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第二章 未来
28話 親友
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夏の終わり。涼一はコンビニの駐車場で次の顧客訪問の時間調整をしていた。タバコに火をつけ資料に目を通す。深く吸い込んだ煙をゆっくり吐き出したとき窓をノックされた。
「ん?」
顔を上げると里奈が立っていた。
「涼ちゃん」
手を振りながら里奈が言った。
「おおー久しぶり」
「涼ちゃんサボってるの?」
「さ、サボってないよ、時間調整してるんだ」
「アハハ!冗談だよー」
八重歯の見える笑顔が懐かしかった。
「里奈は?何してるの?」
「病院の帰りなの。暑いからアイス買ってた。
食べる?」
「いいの?」
「うん。帰って食べる分と2つ買ったから」
「そっか、じゃあ頂くよ」
そう言って涼一はソーダアイスの袋を開け、かじりながら言った。
「里奈暑いでしょ?よかったら乗る?」
「うん」
里奈は営業車の助手席に乗り込んだ。
「涼しいね」
「そういえば病院の帰りって言ってたけど、どこか悪いの?」
「ううん、涼ちゃん、私妊娠したんだぁ」
「え?本当に?」
「うん、3ヶ月だって」
「そっかー!おめでとう!」
「ありがとう」
「里奈がお母さんになるんだね、すごいなぁ」
「うん。まだ実感ないけどね」
「幸せなんだね」
「うん。旦那も喜んでくれてるし」
「よかった…」
涼一は微笑んだ。
「涼ちゃんはどうなの?」
「ん?」
「律子さんと戻った?」
「いや。今もひとりだよ」
「え?何で?律子さんと会ってないの?」
「この前偶然会ったけど…律子今こっちに居るんだ」
「え?そうなの?」
「うん。澤井さんと別れて仕事も辞めてね。今は海の近くの歯科医院で働いてる。俺の甥っ子のかかりつけで、連れて言った時に偶然会ったんだ」
「そうなんだね。涼ちゃん…今更だけど…ごめんね、隆くんの事…涼ちゃんを傷付けて」
「いいんだ。俺も同じだから…。里奈はこれからの幸せだけを考えてね」
「うん。涼ちゃんも律子さんと幸せになって欲しいなぁ」
「うーん…」
「何かあったの?律子さんと」
「いや、何もないよ。でも答えを出すのに迷ってる。簡単な事じゃないから…」
「そっか…涼ちゃんと律子さんが同じ答えを出せるといいね」
「うん…」
「じゃあ私そろそろ行くね」
「うん。元気で」
「涼ちゃんも頑張ってね!」
「ありがとう」
里奈は車を降りて手を振った。
「海沿いの歯科医院かぁ…」
里奈は帰りの車の中で呟いた。
◇
数日後、里奈は律子の勤める歯科医院の前に車を止めた。
「たぶん…ここだよね…?緊張するなぁ」
里奈は涼一に会ったあと律子に電話したが番号が変わっていて繋がらなかった。数日迷ったが律子に会う為にやって来た。
(会えるかわかんないけど、ここで待ってみよう…)
時計は16時半を回っていた。本当にこの歯科医院なのかもわからないまま道路の端に車を止め待った。
1時間程経って、二人の女性が裏口から出て来た。
(あっ!律子さんだ)
しばらく会っていないが律子の顔を忘れることはなかった。急いで車を降り律子へ向かって声をかけた。
「律子さん!」
「え?」
律子は驚いて振り返った。
「律子さん…」
里奈はもう一度呼んだ。
「里奈ちゃん?」
「はい。お久しぶりです」
「うわー!里奈ちゃん、久しぶりだねー!」
律子は笑顔で言った。
「よくここがわかったね」
「はい。いろいろありまして。でも会えてよかったです。律子さん仕事終わったんですか?」
「うん、終わったよー」
「少し時間あります?お話しできませんか?」
「うん。大丈夫だよ。じゃあファミレスでも行こうか?」
「そうですね。行きましょう」
二人は少し離れた場所にあるファミレスに移動した。
「本当に久しぶりだね!元気そうでよかった」
「はい。私もお会いできてよかったです」
「律子さん。私が涼ちゃんと別れて、結婚して会社も辞めたって言うのは涼ちゃんから聞いたと思うんですけど…」
「うん。聞いて驚いた」
「この前コンビニで偶然仕事中の涼ちゃんに会って律子さんのこと知ったんです」
「そうだったんだ」
「はい。それと…」
「ん?」
「えっと…隆さんの事なんですけど…」
「うん…」
「ごめんさない…隆さんの彼女が律子さんだなんて思ってもなくて…私、隆さんと…」
涙を堪え真剣な表情の里奈に律子は言った。
「うん。隆くんからちゃんと聞いたし、それは私が悪いの。私が隆くんと里奈ちゃんを傷つけた。それに私も涼一には里奈ちゃんがいるのわかってたのに…」
「律子さん…」
里奈の涙は堪えきれず頬を伝った。
「だから里奈ちゃん、この話はこれでお終いにしよう、ね!」
律子は笑顔で言った。
「はい。でもだからこそ律子さんと涼ちゃんには元に戻ってもらいたいんです。涼ちゃんは簡単じゃないから…って言ってましたけど…」
「そう…だね…」
「律子さん。私に何かできることはないですか?」
「え?」
「私、律子さんと知り合えて良かったと思ってるんです。だから…」
「里奈ちゃんありがとう」
律子の頬にも涙が伝った。
「私ね。涼一を忘れる事は出来ないと思う…これから先も…」
「はい…」
「だからこそ急ぎたくないの…。隆くんや里奈ちゃんにあれだけ迷惑をかけて。私の家族にも悲しい思いをさせたから…」
そう言って律子は腕時計を外し手首の傷を見せた。
「え?!律子さんまさか?!」
「ええ…」
里奈は顔を覆って泣いた。
「里奈ちゃん。こんな私を隆くんが助けてくれて…でもそんな隆くんの気持ちに答えることができなかった…最悪な彼女だったの」
「そんな事…」
里奈は泣きながら続けた。
「隆さんとは?連絡してないんですか?」
「うん。していない。番号変えたとき隆くんの番号も消したから」
「そうなんですね…」
「もう2年経つから新しい彼女ができてるだろうし、すごく傷付けた隆くんに会う資格もないから…」
「律子さん…」
暫く沈黙が続き、律子が話題を変えた。
「里奈ちゃん今お勤めはしてないの?」
「はい。結婚してから専業主婦です。で、最近妊娠がわかって」
「えー?本当に?」
「はい、3ヶ月みたいです」
「うわー!おめでとうー!!」
「ありがとうございます!」
里奈は笑顔で答えた。
「里奈ちゃん、こんな私が言うのも何だけど、幸せになってね!」
律子も笑顔だった。
「はい」
里奈は微笑んだ。
「旦那さんは?どんな人?」
「普通の人ですよー、涼ちゃんみたいにイケメンでもないし」
「そ、そうなんだ」
律子は反応に困って苦笑いになった。
「公務員なんですけど、とにかく真面目で退屈な時もあります。でも…」
「でも?」
「とっても…優しいんです」
「もーう、いいじゃない!羨ましいね!」
「涼ちゃんと別れて私もダメでした。何もする気が起きなくて。辛うじて仕事はしてましたけど…。涼ちゃんと同じ会社だったから、たまに見かけると辛くて…。会社を辞めようって思ってた時に両親から見合いを勧められたんです。正直嫌でした。でも心配してくれてる両親を思うと申し訳なくて、取り敢えず合うだけ合ってみようかなって」
「うん…」
「慣れない着物を着て、テンション最悪で会場に着いて、旦那の顔を見ても何も感じなくて…。ひと通り挨拶が済んで二人になった時にお断りしようと思って、涼ちゃんの事を話したんです…忘れられない人がいるって…。全て話しました。そしたら彼が言ったんです」
「辛かったですね…って。私も同じ気持ちになりましたって泣いたんです。あなたは僕にはもったいない。でも、もし僕でよければ、もうそんな思いはさせません。僕はそんなにモテませんからねって…。なんかホッとして涙が止まらなかったです」
「そっかぁ…感動するね…」
「結婚してからもそれまでと変わらず、真面目で優しくて、私のことを想ってくれてるのがわかるんです」
「うん」
「この人と結婚してよかった。この人の子供を妊娠してよかったって…。だから今は涼ちゃんの事はいい思い出です。私の心の中に大切にしまっておきます」
「里奈ちゃん…やっぱり凄い人だね。勝てなかったのは私の方だった」
「そんな事ないです…私が涼ちゃんを諦められたのも律子さんだったから…。この人には勝てないって思ったからなんですよ」
ふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「ねぇ律子さん!」
「え?」
「これからも私のこと忘れないで下さいね」
笑顔で言う里奈に律子は言った。
「もちろん!」
笑顔のふたりは昔からの親友のようだった。
「ん?」
顔を上げると里奈が立っていた。
「涼ちゃん」
手を振りながら里奈が言った。
「おおー久しぶり」
「涼ちゃんサボってるの?」
「さ、サボってないよ、時間調整してるんだ」
「アハハ!冗談だよー」
八重歯の見える笑顔が懐かしかった。
「里奈は?何してるの?」
「病院の帰りなの。暑いからアイス買ってた。
食べる?」
「いいの?」
「うん。帰って食べる分と2つ買ったから」
「そっか、じゃあ頂くよ」
そう言って涼一はソーダアイスの袋を開け、かじりながら言った。
「里奈暑いでしょ?よかったら乗る?」
「うん」
里奈は営業車の助手席に乗り込んだ。
「涼しいね」
「そういえば病院の帰りって言ってたけど、どこか悪いの?」
「ううん、涼ちゃん、私妊娠したんだぁ」
「え?本当に?」
「うん、3ヶ月だって」
「そっかー!おめでとう!」
「ありがとう」
「里奈がお母さんになるんだね、すごいなぁ」
「うん。まだ実感ないけどね」
「幸せなんだね」
「うん。旦那も喜んでくれてるし」
「よかった…」
涼一は微笑んだ。
「涼ちゃんはどうなの?」
「ん?」
「律子さんと戻った?」
「いや。今もひとりだよ」
「え?何で?律子さんと会ってないの?」
「この前偶然会ったけど…律子今こっちに居るんだ」
「え?そうなの?」
「うん。澤井さんと別れて仕事も辞めてね。今は海の近くの歯科医院で働いてる。俺の甥っ子のかかりつけで、連れて言った時に偶然会ったんだ」
「そうなんだね。涼ちゃん…今更だけど…ごめんね、隆くんの事…涼ちゃんを傷付けて」
「いいんだ。俺も同じだから…。里奈はこれからの幸せだけを考えてね」
「うん。涼ちゃんも律子さんと幸せになって欲しいなぁ」
「うーん…」
「何かあったの?律子さんと」
「いや、何もないよ。でも答えを出すのに迷ってる。簡単な事じゃないから…」
「そっか…涼ちゃんと律子さんが同じ答えを出せるといいね」
「うん…」
「じゃあ私そろそろ行くね」
「うん。元気で」
「涼ちゃんも頑張ってね!」
「ありがとう」
里奈は車を降りて手を振った。
「海沿いの歯科医院かぁ…」
里奈は帰りの車の中で呟いた。
◇
数日後、里奈は律子の勤める歯科医院の前に車を止めた。
「たぶん…ここだよね…?緊張するなぁ」
里奈は涼一に会ったあと律子に電話したが番号が変わっていて繋がらなかった。数日迷ったが律子に会う為にやって来た。
(会えるかわかんないけど、ここで待ってみよう…)
時計は16時半を回っていた。本当にこの歯科医院なのかもわからないまま道路の端に車を止め待った。
1時間程経って、二人の女性が裏口から出て来た。
(あっ!律子さんだ)
しばらく会っていないが律子の顔を忘れることはなかった。急いで車を降り律子へ向かって声をかけた。
「律子さん!」
「え?」
律子は驚いて振り返った。
「律子さん…」
里奈はもう一度呼んだ。
「里奈ちゃん?」
「はい。お久しぶりです」
「うわー!里奈ちゃん、久しぶりだねー!」
律子は笑顔で言った。
「よくここがわかったね」
「はい。いろいろありまして。でも会えてよかったです。律子さん仕事終わったんですか?」
「うん、終わったよー」
「少し時間あります?お話しできませんか?」
「うん。大丈夫だよ。じゃあファミレスでも行こうか?」
「そうですね。行きましょう」
二人は少し離れた場所にあるファミレスに移動した。
「本当に久しぶりだね!元気そうでよかった」
「はい。私もお会いできてよかったです」
「律子さん。私が涼ちゃんと別れて、結婚して会社も辞めたって言うのは涼ちゃんから聞いたと思うんですけど…」
「うん。聞いて驚いた」
「この前コンビニで偶然仕事中の涼ちゃんに会って律子さんのこと知ったんです」
「そうだったんだ」
「はい。それと…」
「ん?」
「えっと…隆さんの事なんですけど…」
「うん…」
「ごめんさない…隆さんの彼女が律子さんだなんて思ってもなくて…私、隆さんと…」
涙を堪え真剣な表情の里奈に律子は言った。
