宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

文字の大きさ
120 / 154
第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)

二人の過去 ルイ編 その1

しおりを挟む



 10歳になった僕は、少し早い社交界デビューのために、父に連れられて王宮の宮廷晩餐会に来ていた。

 しかし、10歳の子供には宮廷晩餐会など退屈で仕方がなく、早く帰りたいと思いながら料理を食べていた。

 そこに父親がやってきて、何でも国王一家が社交界デビューした自分とお会いくださるそうだ。

「陛下。我が息子とお会いくださり、恐悦至極でございます。今宵のことは我が息子の生涯の誉れとなるでしょう」

 父親がこのようなことを言っていたが、国王様と王妃様の前で緊張していた僕はよく覚えておらず、お二人が何かお声を掛けてくれていたがそれもよく覚えていない。

「先程まで、フランがそこに居たのですが… どこに行ってしまったのかしら? ルイ、あなたより2歳年下なので、仲良くしてあげてね」

 王妃様がそのような事を言っていたのだけは覚えている。

 父親も「お近づきになっておけ」と言っていたが、10歳の僕ではあんな怖い目をした少女とまともにお話できる気がせず、僕はフラン様に会う前に会場から逃げ出していた。

 何故なら、あの頃のフラン様は子供が遠くから見ただけでもわかる怖い目をしていたからで、その目は今も時折見せる瞳から輝きが消え、瞳孔が開いている今の僕が見ても怖い目であり、当時のフラン様はずっとあの目をしていて、この時の僕は”あんな怖い目をした子とは、仲良く出来る自信がないです”と、思ったからだ。

 そして、当然広大な王宮で迷子になってしまい宛もなく歩いていると中庭に出てしまう。

 今にして思えば、あの広い王宮で中庭に辿り着いたのも、中庭を歩き出したのも何かの運命だったのかもしれない。

 何故なら次の瞬間、樹の下で月明かりに照らされながら、本を読む美しく神秘的な少女が僕の目に映ったからである。

 その少女は綺麗な銀色の髪と白い肌で、顔立ちも凄く整った人形のような美少女で、銀色の髪と白い肌は月の光りで更に輝いているように見えており、その姿はまるで僕が今まで見てきた小説や漫画から抜け出してきたような存在で、僕は思わず息を呑んで見とれてしまった。

 ただ、目はあの怖い目のままだった。

 すると、フラン様が突然本を自分の顔の前に持ってきて、体を震わせ怯え始める。

 その表情は、あきらかに恐怖に支配されており、僕は何事かと思って近くまで駆け寄ると、フラン様が木の上から糸で下りてきた蜘蛛に怯えていることに気付く。

 不謹慎ではあるが、僕は蜘蛛に怯えるフラン様を見て、初めて年相応の少女の一面を持っていると思い、仲良く出来るかもしれないと感じる。

 僕はすぐに近くに落ちていた小枝を拾うと、それを蜘蛛に近づけて蜘蛛が小枝に乗り移るのを確認すると、直ぐに少し離れた茂みまで連れて行き蜘蛛を逃がすことにした。

 蜘蛛を逃した後、フラン様の元に向かうと彼女は少し俯きながら、本を持っていない左手でソワソワした感じで肩まである綺麗な銀髪を触った後、

「たっ 助かった。礼を言う… ありがとう…」

 そうお礼の言葉を言ってきたが、その後に俯いていた顔を上げて僕をあの怖い目で見てくる。

(こっ 怖い!!)

 僕は思わず逃げ出したくなるが、そのようなことをすれば、後で問題になるのは子供心でもわかる。

「あっ いえっ そのようなお言葉もったいないです… 恐縮です」

 必死に恐怖に耐えながら、フラン様に返答するが、怖くて目だけは合わせられなかった。

 しかし、近くで見ると目は怖いけどその姿はやはりとても神秘的で、僕は怖い目を見ないように失礼ではあるが、チラチラとそのお姿を見てしまう。

 すると、フラン様はその事に気付いて、気に触ったのか抗議してくる。

「何だ!? さっきから、チラチラ見て! キサマが私のこの珍しい姿に興味を持つのは理解できるが、目を合わせようとしないのは少し失礼ではないか?」

「もっ 申し訳ありません…」

(僕が目を合わせようとしないばかりに、フランソワーズ様を傷つけてしまった…)

 僕が申し訳なく思っていると、それが表情に出ていたのか優しいフラン様は、僕の気持ちを察して

「まあ、私のような気持ちの悪い姿をした者とは、目は合わせたくはないであろうな。子供とは正直なものだ……」

 自嘲気味にこのような事を言ってくるが、その表情は明らかに曇っていた。
 その表情を見た時、僕の胸はズキンと痛む。

 僕は愚か者だ! 
 自分の心が弱いばかりに、自分よりも幼い少女を傷つけてしまった… 

 彼女はその人とは違う容姿から、周囲の大人達から奇異な目で見られ、今まで心に傷を負い続けて来たに違いない… 

 そして、僕が目を合わせないことから、同じ子供の僕まで自分をそう思っていると思って、傷ついたに違いない。

 でも、それは違う!

 他の者達はどうかわからないが、フランソワーズ様のお姿はとても神秘的だし、僕にとっては大好きな小説から、飛び出してきたような素敵で魅力的な女の子だ!

 子供だった僕は、自分の気持ちを上手く言葉に出来なかったが、フラン様に思いの丈をぶつけた。

「違います! フランソワーズ様のお姿が、あまりにも神秘的で…、 失礼とは思いましたが、思わず見てしまいました! 気持ち悪いだなんて、そんなことはありません! とても、魅力的で素敵だと思います!!」

 だが、当然フラン様からは、目を合わせないことについて、質問が返ってくる。

「そのように好意的な目で見ていたなら、どうして目を合わせようとしない?!」

 ここで、下手に誤魔化せば頭のいいフラン様に、今までの僕の言葉全てが嘘だと思われてしまうだろう。

 なので、僕は正直に目が怖いことを伝える。

「はい、失礼だとは思いますが、正直にお話します! 目と… 目付きが怖いからです!!」
「私の目と目付きが怖い!!?」

 フラン様にとって、僕の理由は思いも寄らないモノだったらしく、とても驚いた表情をしている。

(自覚していなかったんだ…)

 僕がそう思っていると、フラン様は本を持つ右手とは逆の空いている左の手を目の前に持っていき、目を隠してくれる。

「これなら、怖くないか?」
「はい!」

 僕は元気よく返事をするが、フラン様が自分で目を隠す姿に、コレはコレで気が引けてしまう。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...