91 / 154
第4章 第一次対大同盟戦
死闘マレンの戦い 03
しおりを挟む(どうやら、俺の武運は尽きていないようだな)
エドガーは間隙に突入するとそのまま時計回りで、ザハールカの率いる本隊の後背を取る事に成功する。
そして、後方で油断していた敵補給艦を回転砲塔で攻撃をしながら、突進を続けると前方に数隻の護衛艦に守られたザハールカの乗艦する旗艦を補足する。
ザハールカはその慎重な性格から、敵に狙われないよう又流れ弾が当たらないようにと前衛から離れた後方に旗艦を配置して指揮を行っており、その慎重さが完全に裏目に出る形となった。
「艦影照合完了、敵旗艦『レオーベン』です!!」
敵旗艦を捉えたと解ったオペレーターは、この最高の好機に興奮を押さえながら司令官に報告を行う。
エドガーもこの絶好の好機を逃さないために、脊髄反射に近い形で攻撃命令を下す。
「全艦最大船速で前進を続けながら、敵旗艦が射程距離に入った艦から砲撃を開始せよ!」
高速艦隊である彼の艦隊は2列横陣で、敵艦隊の背後を最大船速で直進しながら、敵旗艦に対して砲火を浴びせる。
そして、敵艦隊の背後に陣取るとレオーベンが味方艦隊に逃げ込もうとする前に、護衛艦を全て撃破して旗艦に火力を集中させる。
「全艦! 敵旗艦を逃がすな! 集中砲火を浴びせろ!! 撃てぇーー!!」
レオーベンはあと一歩という所で、集中攻撃を受けてシールドを使い切り、その船体に無数のビームが命中する。
「私の慎重さが全て裏目になるとは……」
戦いにおいて慎重な行動は大事ではあるが、<慎重すぎる行動>よりも<即決して大胆かつ迅速に行動する>方が有効な手段であると過去の名将達も言っている。
(※即決速攻は名将だから、有益に働くとも言えるが…)
少なくとも今回は、彼の参謀としての慎重さは全て裏目に出てしまい、自身と彼の指揮する艦隊に最悪の結果をもたらしてしまった。
爆発する艦橋で燃える炎を見ながら、ザハールカは自分の戦術論が間違っていたのかと自問自答を繰り返すが、艦が爆散する短い時間であった為に答えが出る前に乗艦と運命を共にした。
だが、慎重さを捨てた豪胆さも時には、悲劇を生むこともある。
それは、『レオーベン』が撃沈したすぐ後に起きた。
再戦時から、敵の本隊である敵右翼艦隊を艦隊数が不利でありながら、抑えていたルイ艦隊は敵の猛攻を受けていた。
当然兵士達を鼓舞する為に、前線で指揮をするルイが座乗する<祝福>を名前に持つ旗艦『ベニール』にも敵の猛攻撃は命中しており、エネルギーシールドで攻撃を受け続けた艦の残りエネルギーは少なくなってしまう。
「閣下、当艦の残りエネルギーが少なくなっています。この艦とその乗組員の命を預かる艦長として、敵の攻撃が届かない距離まで後退することを進言します」
艦長は席から立ち上がり、ルイの方を向くと軍人らしく背筋を伸ばして、司令官に後退の意見を具申する。
「艦長の意見はもっともです。艦を後退させてください。但しエネルギーの補給が済みしだい前線に戻ります」
ルイはもう少し前線で居たかったが、乗組員の命を守るために後退を許可する。
『ベニール』は後退を始めるが、敵の猛攻撃は続き後退する前に、遂その<祝福>の効果がなくなってしまったのかシールドエネルギーが尽きてしまう。
「シールドエネルギー残量ゼロです!」
オペレーターが焦った口調で報告した後に、続けて報告したオペレーターの口調には焦りと恐怖が混じっていた。
「直撃来ます!!」
その報告に、艦橋にいた全ての者達も焦りと恐怖の感情に支配される。
そして、モニターにビームが数本輝きを増しながら近づいてくる様子が映し出され、モニターの画面全体が眩しい光で満たされた時、船体が激しく揺れそれと同時に艦橋に爆発が起きる。
ルイは、爆発の爆風で指揮官席から地面に投げ出され、気付いた時には天井を見上げていた。
そして、腹部に強烈な痛みを感じ起き上がることもできず、そのせいか意識も朦朧とし始め思考も鈍くなる。
朦朧とする意識の中で、何気なく腹部の傷口を触ると爆発で飛んできた金属片が刺さっており、手に熱い血が付着するのを感じる。
暫くすると痛みを感じなくなり、腹部の怪我とそれによる思考の鈍りから、ルイは弱気な事を考え始める。
(こんな事なら…、早く公務員か小説家になっておけば、良かったな…)
周囲からは「損害状況を調べろ!」「隔壁閉鎖!」「消化急げ!」「怪我人の手当を!」「衛生兵を!」「軍医を呼べ!」と聞こえてくるが、今のルイには騒音にしか思えなかった。
(フラン様… 戦闘は上手く進んでいるだろうか…? …フラン様なら、上手くしているかな… フラン様…… )
そこで、ルイの意識は途切れてしまう。
「閣下! 閣下、しっかりしてください! 軍医は、軍医はまだか!!!」
参謀のシャルトー准将は、自らも頭と右腕を負傷して出血していたが、一通り部下に指示を出してから、それに構わずに意識を失ったルイに声を掛け続けていた。
暫くして、艦橋に到着した軍医達が、負傷者の手当を始め、ルイの応急処置も始める。
その頃、フラン艦隊はエドガー突撃と同時に反撃に転じるために、リュス艦隊の下まで移動しており、オトマイアー艦隊に2方面から攻撃を加えていた。
オトマイアーは当然目標であるフラン艦隊に攻撃を加えるが、戦い続けて物資と兵士の消耗が激しい彼の艦隊では、先程まで後方で待機していたフラン艦隊に攻勢を掛けることは出来ず逆に攻勢を受ける形となっていた。
そこに、総旗艦『ブランシュ』にルイ艦隊副司令官ナルシス・クラヴェル代将から、先程旗艦『ベニール』が被弾して、司令部との連絡がつかないと連絡を受ける。
その報告を受けたフランは、軍服の胸元の当たりを握るとそのまま心臓の辺りを抑えながら、目を強く閉じて何かを呟いている。
「 … ルイは大丈夫… 」
近くにいたクレールが聞き取れたのは、その言葉だけであったが、フランの胸元を握る手が小刻みに震えているのに気付き、フランが頑張ってルイは大丈夫と自分に言い聞かせて、冷静さを取り戻そうとしているのだと推察する。
「クラヴェル代将。司令部の安否が解るまで、貴官がル― ロドリーク艦隊の指揮権を代行して艦隊を率い反攻戦に打って出よ」
クレールの推察通り、フランは冷静さを取り戻すとすぐさまナルシス・クラヴェル代将に、ルイの代わりに彼の艦隊を率いるように命令を下す。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる