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77話 黒曜石村の殺人 ⑤:3
大元は憧礼神具と共に泊まる部屋に辿り着いた。
【天の間】と間違い無く書かれている。
和風の戸を開け放つ。
「部屋はここか」
部屋に入ってみれば広く趣がある和室。
入った瞬間、畳の匂いと、ほのかに茶の匂いがした。
部屋の中央には高さの低い和机があり、緑茶と栗要りモナカと書かれたお茶菓子が二人分。
どちらも細かい模様が施された木工細工の皿に乗っている
部屋の窪みに備えつけられている巨大な薄型テレビも案外、部屋の雰囲気を壊していない。
縁側では外に、枯山水の庭。かなり良いお寺でも中々この規模の枯山水は持っていない。
寝る部屋はさらに奥にもう一部屋があり、布団がすでに敷かれていた。いつでも横になれる。
「こんなにいい旅館だったのか……」
「そういえば魔法を貰った自慢?とやらは魔法をもらっていない人はどうするんだ?」
「今回は呼んで無い」
「ヘドロは使えないだろ」
「え」
「え?」
「ヘドロの治療は魔法だぞ」
「ゲームとかの回復魔法か?」
「いや違う、というか本人から聞けばいいと思う」
「ああ本人から聞けるってことはそれまでに人は死ななそうだな」
「……そうかもな」
テレビを付けて二人でお茶菓子をつまみお茶を飲む。
とても今から人を殺すつもりがある奴とは思えん。
テレビ番組は旅ロケ、温泉で女性がタオルを巻いて入っている。
女性用の温泉の中ってテレビで放送していいんだ……?
「……もし、もしだけどさ」
「うん?」
「天国とか地獄があったらさ、その時俺と……また遊んでくれるか?」
死んだあとの話なんか初めてふられた。
かなり参っているのかもしれない。
人を殺すことでさえ止めてくれる友だちが俺しかいないなら参ってしまうのも無理はない。
「地獄に行くのは嫌だけど、天国ならいいぞ」
「お前と友だちになれたら良かったんだけどな」
「俺は友だちだと思っているけど!?」
やっぱり、心を開かせるのは難しいのだろう。
警察と犯罪者……本人がどう思っているのかは知らないが。
友だちになりたいとは思ってくれているらしいから、嫌われてはいないんだろうけど。
「さて、せっかくだから温泉に行くか」
「いいな!!俺、けっこう楽しみ」
「まて、あわてるな」
「む?」
「浴衣に着替えてからだ」
「脱衣所で着替えないのか?」
「浴衣で行けば着替えが荷物にならないから、風呂上りでも身軽に散策できる」
「確かに」
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