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第6章 三帝激突
第二次対仏大同盟 その1
しおりを挟む宇宙暦1800年10月10日―
ガリアルム帝国では、この日急遽フランの皇帝即位一周年式典が執り行われることになり、特別に祝日となって式典の模様は帝国内だけでなく全宇宙に向けて発信される。
フランは式典内で、この式典の目的である演説を行う。
演説をおこなう彼女の美しい顔は自信に満ちており、瞳には激しい光をたたえている。
演説はこの一年の国の発展への国民と臣下への労いの言葉から始まり、内外の情勢に続き来たるべき戦いについて述べると最後にこのように続く。
「安全な王宮から、指揮をする臆病者に皇帝を名乗る資格はない! ガリアルム帝国の皇帝は、その至尊の座に相応しく兵士の後ろに隠れて、勝利を得るという卑怯な真似はしない! 常に前線に立って、諸君達と共に命を懸けて祖国と未来のために勝利を勝ち取るであろう!!」
「Vive l'Empereur!(皇帝万歳!)」
フランの演説が終わると、式場内はもちろん外からも彼女を讚える歓喜の声があがる。
皇帝自らが危険な戦場で命を懸けて戦うという宣言は、兵士や国民にとって戦いに対してこれ以上無い一体感を生み出し、士気を大いに上げる事になる。
「あのフラン様が、こんな立派なことを言うなんて、お姉さん嬉しいわ」
リュスは、小さかった頃の他人に興味がないといった雰囲気を出していたフランを思い出しながら、成長した彼女を見て感涙している。
だが、式典用の正装に身を包んだヨハンセンとロイクは、フランの演説の最後の文言を聞いて、この式典がおこなわれた真の目的を悟る。
式典の後、ヨハンセン執務室―
「では、今回の式典の目的には、フラン様の指示アップと国威発揚の他にも目的があったと?」
「ルイ君も聞いただろう? 陛下の最後の言葉を。あれは自分以外の皇帝に対しても、そうしろと言っているのさ」
ルイはヨハンセンとロイクから、今回の真の目的を聞かされる。
「他の皇帝… ドナウリアのフリッツ2世とオソロシーヤのアリスタルフ1世ですか?」
「その通り。今回の演説を聞いて臆病者、卑怯者と暗に言われた他の<皇帝>達は、どうでるかな?」
「例え本人達に戦場に出る気がなくとも、兵士や国民の感情を考えれば、少なくとも今回は出ざるをえんだろうな」
ロイクの推察通り、これで今回の戦いに二人が出てこなければ、両国の兵士と国民は『自分達の皇帝は、安全なところから国民にだけ、戦場で死んでこいと言っている』と捉え、その士気は大いに下がり、最悪戦いどころではなくなるかもしれない。
「ですが、その二人が戦場に出てくれば、敵の士気があがりますよね? 逆効果ではありませんか?」
クリスが疑問を口にする。
彼女の言う通り、両軍の士気は大きく上がるであろう。
「だが、今回に限っては士気高揚のプラス効果より、皇帝達が戦場にいるマイナスの方が大きいのさ」
ヨハンセンはそう答えると、彼女がいれてくれた紅茶を飲む。
彼やロイクが気づいたフランの目的は、三帝会戦で現実のモノとなる。
宇宙暦1800年10月13日―
ガリアルム軍は、かねてから計画されて大々的宣伝されていた、同盟国であるエゲレスティアと大規模な合同軍事演習を行うため、首都星系守備のディタリー艦隊4000隻、ピエノンテ公国に駐留するワトー艦隊4000隻を残して、残る艦隊36000隻が北ガリアルムのパド=カレー星系惑星ブローヌ=メール宙域に向けて、順次進発を開始する。
「しかし、閣下。この時期に、全体の8割を北に集結させて大規模演習を行えば、本国は手薄となりますが、よろしいのでしょうか?」
先発したリュス艦隊旗艦<ノウブル>の艦橋で、参謀のマルグリット・マルソー准将が、対仏大同盟がいつ宣戦布告するかどうかの現在の状況下で、北に艦隊を移動させることに危惧を覚える。
そして、そのことを憂慮しているのは、彼女だけではなく高官達の共通の懸念事項であった。
「この大規模な軍事演習には、両国の結束力と軍事力を内外に見せつけて、その国力を誇示するのが目的である。それに、そのようなことは陛下も承知しているはず。それでも、演習を敢行するからには、それなりの理由があるのだろう。我々が心配する必要はないわ」
指揮席に座るリュスが威風堂々と答えたため、マルソー准将以下艦橋にいた乗組員はそんな司令官を見て安心する。
(皆を不安にさせないためにも、こう答えはしたけど恐らく敵はこの機を逃さないわね。この行動が敵を誘う誘引であるのは明白だけど… さあ、これが吉と出るか凶と出るか…)
リュスも不安は感じていたが、司令官として噯にも出さずにいた。
その頃フランの執務室―
「先発のリュス艦隊が新発しました。各艦隊各自出撃となり、夜には演習に参加する全艦隊の進発が完了する予定です」
「そうか… ならば、私もそろそろ進発の準備をするか」
進発ギリギリまで政務をおこなっていたフランは、クレールの報告を受けると書類を整理して進発の準備を始める。
「敵はこの誘いに乗ってくると思いますか?」
「乗ってくる。敵にとっては、こちらが態と首都星系を手薄にして誘っていると解ったとしても、好機には違いないからな」
開戦の機を狙っている大同盟側にすれば、首都星系が手薄となるこの演習を好機と捉えるであろう。
その時、扉をノックする音が部屋に響き渡り、フランは訪問者に入るように伝えると、諜報部のフランツ・フジュロル少将が敬礼して入室してくる。
「陛下。オソロシーヤに潜入させている部下より、報告が入りました。どうやら、艦隊を国境に移動させる決定がなされたようです」
「オソロシーヤは乗ってきたか。ならば、ドナウリアも動かざるを得なくなるな」
艦隊の再建が十分ではないドナウリアは、今回の戦いの戦力の大半をオソロシーヤに依存しているため、彼らの開戦の意向を無視できないであろう。
「さあ、我らも舞台に上がる準備をしようか」
フランは迫りくる戦いの高揚感のせいか少しオシャレな言い回しをしてしまう。
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