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第1章 反乱軍討伐戦
反乱軍鎮圧 04
しおりを挟む一新された憲兵隊の本部に着いたフラン達は、新しい国家憲兵隊司令官のギョーム・デュヴァル少将の出迎えを受けて、同本部の会議室に案内されるとそこで彼から報告を受ける。
まずは、諜報部から提供された反乱軍のリストによって、反乱軍の実働部隊とその協力者や支援者の逮捕を全ておこなったこと。
デュヴァルは続けて尋問の報告をおこなう。
「拘束した者を取り調べたて解ったことは、逮捕した者の半分が国内の不満分子で残り半分は金で雇われた者と訛り方からサボワ出身者と思われます」
「サボワ出身者ということは、やはり【サルデニア王国】の者ということか」
彼の報告を受けたリュスがそう意見を述べると
「本人達は認めていないが、おそらくは…」
デュヴァルは証拠がないために、そうであると断定はせずに可能性があるという感じで、自分の意見を述べた。
それまで黙って報告を聞いていたフランが、デュヴァルにこのように指示を出す。
「【サルデニア王国】の者達にこのように取引を持ちかけろ。<【サルデニア王国】の軍人だと認め、それを証明できるなら大逆犯ではなく【捕虜】として国際条約に則って扱う>と」
これは大逆犯なら死刑だが、他国の軍人なら捕虜となり国際条約により守られ死刑にならない、つまり命を助けるということである。
フランは更に取引の内容を話し続ける。
「更に今回の反乱が【サルデニア王国】によって、仕組まれたものだと認める証言をすれば、司法取引で釈放して国に返してやってもいいと…」
(フラン様は捕虜達の存在事態を、今回の件は【サルデニア王国】の仕業である証拠とする気なのか。まあ、【サルデニア王国】は認めないと思うが…。)
そして、それは【サルデニア王国】に責任を追求し、相手の対応次第では戦争の大義名分になる。
少なくとも自国の世論は戦争に傾き、高揚することになるだろう。
<王女殿下は、戦争をするつもりなのだ>
ここにいる者達は、このような共通の考えに至る。
「了解しました。それで、自国の参加者の者達はいかがなさいますか?」
デュヴァルがフランに、大逆犯の処遇を尋ねると彼女は表情を変えずに淡々と答える。
「反乱に加担した自国の者達は、法に乗っ取って大逆罪により処刑。但し家族に累を及ぼさないようにせよ」
「…御意」
デュヴァルの返事が一瞬遅れたのは、17歳の銀色の髪で透けるような白い肌を持つ神秘的な見た目の麗しい少女が、王女とはいえ表情ひとつ変えずに冷酷なまでに、淡々と処刑命令を出した事に驚きを覚えたからであった。
そして、それはここに居たクレール以外の者も同じであり、特にロイクは心の中で
(うわ~、やっぱ怖いわ~、あのゴスロリ姫…)
こう思いながら、彼女の怖さを再確認していた。
ルイは複雑な気持ちで、無言のまま彼女の後ろ姿を見ていた。
こうして、一同は憲兵隊本部を後にして王宮に向かう。
反乱軍に荒らされた王宮は既に片付けが済んでおり、フランにとっては約二年ぶりの帰宅となる。
感慨に耽る間もなくフランは、一同を連れて王宮の会議室に向かい、そこで今後の大まかな行動指針を話し出す。
「貴官達も薄々気付いていると思うが、私は今回の反乱を企てたのは【サルデニア王国】だと考えており、彼の国に責任を取らせるつもりである。むろん奴らが素直に認めるわけがないので、実力行使になるであろう」
「戦うという事ですか?」
聞くまでもない事と解っていたが、リュスが一応彼女に質問する。
「そうなるであろうな。まあ、こちらの準備もまだ済んでいないから、直ぐにとはいかんがな。半年、もしくは一年後といったところだろう。それまでに、まずは軍の編成と人事を大幅に再編して、無能共を追い出して私を中心とした新たな軍事体制をつくる」
フランの軍の再編計画を聞いたロイクは、こう考えていた。
(ルイ君は、【性悪ゴスロリ姫】に付き合わされて参加決定だな、かわいそうに…。俺は任地のアブウィルに戻って呑気に過ごすよ。リア充爆発ならぬ乗艦が爆発して宇宙の藻屑にならないことを祈るよ…)
ロイクがそう他人事のように考えていると、フランがこのように発言する。
「もちろん、ここにいる貴官達には重職を担ってもらうことになる。そのつもりでいてくれ」
そう言ったフランは、ロイクの方をチラッと見てニヤリとする。
それを見たロイクにはフランのその笑みが悪魔のような笑みに見え
(オマエも一緒だぞ、死にたくなければ必死にやれよ)
と、言っているように見え
(マジか、このゴスロリ姫!?)
(マジに決まっているだろう、この『童の者』)
と、心の中で応酬し合った気がした。
(貴官達って、やっぱり僕も入っているんだよな? でも、士官学校も出ていないのに、どうすればいいのだろうか?)
ルイが自分の今後を考えている間に、フランが指示を出していく。
ロイクとリュスには現艦隊の運営と宙域の維持、デュヴァルには治安維持と拘束者の尋問と司法取引、クレールには軍の再編の準備と根回しを命じて解散を命じる。
会議室にフランと共に残されたルイが、彼女に質問しようとするとその前に彼女からその答えを聞かされる。
「士官学校の件なら、私は飛び級で卒業が決まっていて、オマエはこちらの士官学校に再び転校となっている。手を抜いているから、私のように飛び級卒ができないのだ。恨むなら自分を恨め」
ルイが彼女のまるで心を読むが如きの卓越した洞察力と推察能力に、感服していると彼女は彼に近づいてきて相変わらずの近すぎる距離感で懇願するような表情でこのような事を言ってくる。
「本当に大変なのはこれからだ。ルイ、これからも私の側にいて、私に力を貸してくれ」
(フラン様は、どこまで目指すつもりなのですか?)
ルイは、彼女の願いに対しての返事をする前にそう尋ねようと思ったが、答えを聞いた所で、”どうするのだ? 自分を頼っているこの妹のような少女を見捨てるのか?”と、自問し
“少なくとも、今の自分は彼女の力になってあげたい!”という結論にたどり着く。
ルイからの返事が返ってこない事に、不安そうな表情で待っているフランに彼はこう答える。
「微力を尽くします」
「うむ!」
彼のその返事を聞いたフランは、年相応の少女の笑顔で嬉しそうに頷きながらそう一言だけ言った。
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