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第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)
予期せぬ要件 その3
しおりを挟むフランは肌が普通より白いために、赤くなると解りやすい。
彼女はルイに抱きしめられ、わかりやすく真っ赤にさせた顔でアワアワしており、今度は別の思考で冷静さを失っていた。
だが、先程までの不快と絶望とは違いその理由は、嬉しさと喜びであった。
何故なら、恋愛中学生のフランにとって、男性との親密行為とは1・手を繋ぐ、2・抱擁する、3・キス(現地点のゴール)なためであり、1の<手を繋ぐ>を飛び越したのは残念であるが、とにかく2の<抱擁>が今行われているので、彼女の頭の中はすっかりお花畑になっていた。
しかも、ルイの<僕はアナタを支え続けてみせます>発言を<生涯支えます>へと都合よくヤンデレ脳内変換し、その<生涯支えます>を<結婚>へと更にヤンデレ脳内変換する。
そして、そこからまだ若いので、<将来、結婚しましょう>となり、更にあと数回ヤンデレ脳内変換が行われ、最終的に<フラン様、アナタを一生愛し支え続けます。僕と将来結婚してください。いや、フラン。俺と結婚しろ!>と、ルイが求婚したことにフランの脳内でなってしまう。
しかも、変換されすぎて何故か最後のルイのセリフが、今まで彼が微塵も見せたこともない俺様キャラになってしまっている…
冷静さを欠いているのはルイも同じであり、彼もあのフラッシュバックのお陰で、突発的行動を取ってしまっていた。
この行動は彼の今後の人生を、決定的にしてしまったかもしれない。
だが、<フランにあのような最後を迎えさせるわけにはいかない>という思いは本物であり、そのために彼女を支えるという決断は後悔していない。
まあ、後に後悔するかもしれないが…
少し時間が経ち冷静さを取り戻したルイは、自分がフランを抱きしめるという臣下にあるまじき、無礼極まりないことをしていることに気づき、慌てて離れるとすぐさまベッドの上で頭を深く下げて謝罪する。
「もっ 申し訳ありません! このような無礼な事をしてしまって!」
ルイが一分程頭を下げた後に、恐る恐る頭を上げてフランの顔色を伺うと、彼女は怒るどころか、むしろ「えっ!? もう終わり?」といった表情でルイを見ており、むしろ残念といった感じで椅子に座っている。
そして、ルイと視線が合うとフランは紅潮した顔でモジモジしながら、無言でその白く細い指で綺麗な銀髪を触り、暫くしてから恥ずかしそうにルイの方をチラチラ見ながら、このような事を尋ねてくる。
「あの… その… アレか? 私をこれから、スキにするつもりか? それなら、私は初めてだから、優しく… 」
「いえ、それは結構です!」
ルイは右の掌を前に出して、すぐさま”キッパリ”とそう答える。
彼はフランを支える決心はしたが、そのまま特大の核兵器地雷を踏むつもりはなかった。
彼女もルイの態度に少し引っかかったが、本心ではそういう関係はまだ早いと思っているので、それ以上は追求しなかった。
何故なら、(フランの中では)求婚されているのだから、最早結果を急ぐ必要など無いからである。
果たして、この出来事でフランが最悪の結末から逃れられるのか、ルイが最悪の結末を迎える事になるかは、彼ら次第であろう。
こうして、その後は特に何事もなく、艦隊はピエノンテ公国首都星トリーノに到着する。
そこでフラン達は、領主でありリュスの父であるジョゼフ・レステンクール公爵の歓待を受ける。
彼は派手な戦勝パーティー開催をフランに打診したが、彼女は
「本国ですることになるから、今回やっても税金の無駄使いである」
として断った。
そして、兵士達に補給の間、半舷上陸を許し戦いと行軍の疲れをとらせると、自身は基地の超光速通信設備を使用して、本国と通信を行い新たな指示を出す。
その後に、ライン方面で勝利を上げたヨハンセンとロイクと、初めて直接の通信をおこなう。
現在彼らの艦隊は、バ=ラン星系惑星ストラーブールに駐留しており、損傷した艦の修理を行っていた。
予定では、昨日援軍に来てくれたホレス・エリソン中将の艦隊と共に、戦闘行動可能な艦を率いて、今度はこちらが援軍としてドナウリア領ネイデルラントに進軍するはずであった。
だが、4日前にオソロシーヤ帝国が対仏大同盟離脱を表明すると、それに追従するように翌日にはプルトゥガル王国、そして、2日前にゲルマニア諸国が次々と離脱を表明したため、ドナウリア領ネイデルラントは孤立する事になり、昨日エゲレスティアの侵攻艦隊に降伏を申し出た。
そのため、進軍は中止となり、この地で修理と休息を行っていたのであった。
「両提督ともこの度の勝利見事であった。この功は後日昇進で報いることにしよう」
「はっ。有難うございます」
モニターに映し出されたヨハンセンとロイクは、敬礼して感謝の意を述べる。
「ところで、ルイ君― いえ、ロドリーグ中将の容態はいかがなものでしょうか?」
ヨハンセンは、弟子とも言うべきルイの容態をずっと案じており、フランに尋ねるのは失礼とは思ったが、気になっていたので質問することにした。
「案ずることはない、順調に回復している。貴官達と首都星で再開する時には、全快しているであろう」
フランは、<愛(l’amour(ラムール))>と、書かれた洋扇子で扇ぎながら、嬉しそうにそう答える。
これは、もちろん<ルイとの恋の進展(思い込み)>のフランの匂わせ行為であるが、恋愛に鈍感な両提督は気づかず見事にスルーする。
両提督が何のリアクションもしないので、フランはクレールをチラミすると、彼女は目が合った瞬間、目を横に逸してノーリアクションの態度をとる。
リアクションするとこのお花畑姫から、鬱陶しい反応が返ってきそうだったからである。
三人から何の反応もされなかったフランであったが、お花畑状態の今の彼女には周りの反応など関係なかった。
翌日、同盟崩壊によって交戦維持が不可能となったドナウリア帝国から、正式に講和条約の申し出を受けることになる。
こうして、一連の第一次対仏大同盟戦は幕を下ろす。
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