宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

文字の大きさ
84 / 154
第4章 第一次対大同盟戦

マレンの戦い 01

しおりを挟む
 


 宇宙暦1799年6月11日―

 フランの予測通り、メーラー元帥率いるドナウリア軍北ロマリア侵攻艦隊は、ロンバディア星系惑星ミナノに到着して、1日掛けて宙域と惑星の重要施設を制圧した後に、更に西進してピエノンテ星系にあるピエノンテ公国の首都星惑星トリーノ制圧を目指す。

 その4日後の16日に、シンプロン航路を通過したガリアルム艦隊がミナノに到着する。

 時間はかかったが、一隻の落伍艦を出さずに難航路であるシンプロン航路を通過できたのは、日頃の訓練による成果と優秀な指揮官達の手腕によるものである。

「先行する偵察艦より通信。惑星ミナノの宙域に、敵艦隊1000隻を確認」

 ガリアルム艦隊の先頭を行くリュス艦隊に、偵察艦から敵のミナノ護衛艦隊発見の報告がもたらされ、その情報は直ぐに後続の艦隊に伝えられていく。

「全艦戦闘態勢を取れ」
 リュスの艦隊内には、彼女の命令とともに緊張も伝わっていく。

「我が艦隊は当宙域を放棄して、南西に進み味方艦隊と合流する」

 駐留艦隊の司令官は、同じく偵察艦からの報告を受けて、圧倒的な敵艦隊の数に宙域放棄を即断するが、その決断に部下はこのような伺いを立てる。

「惑星の施設を占拠している地上部隊は、いかがなさいますか?」

「もう、間に合わん。置いていくしかないであろう。地上部隊には降伏を許可すると伝えよ」
「はっ」

 司令官の判断は冷酷ではあるが、地上部隊の撤収を待っていては、その地上部隊を回収した艦ごと犠牲になり、被害は更に拡大してしまうため犠牲を最小限にするための苦渋の決断と言える。

 残された地上部隊からすれば、詭弁に聞こえるであろうが…

「敵妨害電波の効果範囲外に出ると同時に、本隊に敵艦隊がミナノを強襲したと通信を送れ!」

 こうして、駐留艦隊は一切の砲火を交えずに西に撤退していく。

「気付かれないように、あの艦隊を追跡せよ。敵の本隊まで案内してくれるはずだ」
 そして、それをモニターで見ていたリュスは、すぐさま数隻の偵察艦に追跡命令を出す。

「駐留艦隊が南西に撤退したということは、殿下の推察通りドナウリアの北ロマリア侵攻艦隊本隊はトリーノを目指しているということですね」

「これで当初の目的通り、敵の背後を遮断できたな。さて、老将はここからどう動くかな…。まあ、まずはミナノを制圧する。その間に敵の位置も掴めよう」

 クレールにそう答えたフランは、艦隊に地上制圧の命令を出す。
 降伏の許可が出ていた為、敵の反撃は無く半日でミナノを再制圧することができた。

「敵駐留艦隊追跡の偵察艦より入電、敵艦隊は航路を南西に進軍中とのことです」

 報告を受けたフランとクレールは、航路図の映し出されたモニターを見ながら、状況分析を行い敵艦隊の居場所を推測する。

「航路からすると敵の本隊はピエノンテ星系惑星リサンドリアから、アステイに進みトリーノに進んでいると私は推測するが、貴官達はどう思うか?」

「私もそう推察します。普通ならミナノからトリーノへは、西に進んで惑星ノヴァラを経由するのが最短でありますが、それではトリーノに居る我軍の想定範囲内なので、不意は突けません。小官なら少し遠回りになりますが補給が持つ限り南西に進んで…」

 リュスは手元のコンソールで、航路図に進行ルートの印をつけると説明を続ける。

「惑星アルバまで南下して、そこからトリーノへ進軍します。そうすれば、不意を突けなくとも予想外の範囲から攻められた事により、敵は心の余裕を少しは無くすことでしょう」

 リュスと予測が一致したことにより、フランは自信を持って次の作戦行動を決める。

「敵の老将も恐らく同じ考えで、南下していたのであろう。だが、敵は先程逃げた駐留艦隊から、我らが背後を遮断した報告を受けて進軍を中止するはずだ。我らもこれより、このミナノから惑星トルトナまで南下する。そこまで、移動すれば敵の動きもわかるであろう」

 こうして、ガリアルム艦隊はミナノから南下して、トルトナへの進軍を開始する。

 その頃、ドナウリア艦隊はフラン達の予想通りアステイまで進軍していたが、そこでガリアルム艦隊がミナノに現れた報告を受ける。

「そうか。我らの背後に出るためにスイッスの難航路を通って、ミナノに現れたか…」
 報告を受けたメーラー元帥は、艦隊の進軍を停止させる。

「閣下、どういたしますか?」

 参謀長のアンドレアス・ザハールカは、メーラーに指示を仰ぐと彼は右手で顎を触りながら、「うーん…」と考え込み、暫くしてから命令を下す。

「このまま背後を遮断され、補給を断たれたままトリーノに進軍しても、分が悪かろう。リサンドリアまえ引き返し、敵の出方を窺うとするか」

「はっ」

 老将の判断は手堅く、このまま進軍してトリーノを占領したとしても、補給を断たれている以上、こちらが干上がり撃破されるだけであると予測して、それならここで引き返すことで余計な戦闘をして無駄な消耗をせずに、背後のガリアルム艦隊との戦いに備えるというものであった。

 かくして、ドナウリアの北ロマリア侵攻艦隊は、アステイから反転してリサンドリアへと迅速に引き返す。

「リサンドリアに駐留させているオトマイアーに伝達。麾下の艦隊2000隻とミナノの1000を新たに指揮下に加えて、ガリアルム艦隊に威力偵察を行うように伝えよ」

 ザハールカはメーラーの命令を聞いて、「3000隻で1万隻以上の敵と戦わせるのは、無謀ではないですか!?」と、進言しようとするとメーラーから命令の続きが話される。

「ただし、勝つ必要はない。むしろ被害が出る前にある程度戦ったら、リサンドリアに撤退するように伝えよ」

「閣下…。足止めとは言え、この命令では悪戯に兵力を失うだけではありませんか?」

 参謀長は、この命令が自分達の本隊が到着するまでの足止めであることは看破したが、それにしても無謀すぎると思い考えなすように提言する。

 すると、メーラーからはこのような言葉が返ってくる。
「参謀長… 足止め以外に、この作戦の真の意図が解らぬか?」

「申し訳ありません… 小官の非才の身には、これ以上は…」

 ザハールカはこの命令の真意を測りかねて、素直にそう答えるとメーラーは「フォフォフォ」と笑った後にこう答える。

「参謀長が気付かないなら、敵も気付かん可能性が高いな。参謀長、命令を伝達せよ」

 自身に満ちたメーラーの表情を見て、「はっ」とザハールカは返答すると、通信兵に命令を出すように伝えに行く。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...