イシュラヴァール放浪記

道化の桃

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第五章 恋情編

飢えたように、貪るように☆

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 ――国王陛下が毎夜呼んでいる女は、どうやら近衛兵のアトゥイーらしい――。
 その噂は瞬く間に後宮中に広まった。そしてどこから漏れたのか(恐らく侍医に幾らか掴ませた者がいたのか)アトゥイーが奴隷だったらしいということも、皆の知るところとなった。アトゥイーに対する憧れと羨望の眼差しは一転、嫉妬と蔑みに取って代わられた。
「……女って怖い……」
「大丈夫ですか?アトゥイー様」
 うんざりと溜息をついたアトゥイーを、シュイユラーナが気遣う。後宮でアトゥイーが気を許せるのは、もはやシュイユラーナだけだった。その他の宦官たちも、危うきに近寄らずとばかりにアトゥイーから距離を保っている。
「シュイユラーナ、あなたは気にならないのか?その、わたしが……」
 奴隷だったことを、と言う前に、シュイユラーナは首を振った。
「アトゥイー様、わたしはできればずっと、アトゥイー様の友人でありたいと思っていますよ」
 アトゥイーは思わずシュイユラーナの首に抱きついた。
「……ありがとう」

 そんな中でも、マルスは変わらずに毎夜のようにアトゥイー――ファーリアを抱いた。
 その事実が、何よりもファーリアの力になった。
 最近では寝所に入るなり、マルスは飢えたようにファーリアの唇を貪る。そして、ファーリアが濡れているのを確認すると、前戯もそこそこに挿入した。
「んあっ……!」
 ファーリアが大きく仰け反る。
「くっ……」
 まだほぐれきっていないそこがきつくて、堪らずにマルスが喘いだ。
「……っは……っ、ファーリア……っ」
 ――溺れている、と思う。シハーブに言われるまでもなく、自覚している。少しでも長く一緒にいたくて、昼は夜が待ち遠しく夜は夜明けが疎ましい。それでも精一杯制御してこれなのだ。本音を言えば、片時も離さずにそばに置きたい。
 マルスはファーリアの細い腰を両手で掴んで、狭い膣の奥まで強引に突き入れる。
「やっ!ああ!」
 強硬な侵入を受けて、ファーリアの内部が痙攣する。マルスは構わずに腰を前後させた。そのあまりの性急さに、ファーリアの両手が敷布シーツを掻いた。
 欲しい。欲しい。お前の全部が。
 マルスは内にたぎる熱情をファーリアにぶつける。
「私を抱け、ファーリア」
 マルスの声が鼓膜を震わせ、ファーリアの内部がまたきゅうっと収縮する。
「抱け」
 ファーリアは言われるままにマルスの背に両腕と両脚を回した。と同時に、マルスが一層奥深くを突き上げる。
「あっ……!」
 隙間なく密着した躰が熱い。肌の外側も内側も埋め尽くしたがって、細胞がふつふつと湧き立っている。
 マルスは尚も腰を打ち付ける。
「んあっ、ああ、……やあ……」
 硬く膨らんだ先端が子宮口を突き上げるたびに、蜜が溢れ出てくる。ファーリアの切羽詰まったような喘ぎ声が、やがて甘やかにとろけていく。
「そう、そうだ。もっと感じろ……私を」
 ――私を、その躰に刻み込め――!
「あんっ……やぁ――ん……」
 ファーリアはマルスにしがみついた。マルスの大きな身体にすっぽりと包まれて、ファーリアは浮遊するような感覚が躰の奥に広がっていくのを感じた。それはあまりに甘美な幸福感。
「私を、味わえ。存分に」
「あ――――っ…………」
 ――どうしてこんなに気持ちいいんだろう……。
 ファーリアはマルスの腕の中でぼんやりと思った。
 愛とはなんだろう、と考えたことがあった。かつて、愛していると言われた時、ファーリアにはそれが理解できなかった。本に書いてあった恋愛も、まるで別世界のことのようだった。
 ――アトゥイー様が陛下をお好きなら、寵を受けることに何も遠慮などなさることはないと、私は思いますよ……。
 シュイユラーナの言葉が蘇る。
(陛下がわたしをどう思っているかなんて、わからない。だけど、わたしは――この腕の中が好きだ――)
 ファーリアはマルスの体温に包まれながら、そっと眼を閉じた。
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