イシュラヴァール戦記

道化の桃

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第一章 乱世到来

同衾

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 マルスはルビーのドレスの上から乳房を鷲掴みにした。
「ん!あ……っ」
 ルビーは小さく喘いだ。コルセット越しの遠い快感が、もっと欲しい、と欲を掻き立てる。恐怖と快楽に潤んだ瞳でマルスを見上げると、たちまち食らいつくように唇を塞がれた。
「んん……」
 ルビーの目尻に涙が滲んだ。
(――こんなふうに抱かれたかったわけじゃないのに……)
 マルスの手は休みなく乳房を揉み、やがて胸のボタンに指をかけた。乱暴に見せかけても、ルビーを傷つけないよう注意を払っている。ルビーのからだがぴくんと反応し、熱い吐息が漏れた。ぴたりと閉じた花弁の奥がしっとりと濡れていくのが、自分でもわかる。
 強引に舌を絡め取られている間に、マルスは手際よくドレスを脱がせた。全裸にされたルビーを、マルスが寝台まで引っ張っていく。
 種馬らしく、後ろから挿れてやろうか、とマルスは囁いて、ルビーの髪を掴んで押し下げ、寝台に手を突かせた。
「きゃあっ……!」
「立て」
 そして、マルスは突き出させたルビーの双丘を掌で撫でた。
「やあ……っ」
 拒否の言葉とは裏腹に、その声はとびきり甘い。マルスが真っ白な双丘の間に咲いた花弁に触れると、とぷりと蜜が滴り落ちた。
よだれが溢れているぞ。花嫁殿は余程腹が空いているとみえる」
「そんな……っ」
 卑猥な台詞を聞いただけで、ルビーは羞恥のあまり白い内腿をひくひくと震わせた。口では勇ましいことを並べるくせに、マルスとの行為には初心うぶな娘のような反応をする。そしてそれは何年経っても変わることはなかった。マルス以外の男を知らないルビーが、マルスには愛おしく、同時に小憎らしくもあった。
 ――何も知らぬくせに。いかに己が幸福に生まれ育ってきたか、その当たり前のことを当たり前に享受し、疑問に思わない娘。幸福に包まれて生まれた幸運を、当然の果実として味わう娘。刑場を見下ろす塔で臨月を迎えた女たちのことも、砂漠で産気づく恐怖も知らず、子がほしいなどと軽々と言ってのける娘。
「そんなに欲しいなら、くれてやる」
 ルビーを前屈みに立たせたまま、マルスは紅くひくつく粘膜の奥に指を挿し入れた。
「はぁんっ……」
 きゅうっと締め付けてくる内壁をこじ開けるように、二本、三本と指を増やす。
「ん!ああっ……っん!」
 奥の一点を数回攻めると、ルビーは容易く達してしまった。じゅくじゅくと溢れ出てくる蜜を更に掻き回す。
「あああああ!あああ、ああーーーっ!やああ!もう、ああああ!」
 ルビーは決壊したように啼き、痙攣しながら何度も達した。
 寝台に沈み込みそうになるルビーの髪を、マルスが掴んで引き上げた。ルビーの顔は涙と涎で濡れ、恍惚としている。
「まだだ。ちゃんと立て、牝馬」
 マルスは長衣の間から怒張した陰茎を出すと、熟れきった孔に突き挿れた。
「――――あ!」
 マルスの長い指でも到底届かない最奥を、熱いくさび穿うがつ。
「―――――っ!――――――っ!!」
 背後から激しく腰を叩きつけられ、何度も奥深くをえぐられて、ルビーは言葉にならない叫びを上げ続けた。
「――ああ、マルス、マルス、お願い、わたしの、中……に……っ」
 ルビーがようやくそれだけ言葉にしたのとほぼ同時に、ひときわ深い場所でマルスの先端がどくんと脈打った。
「……マルス……っ!」
「――――ア……ッ……」
 迸る瞬間、ファーリア、と呼びそうになって、マルスは唇を噛んだ。
「…………っんん!」
 低く呻いて、マルスはルビーの中に熱い精を放った。そうしてようやく、ルビーを開放した。ルビーは寝台に倒れ込んだ。
