宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

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第4章 第一次対大同盟戦

ベシンゲンの戦い 02

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 ロイク艦隊の先制攻撃を受けたレズェエフ艦隊左翼は、陣形変更中であったがロイク艦隊が射程距離にいるのは解っていたので、事前にエネルギーシールドを張っており、大きな損害を受けることはなかったが、陣形変更途中で移動する艦同士の間隔は狭くENが尽きて後退や回避できない艦は撃沈されてしまう。


 ロイク艦隊の攻撃を受けながら、レズェエフ艦隊が何とか陣形を組み直した時、ヨハンセン艦隊もロイク艦隊と合流を果たす。

「撃て!」

 ヨハンセンがそう短く攻撃命令を出すと両軍は20万キロの距離を挟んで砲火を交えることになる。

 両軍は戦闘開始から激しいビームの応酬を行い、敵の攻撃を受けてエネルギーシールドのENを消費した艦は後方に下がり、後ろで待機していた艦が代わりに前にスライドして出てくる。

 だが、時間が経つにつれ、レズェエフ艦隊に交代が間に合わなくなって、撃沈する艦が増えてくる。

「これは、どういうことだ… 同兵力であるのに、我が艦隊の被害が多いのは何故だ!!」

 レズェエフは怒気の混じった声で、副官に尋ねるが彼はすぐには上官のその問いに答えられなかった。

「それは、艦隊を構成する艦種の差だよ」

 同じ質問をクリスから受けたヨハンセンはそう端的に答えた。

 レズェエフ艦隊は、高速艦隊であるロイク艦隊を追撃するために、船速の早い巡洋艦や駆逐艦で構成されている。

 それらの艦種は、速度は早いがその分、戦艦よりも防御力と攻撃力を犠牲にしており、それに比べて戦艦の船速は遅いが、攻撃力と防御力は高く撃ち合えば先に撃沈されるのは当然巡洋艦や駆逐艦である。

 ロイク艦隊は高速艦隊であるが、高速戦艦を1000隻有しており、ヨハンセン艦隊は2000隻すべてが戦艦であり、正面から撃ち合えば結果は火を見るより明らかである。

 レズェエフ少将がその事に気付いた時、彼の艦隊は4000隻まで撃ち減らされていた

「撤退だ! 撤退する!!」

 レズェエフ少将は、自艦隊の不利を悟ると艦隊に撤退命令を出すが、副官のステプキン大佐からはこのような提言がなされる。

「閣下、敵前で反転すれば被害が増大していまいます。このまま後退するほうが良いのではないでしょうか?」

 彼の進言は教科書では正解であったが、今回の状況には不正解である。

「このまま正面で撃ち合えば、戦艦のない我が艦隊が削られるだけだ! ある程度の犠牲を覚悟で反転して、距離を取って逃げるべきだ!」

 レズェエフ少将のこの意見は、この状況では2番目に正しいモノであると言える。

「敵の本隊がこちらに来ているとはいえ、まだかなり後方にいて間に合うか怪しい。それならば犠牲を覚悟で反転して、味方に向かって艦隊の速度を活かして逃げたほうが、戦艦で構成された我が艦隊を引き離せるために、このまま撃ち合うより犠牲は少ない」

 ヨハンセンは、敵が取ると推測される次の行動をクリスにそう説明する。

「先程、その作戦は2番目に正しいとおっしゃいましたが、一番目は何ですの?」

 シャーリィのこの質問にヨハンセンは、

「味方の被害を最小限に抑える最良の行動は… 降伏することですよ」

 苦笑しながらそう答える。

(それは無いだろうな…)

 何故ならこう確信していたからであった。

「敵が反転を始めました」
「全艦、ありったけのビームとミサイル、レールガンを叩き込め」

 敵が反転を終えて逃げに転じれば、戦艦で構成された自艦隊では追いつけない事が解っているヨハンセンは、追撃戦の物資を残さずに全力攻撃を命じる。

 反転するために艦の全面から側面全体へとシールド発生面積が増えたため、EN消費が増えた所に、ヨハンセン艦隊の苛烈な攻撃を受けたレズェエフ艦隊の艦は、次々とENを消耗させシールドが張れなくなり、船体をビームやミサイルによる攻撃で破壊され、次々と爆散していく。

 反転を終えたレズェエフ艦隊が撤退を開始した時、残存艦艇数は約2000隻まで撃ち減らされていた。

 特に被害が出たのは、ヨハンセン艦隊と対峙していた左翼から中央で、被害報告を受けたレズェエフは黙って唇を噛み締めるが、彼には悔しさに打ち拉がれる暇はなかった。

 何故ならば、同じく高速艦隊であるロイク艦隊が15万キロ後方から攻撃を加えながら、追撃を行っているからである。

「攻撃を集中させて、敵艦を一隻ずつ確実に減らしていけ」

 ロイク艦隊は、効率よく砲火を集中させると敵艦のシールドに一気に負荷を掛けて、ENを消費させシールドを発生出来なくさせる。

 そうして、一隻また一隻とレズェエフ艦隊の艦数を削っていく。

 その10万キロ後方で、ヨハンセン艦隊が補給を行いながら追撃していると彼の元に暗号電文が送られてくる。

「キングペンギンからコウテイペンギンへ、ワレ予定通り敵を補足せり これより攻撃に入る」

 オペレーターが報告した暗号電文は、ウィリアム・バスティーヌ(ウィル)少将からであり、彼は分艦隊を率いていた。

 その目的は―

「前方より、敵艦隊接近! 数はおよそ3000隻!」
「何…!?」

 偵察艦より送られてきた報告をレズェエフ少将は愕然とする。

 その報告にあった敵艦隊3000隻こそウィルの分艦隊であり、彼の艦隊の任務は敵の索敵網に見つからないように大きく迂回して、逃亡してくる敵艦隊の頭を押さえることにあった。

「ようやく、キングペンギンの到着か。全艦、攻勢を強める! バスティーヌ艦隊と連携して、敵の戦力を一気に奪う!」

 ロイクは指揮席から立ち上がると全艦に、攻勢を強めるように指示を出す。

「撃て!」

 それと同時に、ウィルも攻撃命令を下す。

 撤退する為に縦陣を組んでいたレズェエフ艦隊の先端に、鶴翼陣であるウィル艦隊から集中攻撃が浴びせられる。

 もちろんこの鶴翼陣もヨハンセンの指示であり、彼は撤退するレズェエフ艦隊が移動力のある縦陣か紡錘陣であろうと予想しての事であった。

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