前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

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前世で武神と呼ばれた男、魔物がいる洞窟へと向かう①

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 ルゴ家の当主であるフェデリーゴが後方へと下がると、彼と入れ替わるように五人が現れた。

 ヒルダとへロルフ、そして全身に甲冑を纏った騎士三人だ。

「あら、何故、貴方達がラゴール家の者達と一緒にいるんですの?」

 俺の方に近づいてきたヒルダは小首を傾げ、シェナとシアドを視界に入れる。

「シェナとシアドには戦い方を教えてたんだ」

「へぇ……ただの村人に教えを乞うなんて卑しいわね」

 ヒルダは嘲笑うようにシェナの方に向かって喋っていた。

「文句あるんです?」

 シェナはムッとした表情を見せたあとに言葉を続ける。

「それにヒューゴ様はヒルダさんの想像以上にお強い方ですから」

「知ってますわ」

「え?」

「実際に刃を交えたのですから、彼の強さは実感していますわ。ただ、いくら強いとはいえ、村人でしかない彼に教えを乞うなんて……ラゴール家は財政不足でまともな講師も呼べないのかしら」

「何が言いたいのです? それにヒューゴ様はとっても上手に私達に訓練をつけてくれたのです。今の私、ヒルダさんより強いかもしれませんよ」

 珍しくシェナは目を吊り上げて、挑発的な態度を見せていた。

「ふーん……じゃ、私と決闘する?」

「いいでしょう」

 ヒルダとシェナの視線の間には火花が散ったかと思えば、ヒルダは俺の方を向く。

「え、何? お金欲しいの?」

「い、いらないですわよ! 平民に金銭を求める理由なんかありませんわ!」

 ヒルダは困惑しつつ、俺の右腕をガシッと掴む。

「シェナ・ラゴール。貴方と決闘するのは構いませんが、私もこの人に訓練を付けてもらわないと余りにも不平等ですわ」

「……は? ヒルダさん、言ってること滅茶苦茶ですけれども! さっきただの村人に教えを乞うなんて卑しいわねとか言ってたのですけど!」

 今度はシェナが困惑しつつ、俺の左腕を掴んだ。

「へロルフ君、止めてくださいよ」

「ああなった姉上は止めれん。お前が自分の妹を止めた方が早い気がするが……」

 シアドとへロルフはうんざりした顔をしていた。

「ハッカ君」

「なんだソリス」

 俺がヒルダとシェナに腕を引っ張られている間、幼馴染らも会話をしていた。

「シアドさんとシェナさんって双子なんだよね」

「おう、そうだな」

「じゃあへロルフさんとヒルダさんも双子? 『寵愛の儀』を一緒に受けてたみたいだし同い年だよね~」

「あ~そうかもな」

 あ~俺もその辺、気になってたぞ。

「双子ではない、俺が早産で同じ歳なだけだ。姉上とは九ヶ月しか離れてない」

「なるほど」「そうなんですね~」

 へロルフが答えを教えてくれると、ハッカとソリスは納得していた。

 ついでに俺も納得していた。

 にしてもこの引っ張り合いはいつになったら終わるんだろうか。

「ヒュー君、楽しそう~」

「そう見える?」

 ソリスがニコニコしながら近づいてきていた。

「私も混ざろうっと!」

 あろうことかソリスは俺の右足を持って引っ張ったのでハッカは口を開く。

「いや、何してんだよ!」

「ソリスさん!?」

「な、なんなのよ貴方」

 シェナとヒルダもソリスの不思議な行動に驚いていた。

「はははは!」

「ふっ、愉快な奴らだ」

 シアドは声を上げて笑い、へロルフは鼻で笑う。

 これから魔物退治だというのに、皆、大丈夫なんだろうか。さすがの俺も戦いのときは真剣になる。この先が不安だ。
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