前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

文字の大きさ
35 / 41

前世で武神と呼ばれた男、オーガ達と遭遇する③

しおりを挟む
 今度は俺のパーティがオーガと戦う番だが、俺は参加しない。

 皆の修行の成果を見せてもらうとするか。

「貴方達じゃ無理よ!」

 ブランカはオーガと対峙するハッカ達を制止させようとした。

「俺様達は色んな魔物と戦ってきたが、このオーガは強すぎる。新米冒険者達が戦っていい相手じゃねぇ!」

 ファウスもハッカ達に戦うことを止めろるように仕向けていたが、

「大丈夫っすよ! 俺達の後ろにはこいつがいるんで」

 ハッカは後ろを振り返らず、親指を立てて俺を指す。ハッカは自分らが追い詰められても俺がいるから安心していると言いたいのだろう。

 ブランカとファウスのパーティは不思議そうな顔で俺を見ていた。一方、ヒルダとへロルフは口を噤んで後方に下がっていた。

「ハッカ君いくよ~」

「おう! 前は俺に任せろ!」

 ソリスとハッカはオーガ討伐に意気込んでいた。

「シェナ、準備はいいかな?」

「もちろんです!」

 シアドとシェナも気合たっぷりだ。

「「ウガァァァアアアアアア!」」

 血気盛んな四名を前にオーガは雄叫びを上げていた。四人の態度に神経を逆撫でされたかもしれない。

 俺から見て右側にいるオーガにソリスとハッカ、左側にいるオーガにシアドとシェナが立ち向かった。

 俺は腕を組んで四人の戦いを守る。短い間とはいえ、四人共俺が直々に鍛え上げた。そんな四人を俺は川辺で拾った綺麗な石を眺めるような、そんな眼差しで見守ることにした。

「「「『硬化』! 『闘気』!」」」

 四人は早速、俺が教えた技を行使した。『硬化』――体内エネルギーによって筋骨及び皮膚を頑丈に強化する技だ。そして、筋骨が強化されるということはそれに伴って身体能力が上がる。『闘気』――体内エネルギーによって神経系を強化し、さらに身体能力を向上させている。

「速い……!」

 へロルフは目を見開いて素早く駆け出す四人を見ていた。

 ソリスは走りながら口を開く。

「『錬金術・鎖陣チェーンエリア』」

 彼女がスキルを発動させると、左右から一つずつ鎖が飛び出して、それぞれオーガの両足に絡みつく。

「いくぞ! 『雷砲サンダーポンド』!」

 跳躍したハッカは身長四メートル程あるオーガの頭辺りへと到達する。そして、雷を纏った右拳を頭上に上げて、オーガの頭部に振り下ろす。

「グゥ……!」

 脳が揺れたオーガは膝をつく。俺は彼らに体内エネルギーの使い方、魔力量の増やし方、戦いにおける欠点だけではなく戦い方の技術についても教えた。そして、それをハッカが実践してくれた。再生能力を持っていたり、皮膚が硬い魔物に対しては頭部にダメージを与えて脳を揺らすことで意識を朦朧させるのも一つの手だと教えた。

「はぁぁぁぁ! 『雷火スパーク』!」

 さらにハッカは両手をオーガの胸部に当ててスキルは発動させる。オーガの全身に雷が走り、辺りが一瞬眩く光る。黒焦げになったオーガはバタリと倒れるが、肉体が再生し始めていた。

「『錬金調合・薬毒の瓶』」

 するとハッカの背後にいたソリスは手のひらサイズの瓶を生成しており、中には毒々しい液体が入っていた。錬金術のスキルによって瓶を作り出し、調合スキルによって毒の液体を作ったわけだ。職業『錬金姫』の本領発揮といったところだ。

「えいっ!」

「うわっ! あぶっ!」

 ソリスは瓶をオーガに向かって投げるが、その直線状にハッカがいたので彼は慌てて横に飛び退いた。それにソリスも『硬化』や『闘気』によって身体能力が底上げされているので中々のスピードで瓶がオーガの方へと飛んでいった。一歩間違えれば、ハッカが毒薬を浴びることになるところだった。

「こ、殺す気か!」

「でも当たらなかったからセーフかな」

「そういう問題じゃねえ!」

「グアァァァァアアアアアア」

 二人が話している間にオーガは絶叫していた。毒塗れになったオーガは先ほど浴びた『雷光スパーク』で出来た傷も痛むのだろう。魔物は苦しみ悶えていた。後は追撃を加えればなんとかなるはずだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...