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第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)
Vive L'Empereur(皇帝万歳) その6
しおりを挟む「ううぅぅ… 気持ち悪い… 頭痛い…。もう二度と酒は飲まない…」
惑星ランヌから首都星パリスへの航路を進む自分の旗艦【ブランシュ】の自室で、フランはベッドに横たわって、二日酔いと格闘を繰りひろげていたがすぐに白旗をあげている。
ルイが心配して、会いに来たが面会を拒否している。
その理由は、実に恋する乙女らしいモノで、二日酔いによる酷い表情を見せたくないからである。
面会を拒否されたルイは、親衛隊に自室まで連行されると半ば軟禁状態にされてしまう。
これは、ブランシュには多くの女性士官が乗艦しており、その者達と会わせたくないフランの指示である。
彼の旗艦【ベニール】は、先のマレンの戦いで損傷したため現在修理中であり、彼は【ブランシュ】に用意されている部屋で、パリスまでの航路を過ごすことになる。
首都星パリスに戻ったフランは、皇帝として政務と軍務を精力的にこなしており、フランソワーズ政権は順調な滑り出しを見せていた。
そのフラン帝政において、初めての勲章授与がおこなわれることになった。
その初めての名誉を与えられたのは、もちろん彼である。
「ルイ・ロドリーグ大将、先のマレンの戦いにおいて、機転を利かせ反転した後にその生命を賭して皇帝陛下をお護りした貴官の忠誠と功を讃えて、この<皇帝フランソワーズ勲章>を授与するものとする」
<皇帝フランソワーズ勲章>は、金色のフランの胸像があしらわれており、あらゆる意味で特別製である。
何故なら、フランの姿があしらわれているのは、いつでも自分と一緒(いつでも、監視しているぞ)という意味が当然込められている。
更にこの勲章には超小型の盗聴器と盗撮カメラ、GPS発信機が秘密裏に仕込まれており、その目的はルイの動向を監視するためのものであり、そのため授与されたのは後にも先にもルイだけである。
クレールが彼の功績を讃える文言を述べると、フランが彼の胸にこの特別な勲章を取り着ける。
しかし、ルイは授与式が終わった後、すぐにこの勲章を金庫に大事に保管する事にした。
それは、戦場で研ぎ澄まされた名将の危険回避能力であったかはわからないが、ルイは身に着けておくより保管するほうが良いと直感的に感じたのであった。
思惑の外れたフランは、当然後日に何故身に着けていないのか問い質す。
「ルイ! どうして、勲章を着けていないのだ!?」
「あの勲章は、フラン様の姿があしらわれていているので、アチコチ尖っていて引っ掛けやすいので、失くしてはいけないと思いまして金庫内に大事に保管しております」
ルイは奇しくもアーサリンと同じような理由を述べてしまう。
「それでは、意味がないのだ…」
フランがそう言って、困りだすとルイは逆に問い質すことにする。
「どうしてですか?」
「そっ それは… 」
フランが答えに窮したのも無理はない、勲章は重量や形状によって邪魔になることがあり、儀式やそれに準ずる場合以外は佩用しなくても良いことになっているためである。
(※その代わりに胸に略綬を着ける事になっている)
彼女にしては、珍しく間の抜けた策であった。
フランは自分の間抜けさに珍しく落ち込んで元気が無くなると、ルイは彼女の元気がない理由を執務で疲れていると考えて心配になって声を掛ける。
「フラン様。元気がないようですが、あまり無理はなさらないように」
ルイが自分を心配してくれていると解ったフランは、ここで彼女にとっては大胆なお願いをしてくる。
「オマエが… 手を握ってくれたら… いや、あの時のように抱きしめてくれたら、元気になるのだがな…」
フランは恥ずかしそうにモジモジしながら、そう言って顔を赤くしてチラチラ見てくる。
もちろん、あの時とは病室での事である。
「恥ずかしいので、後ろからでいいなら…」
ルイも顔を赤くして、暫く考えると恥ずかしそうにこのように答えるとフランも顔を真赤にさせて、黙って頷くという中学生カップルみたいな初々しいやり取りをおこなう。
ここに、ロイクかクレールが居たら、このように突っ込んだであろう。
「中学生か!!」
こうして、ルイは照れながら、更に照れるフランを後ろからハグすることになる。
だが、厳密的に言えばルイは腕に力を入れていないし、フランも緊張のあまり直立不動していて、とてもハグとは言い難い。
しばらくの間、二人は無言のままその体勢を維持した後に、お互い恥ずかしそうに顔を赤くしたまま離れると、ルイは無言のまま部屋を後にしてしまう。
部屋に残ったフランは椅子に座ると両手を顔に当てて、ハグされた恥ずかしさと喜びで悶え始める。
彼と彼女がこのように、平和の時間を過ごしていた頃、世界にも比較的平和な時間が流れていた。
だが、この平和が長く続かないことは、時流が読める者なら予測しており、その予測に向けて水面下で第二次対仏大同盟の準備が行われていた。
「陛下はこの平和が、あとどれくらい続くとお考えですか?」
「そうだな…。短くてあと、1年… 長くて2年と言ったところだな」
クレールの質問に、フランが自分の予測を答えると質問者も同じ推察であったらしく、黙って頷きそれを肯定の証とする。
彼女達の推察通り、1年半後に第二次対仏大同盟が結成され、この宇宙は三度戦乱に覆われる事になる。
だが、その戦いでおこなわれる<三帝会戦>での芸術的な勝利は、後にフランとガリアルム軍の名を歴史に刻むことになる。
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