりだったの?」

「えっ!? 二人ってそんな関係だったの?!!」

 アキのその言葉を聞いた紫音は、顔を真っ赤にさせドギマギしながら尋ねる。

「違いますよ!?」

 即否定するエレナ。
 そして、すぐさま紫音の誤解を解くために説明をする。

「私とアキさん…先生は、BLを愛する同士・仲間なだけで、そんな関係ではありません! 今もBL談義をしていただけです! もう、先生も誤解を招くような事を言わないでください!」

「ごめんね、エレナさん。顔を真赤にして驚く紫音ちゃんの、かわいい反応が見たくて…」

 アキはエレナに謝りながら、紫音の反応を見て”予想通りのいい反応だったよ”といった感じで紫音に親指を立てる。

「ところで、紫音ちゃん。何の用かな?」

「そうそう、忘れるところだったよ。こんな紙を冷蔵庫に残して、私のプリン盗んだ“怪盗13代目 ルパン”はアキちゃんだよね?」

 アキの質問に、自分が何のようで彼女に会いに来たのか思い出し紫音は例の紙を見せながら、アキに詰め寄る。
 だが、その紙を見た彼女は動じずに冷静に反論してきた。

「その紙の内容で、どうして、私が“怪盗13代目 ルパン”だというの? リズちゃんかも、しれないじゃない」

 アキのその突っ込みに、紫音は自信に溢れた感じでこう返す。

「リズちゃんじゃないよ。アキちゃんは知らないと思うけど、リズちゃんはこんな手の混んだマネをしないよ」

「どうして、そう言えるの?」

 紫音の自信に満ちた返事にアキが更に追求すると、彼女はこう答える。
「リズちゃんが私のプリンを欲しがる時は、可愛さ全開のあざとリズちゃんで、おねだりしてくるからだよ!! 現にお姉さんはここ数ヶ月で、プリン8個を貢いだからね!!」

(シオンさん…。相変わらず、あざとリズちゃんに弱いなぁ……)

 エレナは心の中でそう思いながら、黙って話を聞いている。

「リズちゃんじゃないというのは解ったよ。では、私が犯人というのはどういう理由からかな?」

「それは、簡単だよ。だって、この世界に“怪盗13代目 ルパン”なんてキャラは居ないからだよ!!」

「な、なんだってー!」

 お約束の驚き方をするアキ。

「はい、少なくとも私は知りません。なので、その紙を見た時に誰だか解りませんでした…」

 そして、彼女がエレナの方を見ると、彼女は頷きながらこう答えた

「“怪盗13代目 ルパン”は、元の世界だけのキャラだよ、アキちゃん」

 紫音はアキにだけ聞こえるようにそう言うと、彼女も紫音にだけ聞こえる声でこう言ってくる。

「それなら、クリスさんかもしれないじゃない」

「クリスさんは、そもそも私のプリンを盗まないよ。それに、クリスさんなら元ネタの”アルセーヌ・ルパン“の方を使うと思うよ」

 アキは紫音の推理に、反論できないでいた。

「策士策に溺れたね、アキちゃん!!」

 紫音がそう言って、アキにダメ押しすると彼女は素直に謝る。

「ごめんね、紫音ちゃん。」
「言ってくれれば、あげたのにどうして盗んだの?」

 紫音の質問にすぐには答えずに、アキは冷蔵庫の扉を開けると中からプリンを取り出し紫音に渡す。

「はい、プリンを返すね紫音ちゃん」
「どういうこと?」

 盗んだプリンがそのまま戻ってきたので、紫音の疑問も当然である。
 するとアキは説明を始めた。

「今度全年齢向けの推理漫画を描こうかなと思って、それで私のトリックがどれだけ通用するかを試したんだけど……。そんな初歩的なミスをするようでは、私には推理漫画は向いてないね……」

「どうして、明日出発って時に試したの!?」

 アキのこの告白に紫音は、理由よりもアキのこのタイミングでのこのテストに突っ込んだ。
 その紫音の突っ込みにアキはこう言い放つ。

「思いついたら、試すのが漫画家なの!」
(※あくまで、アキの意見です。)

「だからって、このタイミングで……。アキちゃんって、どれだけハート強いの!? 羨ましいよ!!」

 紫音は、出発を明日に控える前日にこんな事ができるアキの豪胆さに、呆れながらも正直少し憧れた。

「これで、フィオナ様に胸を張って見せられる漫画が、描けると思ったんだけどね……」

 アキは少し残念そうな顔をしながらそう呟く。
 彼女は聖女であるフィオナに見せられる漫画を模索していたのであった。

「アキちゃん……」

 紫音が落ち込むアキに声をかけようとした時―

「でも、紫音ちゃんのさっきのかわいい反応は、新シリーズで使わせてもらうね! 部屋で絡むアキトとエレン。その部屋に偶然入ってくるクオン! なんやかんやで、3人で絡む事になり、クオンはアキトとエレン二人からの攻めを……」

 アキは思いついた新シリーズのシチェーションを熱く語りだす。
 トリックは碌な案が出てこないのに、BLのシチェーションは泉のごとく湧き出るアキの話は暫く終わりそうにない。

「おやすみ、アキちゃん、エレナさん。明日に影響のないよう程々にね……」

 紫音はプリンを大事そうに手に持って、BL設定を語りだしたアキとそれを興奮しながら聞くエレナに就寝の挨拶をして、早々に部屋を出て自室に戻った。


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