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第十章 王都編
友情★☆
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声を上げることを諦めたはずのファーリアが、それでも思わず小さな悲鳴を上げたのは、老人が膣に入れていない方の手首をファーリアの肛門に押し当てて無理矢理挿入し始めたからである。
「ああ!あ、ああ……っ……」
石畳を這うように逃げるファーリアに、獣に成り果てた老人が絡みつく。ファーリアは壁と壁の角に追い込まれた。老人は器用に脚を使ってファーリアの尻を高く上げさせると、右の手首を膣に入れたまま、空を向いた肛門に左の手首をぐりぐりとねじこんだ。
「いや―――――っ!」
しかし、それがファーリアの肛門をこじ開ける前に、獣の動きが止まった。
「ぐぷっ……」
奇妙な声と共に血を吐いて、ずるりとファーリアの膣から右手首が抜け落ち、一瞬にして躯となった老人がファーリアの上に倒れこんできた。
老人の背には深々と長剣が突き刺さっていた。それは肋骨をすり抜け心臓を貫き、胸骨で止まっていた。
『夜の兎』を出たエディが、なんとなくスラムへと足を向け、ファーリアの声を聞きつけたのは、全くの偶然だった。
暗い路地の向うから聞こえる微かな声がファーリアのものだと、エディはすぐにわかった。
市中警備兵に配属されてから、エディは街の路地をひとつ残らず暗記していた。それは無秩序に入り組んだスラムも例外ではない。
(あそこだ)
エディは声の方向からその場所を正確に予測して、数十秒後にはファーリアを発見していた。
ファーリアが、醜悪な老人に犯されているところを。
「――――!」
エディは怒りが噴き出すのを自覚した。その殺気に、少し手前に立っていた男がゆっくりとエディを振り返った。しかしエディはその時既に剣を抜いて、ファーリアを犯している獣目がけて投げつけていた。
「貴様ら…………!!」
剣は正確に老人の心臓を貫いた。だが、エディの怒りは収まらなかった。
石段に落ちていたファーリアの長剣を拾い上げる。その目はまっすぐに碧眼の男に向けられていた。
碧眼の男もまた、ゆっくりと剣を抜いた。エディが地面を蹴った。
キィン、カシィン、と、剣を斬り結ぶ音が、夜のスラムにこだまする。
ふと、エディは男の動きに既視感を覚えた。
「貴様――あの時の――!?」
そうだ、この男だ。エディは確信した。剣さばきといい、身のこなしといい、碧眼の男のそれには見覚えがあった。昔、『夜の兎』で見ていたのだ。この男とユーリが戦っているところを。遠目だったが、はっきりと覚えている。二人とも相当な手練だった。士官学校を首席で卒業したエディですら、彼らの前では子供同然のように思われた。
――あの頃は。
(今は、違う)
あれから何年も、実戦経験を積んできた。戦場へも出たし、近衛兵の訓練も受けた。
何より二度とあんな後悔はしたくない。今度こそ、今度こそ、大切な女を守る。その決意が、エディに力を与えていた。
「おあああああっ!」
エディの一撃が碧眼の男を貫いた――かに見えた。
「遅い」
碧眼の男は残像を残してエディの背後を取っていた。
「くっ!」
エディはそのまま手首を返し、振り向きざまに薙ぎ払った。
碧眼の男は跳躍してそれを躱し、頭上からエディの肩口に斬り下ろした。
エディは剣で斬撃を受け止めたが、わずかに間に合わなかった。ざっくりと鎖骨に食い込んだ剣を、横にした剣で受け止め、なんとか弾き飛ばしたが、そこまでだった。利き腕の肩をやられては腕が上がらない。
「くそっ……!」
剣を持った右腕をだらりと下げ、左手で肩を押さえたエディを、碧眼の男は更に斬りつけた。
「ぐあっ!」
「身の程知らずの若造が、お愉しみの邪魔しやがって」
碧眼の男は、致命傷には至らない浅い斬撃を何度もエディに与えた。このままじわじわとなぶり殺しにするつもりだった。
一方、ようやく正気を取り戻したファーリアが見たのは、碧眼の男がエディを苛んでいる光景だった。
「エディ!エディ!!」
ファーリアは我を忘れて叫んだ。駆け寄ろうとしたが、膝が崩れて石段に倒れ込んだ。下腹部がずきずきと痛む。エディがファーリアに気付いた。
「だめだ……アトゥイー……声を上げたら、スカイに」
見つかる、とエディが言う前に、ファーリアは叫んでいた。
「誰か!誰かああっ!!」
この際、近くにいるならスカイでも誰でも構わない。エディを死なせてしまうくらいなら。
「誰か――――」
誰か助けて。エディを助けて。
「――ちっ」
碧眼の男が舌打ちをした。騒ぎを聞きつけて、人が集まってきたのだ。
「どけ!」
男は剣を収めると、人混みをかき分けて何処かへ去っていった。
「アトゥイ……ライラ……」
石段に横たわったエディが朦朧として言った。
「ファーリアよ。わたしの名前は、ファーリア」
ファーリアはエディの傷口を押さえながら言った。あとからあとから血が溢れてくる。傷口が多すぎて、両手では足りない。ファーリアは絶望に泣きそうになった。
「ファーリア」
弱々しい声で、エディが言った。
「そう、ファーリア。……エディ、エディ、死なないで……」
「ファー……逃げて……スカイ……隊長が……逃げ……」
