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24話 探死手:2
しおりを挟む憧礼神具、ヘドロ、大元正義はウィザードのプライベートホールに到着した。招待状に記されていた場所だ。
皆が駐車場を下りてみれば、入口に人の列が出来ていた。
列に並び、フォロワーズたちは手の平に刻まれたOの火傷を見せて会場の中へと入って行く。大元正義だけは招待状を見せて中へ。
「いつも、こんなにいるのですか?」
「俺最近フォロワーズになったばかりで知らないんだよな……ヘドロ、人数いつもこれぐらいなのか?」
「今日は特に多いな」
中には沢山の観客が今か今かとショーを待ちわびている。
ブザーが鳴り響き暗闇に包まれた会場。
ライトに照らされたカーテンが幕を開けた。
オウル・ゲートがステージの中央に立ち、観客へお辞儀。
「犯罪芸術家 オウル・ゲートのステージを存分にお楽しみください」
にこやかな美形、だが今日の客たちはオウル・ゲートの顔を見に来た訳ではない。彼の作品を見に来たのだ。
「作品の題名は【探死手(さがして)】パンフレットをご覧ください」
パンフレットと書かれた白い紙が観客たちの目の前に魔法で現れた。慣れた様子で観客たちはパンフレットを手に取る。
作品名は漢字で探す、死ぬ、手。
皆がパンフレットを確認し終えると、再び舞台に目を向けた。
「被害者の名前は九十九鳳仙花、27歳の女性です」
遺体の画像、当然だが警察は一般人に公開などしていない。
袋を被り首にロープ、裸でわずかな糞尿と精液。
一般的に言えば【あんなもの】だが、客たちは喜びの声を出す。
『いいぞいいぞ!!』
『こういうのよこういうの!!』
『最高!!』
大元正義は怒りの感情を抱いた、人が死んでいるのに何という態度だろうかと、強く胸を抑えつける。それが彼の正義(セイギ)である。
「彼女を殺した犯人は、このかたです」
天井から鉄の鎖で吊り下げられた二つの檻の片方に一人の女性。
もう片方にはパトカーに捕まえていたはずの男。
そして殺したと言ってオウル・ゲートが手で示すは女性の檻。
「何で私が犯人なのよ!?」
「彼女の名前は鏡下同実(かがみげどうみ)、そしてもう一人大事な登場人物がこの男」
「出せよクソ、女犯しただけでなんだってんだ!?」
「ことの発端、彼は被害者の女性をレイプしました」
「とっとと刑務所に入れりゃいいだろ!?なんだよここ!?」
「少し、静かにしてもらいましょう」
針と糸が勝手に動いてレイプ犯の口が縫われた。
まるでポルターガイストのように動いた針と糸に観客は様々な反応をする。痛そうと声を漏らす者、ざまぁ見ろと言うもの。
大元正義は、本当に魔法が存在するのだとようやく実感した。
人間が相手に出来るような存在ではない。
「九十九さんは公園で友人に助けられます、そして犯人を見つけ出して殺してと願われた」
「何でそのことを!?」
「録画がありますよ」
監視カメラのような映像がオウルと檻の背後に映し出される。
『お願い、あいつを殺して』
『ど、どうやって?』
『あいつが人殺しになれば事件が報道される』
『え!?』
『私を殺せば犯人にたどり着ける、お願い!!』
映像は途切れた。
「二人は犯人を見つけ出す為、キャンプ場に行き、被害者は自らロープの前に立ちました」
大元は自分たちが殺人犯として逮捕した男が無実で困惑した。
レイプした女性を殺した訳ではなかった。
成立するのは本来、強姦罪のみ。
自殺ではないと断定されたのはロープに本人の指紋がいっさい無かったから。他殺だが、その犯人は別人。これが事件の真相である。
「彼女は友人の意思を尊重してまで友人の死を認めて犯人を捜しました」
「横やりを入れないでよ、その男は!!」
「さぁ今からその男を殺してください」
「え?」
「殺さない限り日常には帰れないですよ?」
ガガガ、ガタン!!!!
金属音と共に檻の鎖が伸びて、檻は地面に叩きつけられた。
男は手足を縄で縛られている。
「んうううう!?」
「痛っ!?」
檻が勢いよく地面に落ちたのだから、当然落下の衝撃はあっただろう。だが友を思って殺した者、鏡下はそれよりも戸惑い、観客を見た。
「あちらに警察の方がいますねぇ」
鏡下は警察と言われ顔を向けた。
犯罪者とんった彼女にとって、警察は敵である。
「……私、本当は誰も殺したくなんか!!」
「では死になさい」
鏡下の首にロープがかけられ、徐々に締まっていく。
手に持たされたのは包丁。
大元を見る脅えた眼。助けてと訴えていた。
「……正当防衛にて、本官はこれを許諾する」
この殺人からは助けることは出来ないが、大元は責任を取ることを選んだ。正当防衛だったと。
鏡下はレイプ犯の心臓を包丁で突き刺す。
酷い血しぶきが上がる、鏡下はかえり血で真っ赤にそまる。
オウル・ゲートは空中に浮遊してお辞儀をした。
「以上を持ちましてショーは閉幕となります、またのご来場をお待ちしております。気を付けてお帰り下さい」
カーテンが締まりきると観客たちはただ映画でも見終わったかのように帰っていく。
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