「うん。隆くんからちゃんと聞いたし、それは私が悪いの。私が隆くんと里奈ちゃんを傷つけた。それに私も涼一には里奈ちゃんがいるのわかってたのに…」
「律子さん…」
里奈の涙は堪えきれず頬を伝った。
「だから里奈ちゃん、この話はこれでお終いにしよう、ね!」
律子は笑顔で言った。
「はい。でもだからこそ律子さんと涼ちゃんには元に戻ってもらいたいんです。涼ちゃんは簡単じゃないから…って言ってましたけど…」
「そう…だね…」
「律子さん。私に何かできることはないですか?」
「え?」
「私、律子さんと知り合えて良かったと思ってるんです。だから…」
「里奈ちゃんありがとう」
律子の頬にも涙が伝った。
「私ね。涼一を忘れる事は出来ないと思う…これから先も…」
「はい…」
「だからこそ急ぎたくないの…。隆くんや里奈ちゃんにあれだけ迷惑をかけて。私の家族にも悲しい思いをさせたから…」
そう言って律子は腕時計を外し手首の傷を見せた。
「え?!律子さんまさか?!」
「ええ…」
里奈は顔を覆って泣いた。
「里奈ちゃん。こんな私を隆くんが助けてくれて…でもそんな隆くんの気持ちに答えることができなかった…最悪な彼女だったの」
「そんな事…」
里奈は泣きながら続けた。
「隆さんとは?連絡してないんですか?」
「うん。していない。番号変えたとき隆くんの番号も消したから」
「そうなんですね…」
「もう2年経つから新しい彼女ができてるだろうし、すごく傷付けた隆くんに会う資格もないから…」
「律子さん…」
暫く沈黙が続き、律子が話題を変えた。
「里奈ちゃん今お勤めはしてないの?」
「はい。結婚してから専業主婦です。で、最近妊娠がわかって」
「えー?本当に?」
「はい、3ヶ月みたいです」
「うわー!おめでとうー!!」
「ありがとうございます!」
里奈は笑顔で答えた。
「里奈ちゃん、こんな私が言うのも何だけど、幸せになってね!」
律子も笑顔だった。
「はい」
里奈は微笑んだ。
「旦那さんは?どんな人?」
「普通の人ですよー、涼ちゃんみたいにイケメンでもないし」
「そ、そうなんだ」
律子は反応に困って苦笑いになった。
「公務員なんですけど、とにかく真面目で退屈な時もあります。でも…」
「でも?」
「とっても…優しいんです」
「もーう、いいじゃない!羨ましいね!」
「涼ちゃんと別れて私もダメでした。何もする気が起きなくて。辛うじて仕事はしてましたけど…。涼ちゃんと同じ会社だったから、たまに見かけると辛くて…。会社を辞めようって思ってた時に両親から見合いを勧められたんです。正直嫌でした。でも心配してくれてる両親を思うと申し訳なくて、取り敢えず合うだけ合ってみようかなって」
「うん…」
「慣れない着物を着て、テンション最悪で会場に着いて、旦那の顔を見ても何も感じなくて…。ひと通り挨拶が済んで二人になった時にお断りしようと思って、涼ちゃんの事を話したんです…忘れられない人がいるって…。全て話しました。そしたら彼が言ったんです」
「辛かったですね…って。私も同じ気持ちになりましたって泣いたんです。あなたは僕にはもったいない。でも、もし僕でよければ、もうそんな思いはさせません。僕はそんなにモテませんからねって…。なんかホッとして涙が止まらなかったです」
「そっかぁ…感動するね…」
「結婚してからもそれまでと変わらず、真面目で優しくて、私のことを想ってくれてるのがわかるんです」
「うん」
「この人と結婚してよかった。この人の子供を妊娠してよかったって…。だから今は涼ちゃんの事はいい思い出です。私の心の中に大切にしまっておきます」
「里奈ちゃん…やっぱり凄い人だね。勝てなかったのは私の方だった」
「そんな事ないです…私が涼ちゃんを諦められたのも律子さんだったから…。この人には勝てないって思ったからなんですよ」
ふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「ねぇ律子さん!」
「え?」
「これからも私のこと忘れないで下さいね」
笑顔で言う里奈に律子は言った。
「もちろん!」
笑顔のふたりは昔からの親友のようだった。
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