前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

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前世で武神と呼ばれた男、初依頼を達成する②

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 エルミーに回復してもらった俺は前に歩を進める。

「どうしたんだ?」

 アルベルは不思議そうな顔で俺に声をかける。

「オーガがいた場所の奥から人の気配がする……」

 俺は前方を見据えながら口を開く。

「もしかしたら、その者が大量のオーガを呼び出した人物なのでは?」

 刀が壊れて落ち込んでいたシノギが気を取り直して謎の人物とオーガに繋がりがあることを指摘した。

「ありえるわね……あの統率された動きからして指揮官はいるとは思ったわ……」

 エルミーの予想を聞きながら俺は自然エネルギーを右手のひらに集める。

 俺は思わず顔をしかめた。自然エネルギーを集めようとすると体が痛む。

 これ以上、体を酷使できない。このエネルギー一発でその謎の人物を倒す。

「不思議な力だな……魔力由来でもない……」

 アルベルは熟練冒険者だけあって観察眼は確からしい。

「自然にあるエネルギーを集めてるんだ……さて」

 俺はエネルギーを前方に向かって上手投げした。

 エネルギーは前方へと突き進み、視界から見えなくなる程、遠い婆所へと行く。

「そこだ!」

 俺は右腕を横に振る。それに従ってエネルギーは右方向に動く。

 すると――

「んぎゃあああああああああああ!」

 ーー男性の雄叫びが聞こえた。殺してはないがその場からは動けないほどの重症を負ったはずだ。

 アルベル、エルミー、シノギは雄叫びを聞いて互いに顔を見合わせる。

「よし捕らえにいく……!」

 アルベルが前に駆け出そうとした瞬間、彼が俺の方を向いて目を見開いていた。

「…………」

 何故なら、俺は力尽きてその場で倒れてしまったからだ。三人は心配そうな顔で駆け寄ってきた。

 前世のようにやっぱり上手くは行かないか。まだまだ、修練が必要だな。

 そう思いながら俺の意識はどんどん遠くなっていった。

 ――――次に目を覚ましたときは豪華絢爛な寝室にいた。

「「「あっ!」」」

 上体を起こすと右耳から左耳から突き抜けるような大きな声がした。

「皆いるな」

 部屋の中にはソリス、ハッカ、シェナ、シアドがいた。

「おい、心配したぞ、珍しく倒れたって聞いたからな」

 ハッカはホッとした表情を見せていた。

「思った以上に今の体が弱すぎてな、無理したら倒れちまったみたいだ……てかここどこ?」

 俺が疑問を皆にぶつけるとシェナが答えてくれた。

「ルゴ家の寝室です」

「へぇ……意外とあの二人優しいな」

 俺はヒルダとへロルフの姿を思い浮かべた。

「ヒューゴ君は功労者だからね。この町を、いやこの地方を救った人物だよ」

「へ?」

 俺はシアドに対して首を傾げる。どういうことだ。要件を得ないんだが。

「ヒュー君が倒した人間いるでしょ……アルベルさん達は謎のエネルギーをぶつけてその人を気絶させたって言ってたけど」

 ソリスが言っているのは俺が倒れる前の話だ。

「ああ、俺がぶっ倒れる前に自然エネルギーを放ったな、遠くにいる人間に向かって」

「その人が王国に仕える元国家魔術師だったんです~、魔物を操る『魔物使い』のスキルを用いて国家転覆を図ったらしんですが失敗して、二〇年間潜伏してたみたいな~?」

 なんで疑問形なんだろうか。まあ、とにかくかなりの危険人物だったらしいな。

 続いてハッカが喋る。

「その元国家魔術師がこの地方をオーガを使って支配しようとしてたんだ。でもそれを阻止したヒューゴと砂漠の英雄二人、そんで剣聖に国から表彰を与えられるらしいぞ」

「それって王都に行かないと駄目な感じ?」

「そりゃそうだけど、嫌なのか?」

「いや、どのルートをランニングしながら行こうかなと考えてたんだ。王都にいくついでに魔物を倒しながら走るルートを考えないとな」

「ああ、うん、もう突っ込まないからな」

 ハッカは腕を組んで悩んでいる俺に呆れているようだった。

「よし!」

 俺は突如として立ち上がった。

 周囲の困惑をよそに俺は窓を開ける。

「ヒューゴ君?」「ヒューゴさん?」

 シアドとシェナは困惑していた。

「待て! 分かったぞ! 今からお前が何するかが!」

 ハッカは慌てた様子だった。

「私も分かりました~、いってらっしゃい!」

「いや止めろよ!」

 ソリスが俺に向かって手を振るとハッカが突っ込む。

「じゃあ! ちょっくらトレーニングしながら王都まで行ってくる!」

 俺は窓から飛び降りて地上に着地する。背後から騒がしい声が聞こえてくるがそっとしておこう。

「あれ? そういえば王都ってどこだっけ……まあいいか!」

 今日も今日とて俺は修練に励むのであった。
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