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前世で武神と呼ばれた男、決闘相手と仲良くなる
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闘技場内のアリーナに続く廊下にてヒルダが壁を背にして震えて座っていた。
何故なら、俺が放った【雪穿雲掌】の氷に彼女は一時包まれていたからだ。俺は思わず慌てて拳を繰り出して氷を砕いて彼女を救出した。危うく、凍死させてしまうところだった。
「寒いですの」
先程まで威勢の良かったヒルダは両膝を抱えていた。きっと寒いのだろう。その横には弟のへロルフがおり、俺をねめつけていた。
「何故、お前はスキルを使える。しかも氷魔法と光魔法の」
「色々、修行したんだよ。正確に言うとまず最初に『体内エネルギー』という体中に流れてるエネルギーを感じとる修行をするんだよ。それで色々やってたら今の俺のように色んな技を使えるようになるんだ」
「出まかせを言うな」
「教えてあげてるのになー」
へロルフは聞く耳を持たなかった。せっかく、俺の力について教えようと思ったのに。
「ヒルダさんという方、大丈夫かしら、寒そうだわ」
俺の両脇にはソリスとハッカがおり、ソリスが心配そうにヒルダを見ていた。
「確かに寒そうだ」
俺はソリスに応じながら、ヒルダに近づいた。
「おい、ヒューゴ、何をするつもりだ」
「俺の力で体を温めるんだよ」
「はい?」
ハッカに応じると、彼は俺の言葉が理解できないのか怪訝そうにしていた。
「俺の手で彼女の体を温めるんだよ」
「台詞だけ聞くと変質者っぽいぞ」
「ハッカの思考回路が飛躍してるだけだって」
「くっ……今回は何にも言い返せない……!」
悔し気なハッカを横目に俺はしゃがんでヒルダと目線を合わせた。
「ふんっ、敗者を笑いにきたんですの……」
彼女はいじけていた。
「そんなんじゃないって、ちょっと首に手を当てるぞ」
「えっ」
俺はヒルダの首元に右手のひらに当てた。彼女は戸惑っていたがすぐに安堵したような表情を見せてくれた。
「おい……姉上に何をする……!」
「待ってへロルフ!」
「姉上……?」
へロルフが俺の首元に掴みかかったが、ヒルダの鶴の一声ですぐに手を離した。
そして、ヒルダは恐る恐る、俺に話しかけていた。
「凄いわ……体が温かくなってきてますの……これも貴方の力?」
「その通り」
彼女は俺を感心したように見つめていた。
俺は放出した『体内エネルギー』を人の体温程度になるように調整し、ヒルダの体の中にエネルギーを送り込んでいた。きっと彼女の体は瞬く間に温かくなっていることだろう。
「よし、もう大丈夫だな」
「…………」
俺が立ち上がるとヒルダはぼうっとした顔で見てきていた。
「どうした? 立てないのか?」
「いいえ! 敵に塩を送られる自分を恥じているところですの!」
彼女はそっぽを向きながら立ち上がった。これだけ元気なら大丈夫だろう。
「お前、どんな手品を使って姉上を負かしたかしらないが、いい気に――」
「止めなさいへロルフ、私の負けですの……あと、氷の中から助けて下さり。体に気を遣ってくれてありとうございます」
ヒルダは俺に頭を下げていた。そんな姿の姉を見たへロルフは何も言えなくなっていた。
「いいよいいよ、俺が放った氷だしな。お詫びに俺の氷が闘技場にまだ散らばってるだろうし持って帰っていいよ」
「いや……それはいいですの」
「そうか? 口の中に含んで氷をボリボリ食うの楽しいのに」
「子供なんですの!? ……ふふっ」
ヒルダは俺に突っ込んだあと、頬を緩ませていた。
「貴方、名前はなんて言うんですの?」
「俺はヒューゴ・ブラックウッドだ」
「ブラックウッド?」
「ああ、いわゆる没落貴族ってやつだよ。俺の村ってそんな感じの人多いみたいな感じ」
「へぇ……」
彼女は不思議そうに唸ったあと言葉を続ける。
「負けたままでは終わりません、次はもっと強くなってみせます」
「お、その意気だ! がんばがんば!」
「……なんか腹立ちますが……今日のところはこれで帰りますの、また機会があれば会いましょう」
「待つんだ姉上。この男の処罰はどうする、俺達をドロップキックしたんだ」
「行きますわよへロルフ」
ヒルダは弟の言葉を意に介さず、身を翻した。へロルフは俺をまた睨みつけるが彼は姉の後を追った。
すると、ハッカが溜息をつく。
「ふぅ……! これでなんとか貴族に難癖付けられて牢獄行かずに済んだな!」
「たまには牢獄生活もいいと思うけどな」
「いい訳ないだろ、経験あるの?」
「あるわけないない、でも経験したことないからこそしてみたいと思わないか? 普通は水の上を歩けない、でも歩けるなら歩いてみたいと思うだろ? 俺は思ったさ」
