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第6章 三帝激突
ウムル戦役開始 その4
しおりを挟む11月30日―
惑星ロイトリンデンから、通常航行で3日の距離にある惑星レーマースタイン宙域に、東に進軍していたエドガー艦隊は警戒態勢で駐留していた。
ウムルからワープ航法を含めれば、1日半から2日で到着する距離であり、そろそろ敵が姿を現してもおかしくはないからである。
「偵察艦より報告、敵艦隊接近! 数はおよそ7千!」
「7千か… 3千隻は別働隊として動いていると見るべきだろう。敵が25万キロまで接近したら、作戦通り後退する」
エドガーはオペレーターからの報告を受けると、すぐさま撤退命令を下す。
彼の艦隊は3000隻であり、まともに戦っても勝ち目はないため撤退指示は当然であるが、陽動任務のために敵からギリギリの距離で後退して誘引しなければならない。
「閣下。敵艦隊は25万キロの地点で後退をはじめました」
「敵後退の目的は、やはり誘引だと考えるが貴官はどうだ?」
「小官もそう推察します」
敵艦隊の後退の報告を受けたライヒェルトが、参謀に自分の推察を述べると彼も同じ考えであった。
「よし、艦隊の進軍速度を微速まで下げろ」
司令官の指示の下、ライヒェルト艦隊は艦隊の速度を微速まで落とすと、眼前のエドガー艦隊も微速まで下げて、距離を一定に保とうとする。
誘引が目的である以上、距離を開けすぎては敵の追撃意思を削ぐため、距離は一定を保たなくてはならない。
「よし、やはりこちらの速度に合わせてくるな。なら、味方の分艦隊が敵の後方に回り込むまで、もう少しだけ船速をあげて敵艦隊の追撃をする」
ライヒェルト達は、ウムルを出る前に足の早い艦隊を3000隻選出すると、別ルートを進軍させていた。
その目的はその船足を活かして、誘引の為に本隊と一定の距離を保とうと低速で後退するエドガー艦隊を追い越させて、その後方に回り込ませる事で挟み撃ちにする為である。
「敵は我らを罠に嵌めたつもりであろうが、逆に罠に嵌めてやる」
敵がまんまと策に嵌ったと考え、ライヒェルト達は作戦の成功を確信して、笑いを浮かべる。
だが、後退するエドガー艦隊は、敵の遅くなった行軍速度を遅滞行動だと見抜いていた。
「敵はアングレーム司令の予測通り、進軍を低速に落としましたね」
ロイクは敵の行動をいくつか予測して、それに沿って作戦計画をいくつか用意しており、遅滞行動は挟み撃ちと予測していた。
「よし、作戦Bに変更する。念の為に偵察艦を経由して、アングレーム艦隊に計画変更を暗号文で伝えろ」
(まあ、ロイク先輩なら、既に情報を得て変更して動いていると思うが)
参謀にそう命令したエドガーであったが、内心ではロイクが偵察艦から既に敵の動きを察知して、作戦Bに行動を変更していると予想している。
「例の暗号ですか…… 」
エドガーの参謀クレルジュ大佐は、そう言ってげんなりする。
ロイクは陰キャ変態紳士とは言え、ガリアルムでも5本の指に入る司令官である。
エドガーの予想通りロイク艦隊は、配置していた偵察艦で敵の別働艦隊を発見しており、直ぐに艦隊行動を作戦Bに移行させていた。
そこに数隻の偵察艦を経由して、彼の艦隊に光通信でエドガー艦隊が、計画Bに移行した事が伝えられる。
「閣下、エドガー艦隊より、暗号文です。<こちらはツンデレ後輩モノにする。そちらはどうする?>だそうです……」
「そうかエドガーは計画Bに変更したか。流石だな」
こんな暗号電文を読まされ、げんなりした表情のゲンズブールとは対象的に、ロイクは戦術画面を見ながら、腕を組んで真顔でそう答える。
真面目な軍人のゲンズブールやクレルジュ大佐からすれば、このようなふざけた暗号文は受け入れるのに抵抗があるのは仕方がない。
因みに、他の暗号文はというと…
計画Aは敵が全艦隊数で、全速で追いかけてくる時のもので、これは一番楽に時間が稼げるので、一番良い状況である。そのため暗号はロイクの一番好きな<幼馴染モノ>
計画Bは敵艦隊の艦隊数が少なく、遅滞行動で追撃してくる状況で、これは低速で時間を稼いでその内に別部隊による挟み撃ちを狙っていると思われるので危険度は増すが、これも時間は稼げるので悪くはない状況である。そのため2番目に好きな<ツンデレモノ>因みに後輩のところを幼馴染、妹でも可
計画Cは敵が全艦隊数で後退する状況で、この場合敵の伏兵がない可能性が少ないため、
快速を誇るエドガー艦隊なら、追撃してシールドが張れない推進部に攻撃する事が出来るので、敵艦隊の数を減らすことが出来き、見計らって離脱すれば被害を最小限に抑えて敵に損害を与えることが出来る。
それほど悪い状況では無いが、好ましい状況でないため、暗号は彼があまり好きではない<NTRモノ>としている。
計画Dは、敵の艦隊数が全数ではなく更に後退する状況で、この場合敵が自分の有利な戦場若しくは伏兵が待ち受ける所に、逆に誘引しようとしている可能性があるためかなり危険度が増す。
偵察艦に索敵を続けさせながら、注意深く追撃して伏兵が居そうな地形の手前で撤退すれば、別働隊に襲われる前に撤退できるであろうが、そうなるとCよりも与える被害も少なくなるであろう。
それを考慮して、ライヒェルト達も一方的に損害を受けた挙げ句、伏兵をぶつける前に撤退される危険のある作戦より、自分達が追撃して挟み撃ちとする作戦を取ったのであった。
これは最悪な状況なので、計画Dの暗号はロイクの嫌いな<陵辱モノ>である。
「エドガー艦隊に、暗号文でこう送れ。<うはwww おkwww こっちは、ツンデレ同僚モノにするwww>と」
ロイクは腕を組んだまま、自分なりに最高に格好良い表情とポーズで、最低な暗号文を口にして、それを送るように指示を出す。
「はっ」
司令官の命令に返事をしたゲンズブールであったが、内心ではこう思っていた。
(ヨハンセン閣下の<ペンギンがどうのこうの>の暗号文も酷かったが、これは更に酷いな…。まあ、それだけに敵に傍受されても、意味がわからんだろうが…)
こうして、ロイクの敵の裏をかいた最低な暗号文による作戦が始まる。
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