前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

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前世が武神と呼ばれた男、職業『無職』が与えられる

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 いよいよ俺に職業とやらが与えられる番だ。

 ハッカは『雷帝』、ソリスは『錬金姫』とかいう大層な名前の職業が与えられた。

 そして、その二人の後になれば、周りが期待を寄せて俺を見ているのかもしれない。

 俺は祭壇近くにいる司祭の前に立った。

「え……ひざまずかないの?」

 司祭は顔を引きらせていた。

「跪かないと『寵愛の儀』は始まらないのですか?」

「そういうわけでもないが」

「じゃあ、いいじゃないですか」

 と言って、俺は突っ立ったままだった。

 司祭は「じゃあじゃないよ……」と尻すぼみに喋っていた。

 すると、背後にいるハッカが「座れ!」と脳天チョップしてきた。

「全然痛くないぞハッカ」

「そこは普通、いたって言うところじゃんかよ」

 とりあえず、ここはハッカに免じて司祭の前で跪かないと。

 司祭はぶつぶつと喋り始める。

「偉大なる癒しの神よ、この者に恩恵を与えたまえ――」

 癒しの神は聞いたことないな。前世で倒した神は邪神、破壊神、暴虐神、破滅神などなど物騒な名前が付く神ばかりだ。中には増え過ぎた人間を消そうとした創造神や機械の神もいたな。なつかしい~、いや皆強くて、いい経験になったな~。

 感傷に浸っていると俺の体は光の柱に包まれる。

 そして、柱の壁に文字が出てくる。
 
 職業:『無職』
 スキル:無し

 こんな風に何も与えられない人間も出てくるのか。

 顔を見上げると司祭は俺を軽蔑したような目で見ていた。

 まるでゴミを見るような目だ。職業とスキル一辺倒となった世界では『無職』という職業を与えられた人間は軽蔑されるらしい。神から無職と言われただけで今は農業、畜業、林業等、様々な仕事をしているので何も問題ないとは思うが。

「こんなことがあり得るのか……! む……『無職』……神に愛されない存在!」
 
 司祭は俺を指差して後退していた。先程までは軽蔑した視線を送っていたが今は畏怖しているようだ。

「『無職』だってよあいつ」

「なんにもできないじゃん」

「あいつ、お先真っ暗だな」

「どういう人生歩んだら、神に見放されるんだよ……クックッ……」

 『寵愛の儀』を見守っている同年代達は嘲笑していた。

 俺が立ち上がって司祭の下から離れるとソリスとハッカが寄ってくる。

「もしかしたら神様はヒュー君に試練を与えて乗り越えてもらいたいのかもしれませんわね。きっといつか神様は認めてくれますわよ」

「ヒューゴ、オマエが何度も村に近づく魔物を倒してきたのは知っている。そんな凄いオマエがどうして無職なんだ」
 
 ソリスは俺を励まし、ハッカは悲痛な顔をしていた。

「まぁまぁ、司祭の反応からして『無職』っていう職業は史上初なんだ。逆にレアでラッキー感あるよ!」

「えぇ……同情したのに」

「ふふふっ、それでこそヒュー君だね~」

 ヒューゴは呆れ顔を見せて、ソリスはクスクスと笑っていた。

 それから用を済ませて教会を出ようとすると、どこからか話を聞きつけていたのか、見知らぬ騎士や貴族が幼馴染二人に仕官してこないかという話を持ち掛けていた。他にも配達、物探しから魔物討伐の依頼を請け負っている冒険者ギルドからギルド員になってくれという話を持ち掛けられていた。

 なるほど、教会前は優秀な職業を得た者をスカウトする場でもあるのか。

 無職の私には誰も来ることがないと思ったが、教会から出てきた男女二人が俺に近づいてきた。教会の中にいた若者だ。女性の方は俺を見てニヤニヤと見て侮蔑したような視線を送り、男性の方は俺を気にも留めてない様子だ。
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