「思ったことねぇよ」
そんなこんなで俺達は泊まる宿屋に向かった。
何故なら、俺が放った【雪穿雲掌】の氷に彼女は一時包まれていたからだ。俺は思わず慌てて拳を繰り出して氷を砕いて彼女を救出した。危うく、凍死させてしまうところだった。
「寒いですの」
先程まで威勢の良かったヒルダは両膝を抱えていた。きっと寒いのだろう。その横には弟のへロルフがおり、俺をねめつけていた。
「何故、お前はスキルを使える。しかも氷魔法と光魔法の」
「色々、修行したんだよ。正確に言うとまず最初に『体内エネルギー』という体中に流れてるエネルギーを感じとる修行をするんだよ。それで色々やってたら今の俺のように色んな技を使えるようになるんだ」
「出まかせを言うな」
「教えてあげてるのになー」
へロルフは聞く耳を持たなかった。せっかく、俺の力について教えようと思ったのに。
「ヒルダさんという方、大丈夫かしら、寒そうだわ」
俺の両脇にはソリスとハッカがおり、ソリスが心配そうにヒルダを見ていた。
「確かに寒そうだ」
俺はソリスに応じながら、ヒルダに近づいた。
「おい、ヒューゴ、何をするつもりだ」
「俺の力で体を温めるんだよ」
「はい?」
ハッカに応じると、彼は俺の言葉が理解できないのか怪訝そうにしていた。
「俺の手で彼女の体を温めるんだよ」
「台詞だけ聞くと変質者っぽいぞ」
「ハッカの思考回路が飛躍してるだけだって」
「くっ……今回は何にも言い返せない……!」
悔し気なハッカを横目に俺はしゃがんでヒルダと目線を合わせた。
「ふんっ、敗者を笑いにきたんですの……」
彼女はいじけていた。
「そんなんじゃないって、ちょっと首に手を当てるぞ」
「えっ」
俺はヒルダの首元に右手のひらに当てた。彼女は戸惑っていたがすぐに安堵したような表情を見せてくれた。
「おい……姉上に何をする……!」
「待ってへロルフ!」
「姉上……?」
へロルフが俺の首元に掴みかかったが、ヒルダの鶴の一声ですぐに手を離した。
そして、ヒルダは恐る恐る、俺に話しかけていた。
「凄いわ……体が温かくなってきてますの……これも貴方の力?」
「その通り」
彼女は俺を感心したように見つめていた。
俺は放出した『体内エネルギー』を人の体温程度になるように調整し、ヒルダの体の中にエネルギーを送り込んでいた。きっと彼女の体は瞬く間に温かくなっていることだろう。
「よし、もう大丈夫だな」
「…………」
俺が立ち上がるとヒルダはぼうっとした顔で見てきていた。
「どうした? 立てないのか?」
「いいえ! 敵に塩を送られる自分を恥じているところですの!」
彼女はそっぽを向きながら立ち上がった。これだけ元気なら大丈夫だろう。
「お前、どんな手品を使って姉上を負かしたかしらないが、いい気に――」
「止めなさいへロルフ、私の負けですの……あと、氷の中から助けて下さり。体に気を遣ってくれてありとうございます」
ヒルダは俺に頭を下げていた。そんな姿の姉を見たへロルフは何も言えなくなっていた。
「いいよいいよ、俺が放った氷だしな。お詫びに俺の氷が闘技場にまだ散らばってるだろうし持って帰っていいよ」
「いや……それはいいですの」
「そうか? 口の中に含んで氷をボリボリ食うの楽しいのに」
「子供なんですの!? ……ふふっ」
ヒルダは俺に突っ込んだあと、頬を緩ませていた。
「貴方、名前はなんて言うんですの?」
「俺はヒューゴ・ブラックウッドだ」
「ブラックウッド?」
「ああ、いわゆる没落貴族ってやつだよ。俺の村ってそんな感じの人多いみたいな感じ」
「へぇ……」
彼女は不思議そうに唸ったあと言葉を続ける。
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「お、その意気だ! がんばがんば!」
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「待つんだ姉上。この男の処罰はどうする、俺達をドロップキックしたんだ」
「行きますわよへロルフ」
ヒルダは弟の言葉を意に介さず、身を翻した。へロルフは俺をまた睨みつけるが彼は姉の後を追った。
すると、ハッカが溜息をつく。
「ふぅ……! これでなんとか貴族に難癖付けられて牢獄行かずに済んだな!」
「たまには牢獄生活もいいと思うけどな」
「いい訳ないだろ、経験あるの?」
「あるわけないない、でも経験したことないからこそしてみたいと思わないか? 普通は水の上を歩けない、でも歩けるなら歩いてみたいと思うだろ? 俺は思ったさ」
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