前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

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前世で武神と呼ばれた男、辺境伯に頼みごとをされる

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 次はエドゥアルドの用件を聞く番だ。

「ソガの村で冒険者ギルドを建てて活動しようとしているらしいが、どうだ? 私に仕えてみないか? お前の実力に見合った給料も出そう」

「嫌です!」

「お、おい!」

 俺がハッキリ誘いを断るとハッカは慌てていた。

「言い方ってものがあるじゃんかよ」

「ついついね」

「ついついねじゃないが……」

 ハッカは目を薄めながら尻すぼみに喋っていた。

「理由を聞かせてもらえるかね? もしかして村に愛着があるのか?」

「いや特にはないです」

「ないのかよ」「ないんだ……」

 ハッカとソリスはぼそっと突っ込んでいた。

「ただ、俺が生まれたソガの村に恩を返したいんですよ。村には親も友人もいる。将来、村を出るにしても皆に何かを残してから旅立とうと思います。俺は腕っ節しか取り柄がないので冒険者ギルドを村に残したいです」

「ヒューゴ!」「ヒュー君!」

 今度は歓喜したような声をだすハッカとソリス。

「そうか……無理強いはしない。ちなみにヒューゴ君が授かった職業はなにかね?」

「『無職』です」

「む……無職だと? 噂には聞いてたが、本当に授かった人物がいるとはな。しかし『無職』はスキルを持ってないはず。どうやって、魔物を倒したのだ」

「俺には皆とは違う、独自の力を使えるんですよ」

 そう言って、俺は片手を上げる。

「あの剣でいいや」

 辺りを見渡し、壁に飾ってある剣を見る。そして、空気中に漂う『自然エネルギー』を操作する。目には見えないが俺は『自然エネルギー』を細長い蔓のような形にし、

「よっと!」

 その蔓で剣をとり右手に納まるように投げる。

「おお、剣が独りでに動いて手に納まった!」

 エドゥアルドは物珍しそうに俺を見ていた。

「このように、俺は色んなことができます。これは皆の知らない力の概念を行使しているんです」

「それで先の魔物を倒したということか!」

 領主は興奮気味だった。

「確か、『体内エネルギー』と『自然エネルギー』ってやつだっけ?」

「そそ」

 俺はハッカの疑問に応えた。

「いまだにその力の事はよく分かってないけどな」

「力の使い方なら教えてあげるよ」

「その前にオレはオレの職業のスキルを使いこなせるようにしたい」

「そういえば、二人の職業はなにかね?」

 エドゥアルドはハッカとソリスに向かって順に首を振った。

「オレは『雷帝』です」

「なんと……!」

「私は『錬金姫』です」

「おお……!」

 エドゥアルドは驚きっぱなしだった。

「素晴しいではないか。このラゴール領に希少な職業を持つ人間はいくらいても足りない。是非、この地域でその力を存分に振るってくれ!」

「は、はい」

 ハッカは領主に気圧されていた。

 多分、エドゥアルドはこの地域にいてくれとやんわりと釘を刺しているに違ない。

「では別の頼みごとをしよう。もちろん報酬は出す。それに冒険者ギルドの本部に口添えをしてすぐにギルドが設立できるように手配しよう。許可証には私のサインだけではなく、ギルドメンバー員五人のサイン、そして建物の図、設立理由、今年度の目標等を書いたうえで設立の許可が下りる」

 なるほど。頼みごとを聞けば、手続きの手間を領主が省いてくれるらしい。

「それにルゴ家の依頼まで設立の許可が下りるとは限らない」

 俺は逡巡し、エドゥアルドに応じる。

「それもそうですね。頼み事が何かは知らないけど、引き受けましょう!」

「そこは聞けよ」

 ハッカに突っ込まれてしまった。

「その前に聞きたいことがあるがヒューゴ君は素手での戦い方を主体としているのかね?」

「武器はなんでも使えますよ。最初は剣で戦ったので……剣が一番得意かと」

 俺は前世でまだ力もなくゴブリンを必死に倒していた時代を思い出した。最初の得物は剣だった。

「ほほう、なんでもとは心強い。それでは私の息子と娘を強くしてくれないか? 二人に修行をつけてくれと言っている。依頼の期間はルゴ家の依頼が始まるまででいい、それまでここに滞在したまえ」

「分かりました!」

「え、あ、いや、今すぐ返事を出せとは言ってないが」

 俺が速攻で頼みごとを引き受けると領主は困惑していた。
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