 マルスは寝台に乗ると、ぐったりとしたルビーを見下ろした。豊かな胸は弾力を感じさせ、引き締まった腹から張りのある腰へのラインが艶めかしい。
 時折ひくひくと余韻に打ち震えている白い肢体に触れると、両眼を閉じたまま「ぁあん……」と小さく喘いで身をくねらせる。マルスは長い指で奏でるように愛撫を始めた。肩甲骨の間に唇を這わせると、ルビーは背中を反らして反応した。突き出された乳房を包み込み、先端を摘み上げる。
 眠りへと落ちそうになる水際から、強引に引き上げられて、ルビーはもう何も考えられなかった。されるがままに身体中を弄られ、休みなく与えられる刺激に悶えて敷布シーツの上を這い回るしかできない。
 マルスはとろけきったルビーの両膝に手をかけ、大きく割った。
「ん……やぁ……」
 ルビーは力なく言ったが、弛緩した身体は抵抗することなく股を開いた。
 再び屹立したそれを入り口に充てがうと、そこは吸い付くようにマルスを呑み込んだ。
「ん、はっ……あ!」
 ルビーが腰を浮かせると、じゅぷりと淫猥な音を漏らしてマルスは奥に達した。先程注ぎ込んだ白濁が、繋がった肉と肉の間から溢れ出る。マルスは構わず腰を振り、最奥を何度も攻め立てた。仰向けの蛙のような格好で激しく内臓を突き上げられて、ルビーは頭が真っ白になった。
 長い夜が明けるまで、マルスはルビーを赦さなかった。
 絶頂を何度も迎えて失神したルビーが、浅いまどろみから覚めると、カーテンの隙間から朝日が漏れていた。
 ルビーは、水を飲もうとベッドから降りた。喘ぎ疲れて、口中がからからだった。が、床に立った途端、かくんと腰がくだけてその場にしゃがみこんでしまった。想像以上のダメージに呆然としつつも、ベッドの縁に手をかけて立ち上がる。と、今度は生暖かいものが股の間からつーっと流れ落ちて、脚を濡らした。最初、尿でも漏らしたのかと青ざめたルビーは、その液体に触れて思わず羞恥の声を上げた。
「やだ……っ……!」
 よろめいたはずみで、生臭く粘ついた白濁が更にどぷりと溢れ出た。と同時に、子宮が鈍く疼いた。
「どうした」
 ひと晩中恋人を苛んだとは到底思えない、朝の泉のような清涼な声がして、ルビーは軽々と寝台の上に引き上げられた。
「水……を……」
 ルビーがかすれた声で言ったので、マルスは水差しから水を注いでルビーに手渡した。ルビーがそれを一気に飲み干したのを確認して、マルスはルビーの冷えた唇を塞いだ。そのまま舌を絡め、寝台に押し倒す。
「あ、待っ……もう」
 もう身体が限界だ、と訴えかけたルビーの言葉は、濃厚な口づけに飲み込まれた。
「……んんっ……」
 もはや愛液は涸れ、代わりに白濁で濡れたその場所を、マルスは硬く張り詰めた陰茎でこじ開けた。
「ああ……もう……もう、だめ……ゆるし……っ……」
 ルビーが泣きながら懇願するのも聞かず、マルスはゆっくりと腰を前後させる。
「欲しがったのはそなたであろう?とくと味わえ」
 一晩かけてやわらかくほぐされきって、神経がむき出しになったかのように敏感になっている内壁の、一番感じる場所を、マルスは正確にえぐった。
「――ひゃああ!やめ、あああぐ!っあああああ!!」
 ルビーは狂ったように啼いて、自ら腰を振り出した。
「もうだめえええああああ!!」
 言葉とは逆に、身体が勝手にマルスを求めて乱れ狂う。
「そうだ……もっと欲しがるがいい、いくらでもくれてやる」
「ああああ!欲しいの!欲しいのおお!欲し……ああ!逝く、逝くぅう……っ!」
 ぎゅうぎゅうと締め上げられた器官が大きく脈打って、熱い奔流が子宮に注がれた。
 ルビーはそのまま、深い眠りへと落ちていった。



「いくらでもくれてやる……だが」
 マルスはルビーの濃い金髪をひと房指に絡めて、呟いた。
「……レーは、カナンのものだ」
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