宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

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第4章 第一次対大同盟戦

死闘マレンの戦い 03

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(どうやら、俺の武運は尽きていないようだな)

 エドガーは間隙に突入するとそのまま時計回りで、ザハールカの率いる本隊の後背を取る事に成功する。

 そして、後方で油断していた敵補給艦を回転砲塔で攻撃をしながら、突進を続けると前方に数隻の護衛艦に守られたザハールカの乗艦する旗艦を補足する。

 ザハールカはその慎重な性格から、敵に狙われないよう又流れ弾が当たらないようにと前衛から離れた後方に旗艦を配置して指揮を行っており、その慎重さが完全に裏目に出る形となった。

「艦影照合完了、敵旗艦『レオーベン』です!!」

 敵旗艦を捉えたと解ったオペレーターは、この最高の好機に興奮を押さえながら司令官に報告を行う。

 エドガーもこの絶好の好機を逃さないために、脊髄反射に近い形で攻撃命令を下す。

「全艦最大船速で前進を続けながら、敵旗艦が射程距離に入った艦から砲撃を開始せよ!」

 高速艦隊である彼の艦隊は2列横陣で、敵艦隊の背後を最大船速で直進しながら、敵旗艦に対して砲火を浴びせる。

 そして、敵艦隊の背後に陣取るとレオーベンが味方艦隊に逃げ込もうとする前に、護衛艦を全て撃破して旗艦に火力を集中させる。

「全艦! 敵旗艦を逃がすな! 集中砲火を浴びせろ!! 撃てぇーー!!」

 レオーベンはあと一歩という所で、集中攻撃を受けてシールドを使い切り、その船体に無数のビームが命中する。

「私の慎重さが全て裏目になるとは……」

 戦いにおいて慎重な行動は大事ではあるが、<慎重すぎる行動>よりも<即決して大胆かつ迅速に行動する>方が有効な手段であると過去の名将達も言っている。
(※即決速攻は名将だから、有益に働くとも言えるが…)

 少なくとも今回は、彼の参謀としての慎重さは全て裏目に出てしまい、自身と彼の指揮する艦隊に最悪の結果をもたらしてしまった。

 爆発する艦橋で燃える炎を見ながら、ザハールカは自分の戦術論が間違っていたのかと自問自答を繰り返すが、艦が爆散する短い時間であった為に答えが出る前に乗艦と運命を共にした。

 だが、慎重さを捨てた豪胆さも時には、悲劇を生むこともある。
 それは、『レオーベン』が撃沈したすぐ後に起きた。

 再戦時から、敵の本隊である敵右翼艦隊を艦隊数が不利でありながら、抑えていたルイ艦隊は敵の猛攻を受けていた。

 当然兵士達を鼓舞する為に、前線で指揮をするルイが座乗する<祝福>を名前に持つ旗艦『ベニール』にも敵の猛攻撃は命中しており、エネルギーシールドで攻撃を受け続けた艦の残りエネルギーは少なくなってしまう。

「閣下、当艦の残りエネルギーが少なくなっています。この艦とその乗組員の命を預かる艦長として、敵の攻撃が届かない距離まで後退することを進言します」

 艦長は席から立ち上がり、ルイの方を向くと軍人らしく背筋を伸ばして、司令官に後退の意見を具申する。

「艦長の意見はもっともです。艦を後退させてください。但しエネルギーの補給が済みしだい前線に戻ります」

 ルイはもう少し前線で居たかったが、乗組員の命を守るために後退を許可する。

『ベニール』は後退を始めるが、敵の猛攻撃は続き後退する前に、遂その<祝福>の効果がなくなってしまったのかシールドエネルギーが尽きてしまう。

「シールドエネルギー残量ゼロです!」

 オペレーターが焦った口調で報告した後に、続けて報告したオペレーターの口調には焦りと恐怖が混じっていた。

「直撃来ます!!」

 その報告に、艦橋にいた全ての者達も焦りと恐怖の感情に支配される。

 そして、モニターにビームが数本輝きを増しながら近づいてくる様子が映し出され、モニターの画面全体が眩しい光で満たされた時、船体が激しく揺れそれと同時に艦橋に爆発が起きる。

 ルイは、爆発の爆風で指揮官席から地面に投げ出され、気付いた時には天井を見上げていた。

 そして、腹部に強烈な痛みを感じ起き上がることもできず、そのせいか意識も朦朧とし始め思考も鈍くなる。

 朦朧とする意識の中で、何気なく腹部の傷口を触ると爆発で飛んできた金属片が刺さっており、手に熱い血が付着するのを感じる。

 暫くすると痛みを感じなくなり、腹部の怪我とそれによる思考の鈍りから、ルイは弱気な事を考え始める。

(こんな事なら…、早く公務員か小説家になっておけば、良かったな…)

 周囲からは「損害状況を調べろ!」「隔壁閉鎖!」「消化急げ!」「怪我人の手当を!」「衛生兵を!」「軍医を呼べ!」と聞こえてくるが、今のルイには騒音にしか思えなかった。

(フラン様… 戦闘は上手く進んでいるだろうか…? …フラン様なら、上手くしているかな… フラン様…… )

 そこで、ルイの意識は途切れてしまう。

「閣下! 閣下、しっかりしてください! 軍医は、軍医はまだか!!!」

 参謀のシャルトー准将は、自らも頭と右腕を負傷して出血していたが、一通り部下に指示を出してから、それに構わずに意識を失ったルイに声を掛け続けていた。

 暫くして、艦橋に到着した軍医達が、負傷者の手当を始め、ルイの応急処置も始める。

 その頃、フラン艦隊はエドガー突撃と同時に反撃に転じるために、リュス艦隊の下まで移動しており、オトマイアー艦隊に2方面から攻撃を加えていた。

 オトマイアーは当然目標であるフラン艦隊に攻撃を加えるが、戦い続けて物資と兵士の消耗が激しい彼の艦隊では、先程まで後方で待機していたフラン艦隊に攻勢を掛けることは出来ず逆に攻勢を受ける形となっていた。

 そこに、総旗艦『ブランシュ』にルイ艦隊副司令官ナルシス・クラヴェル代将から、先程旗艦『ベニール』が被弾して、司令部との連絡がつかないと連絡を受ける。

 その報告を受けたフランは、軍服の胸元の当たりを握るとそのまま心臓の辺りを抑えながら、目を強く閉じて何かを呟いている。

「 … ルイは大丈夫… 」

 近くにいたクレールが聞き取れたのは、その言葉だけであったが、フランの胸元を握る手が小刻みに震えているのに気付き、フランが頑張ってルイは大丈夫と自分に言い聞かせて、冷静さを取り戻そうとしているのだと推察する。

「クラヴェル代将。司令部の安否が解るまで、貴官がル― ロドリーク艦隊の指揮権を代行して艦隊を率い反攻戦に打って出よ」

 クレールの推察通り、フランは冷静さを取り戻すとすぐさまナルシス・クラヴェル代将に、ルイの代わりに彼の艦隊を率いるように命令を下す。
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