エディの声が、徐々にか細くなっていく。エディの視界はぼやけて、もうファーリアの顔もはっきりしなかった。
「いやだ、いやだ、エディ、死なないで、お願い、エディ、エディ、エディ」
ファーリアは必死でエディの名を呼び続けた。
「ああ!あ、ああ……っ……」
石畳を這うように逃げるファーリアに、獣に成り果てた老人が絡みつく。ファーリアは壁と壁の角に追い込まれた。老人は器用に脚を使ってファーリアの尻を高く上げさせると、右の手首を膣に入れたまま、空を向いた肛門に左の手首をぐりぐりとねじこんだ。
「いや―――――っ!」
しかし、それがファーリアの肛門をこじ開ける前に、獣の動きが止まった。
「ぐぷっ……」
奇妙な声と共に血を吐いて、ずるりとファーリアの膣から右手首が抜け落ち、一瞬にして躯となった老人がファーリアの上に倒れこんできた。
老人の背には深々と長剣が突き刺さっていた。それは肋骨をすり抜け心臓を貫き、胸骨で止まっていた。
『夜の兎』を出たエディが、なんとなくスラムへと足を向け、ファーリアの声を聞きつけたのは、全くの偶然だった。
暗い路地の向うから聞こえる微かな声がファーリアのものだと、エディはすぐにわかった。
市中警備兵に配属されてから、エディは街の路地をひとつ残らず暗記していた。それは無秩序に入り組んだスラムも例外ではない。
(あそこだ)
エディは声の方向からその場所を正確に予測して、数十秒後にはファーリアを発見していた。
ファーリアが、醜悪な老人に犯されているところを。
「――――!」
エディは怒りが噴き出すのを自覚した。その殺気に、少し手前に立っていた男がゆっくりとエディを振り返った。しかしエディはその時既に剣を抜いて、ファーリアを犯している獣目がけて投げつけていた。
「貴様ら…………!!」
剣は正確に老人の心臓を貫いた。だが、エディの怒りは収まらなかった。
石段に落ちていたファーリアの長剣を拾い上げる。その目はまっすぐに碧眼の男に向けられていた。
碧眼の男もまた、ゆっくりと剣を抜いた。エディが地面を蹴った。
キィン、カシィン、と、剣を斬り結ぶ音が、夜のスラムにこだまする。
ふと、エディは男の動きに既視感を覚えた。
「貴様――あの時の――!?」
そうだ、この男だ。エディは確信した。剣さばきといい、身のこなしといい、碧眼の男のそれには見覚えがあった。昔、『夜の兎』で見ていたのだ。この男とユーリが戦っているところを。遠目だったが、はっきりと覚えている。二人とも相当な手練だった。士官学校を首席で卒業したエディですら、彼らの前では子供同然のように思われた。
――あの頃は。
(今は、違う)
あれから何年も、実戦経験を積んできた。戦場へも出たし、近衛兵の訓練も受けた。
何より二度とあんな後悔はしたくない。今度こそ、今度こそ、大切な女を守る。その決意が、エディに力を与えていた。
「おあああああっ!」
エディの一撃が碧眼の男を貫いた――かに見えた。
「遅い」
碧眼の男は残像を残してエディの背後を取っていた。
「くっ!」
エディはそのまま手首を返し、振り向きざまに薙ぎ払った。
碧眼の男は跳躍してそれを躱し、頭上からエディの肩口に斬り下ろした。
エディは剣で斬撃を受け止めたが、わずかに間に合わなかった。ざっくりと鎖骨に食い込んだ剣を、横にした剣で受け止め、なんとか弾き飛ばしたが、そこまでだった。利き腕の肩をやられては腕が上がらない。
「くそっ……!」
剣を持った右腕をだらりと下げ、左手で肩を押さえたエディを、碧眼の男は更に斬りつけた。
「ぐあっ!」
「身の程知らずの若造が、お愉しみの邪魔しやがって」
碧眼の男は、致命傷には至らない浅い斬撃を何度もエディに与えた。このままじわじわとなぶり殺しにするつもりだった。
一方、ようやく正気を取り戻したファーリアが見たのは、碧眼の男がエディを苛んでいる光景だった。
「エディ!エディ!!」
ファーリアは我を忘れて叫んだ。駆け寄ろうとしたが、膝が崩れて石段に倒れ込んだ。下腹部がずきずきと痛む。エディがファーリアに気付いた。
「だめだ……アトゥイー……声を上げたら、スカイに」
見つかる、とエディが言う前に、ファーリアは叫んでいた。
「誰か!誰かああっ!!」
この際、近くにいるならスカイでも誰でも構わない。エディを死なせてしまうくらいなら。
「誰か――――」
誰か助けて。エディを助けて。
「――ちっ」
碧眼の男が舌打ちをした。騒ぎを聞きつけて、人が集まってきたのだ。
「どけ!」
男は剣を収めると、人混みをかき分けて何処かへ去っていった。
「アトゥイ……ライラ……」
石段に横たわったエディが朦朧として言った。
「ファーリアよ。わたしの名前は、ファーリア」
ファーリアはエディの傷口を押さえながら言った。あとからあとから血が溢れてくる。傷口が多すぎて、両手では足りない。ファーリアは絶望に泣きそうになった。
「ファーリア」
弱々しい声で、エディが言った。
「そう、ファーリア。……エディ、エディ、死なないで……」
「ファー……逃げて……スカイ……隊長が……逃げ……」
エディの声が、徐々にか細くなっていく。エディの視界はぼやけて、もうファーリアの顔もはっきりしなかった。
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