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38話 ぷーくん

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『クロノ、あそぼ』
「んぎ、g、ぷぅグ!? さっき部屋に戻したのに!?」
『抱っこ、抱っこ』

 これじゃまたデータが破損する、どうしたら!?

「おいで」
『カナ抱っこしてくれる?』
「ほら高い高い」
『きゃっ、きゃきゃ』
「もー【おねんねの時間】だからな、ベッドで――」
『ひっ!!』
「ひ?」

 んぎ、g、ぷぅグはベッドを怖がってる。
 殺された部屋だから当然では、ある、な。
 でも彼女は覚えてないし、行動は当然だ。

「んぎ、g、ぷぅグ……ここはもう大丈夫」
『もうアレないない?』
「そう、もうお前は死なないよ」
「はい?」

 しまった、彼女からすれば――そうだよな。
 この数分の記憶を消すってのもありだろうか。
 遅かれ早かれ気付かれる、ことだよな。

「☆クロノ☆」
「キララ……?」
「☆さっき真実を話した、そのうえで彼女はここにいると――☆」
「は?」
「☆……ごめんな、親友☆」

 話したってどういうことだ、いやでも彼女はここに戻った

『この布団は苦しいナイ?』
「ナイよー」
『クロノも一緒に寝るしてくれる?』
「こいよクロノ……くん、いや悪い、口が滑った」

 彼女の記憶は【吸い取った】けど、復活しつつあるのか。
 どうしたら今度は死なない?
 守るってことが、俺は、本当に苦手だな。

「疲れた」
「☆お前らまとめてしばらく休めよ、俺があとはなんとかしておくから☆」

 布のベッドなんか正直、処刑道具で好きじゃない。
 けれどそこに俺の、大切なものがある気がしてとびこんだ。
 二人を足で掴む、二度と離したくない。

『クロノのぎゅー好き!』
「お前はほんとにずっと俺を困らせたよなぁ最後まで……知ってたくせに」

 ある惑星で、種族ぜんぶ抹殺指令が出て俺は動いた。

「ねぇタイム星人さんは最後に子供を育てるんでしょ? オイラのこと、さらってよ」
「はぁ!?」
「……いいよ殺されても、だからオイラにしてよ」

 時間もなくいう事をきいたガキをさらった。
 タイム星人にさらわれた末路についてすべて知ってるくせについてきた。
 生きながらえたいのか、と問いかけた。

「死ぬのはいいけど、最後まで一人は、やだ」
「……まぁ嘘はついちゃいねぇな」
「末路も勉強したから知ってる、でもオイラ行きたい」

 頭は良さそうだったが周りから迫害されていたのは見て分かった。
 肌の色が真っ白だったのだ、この星は皆赤い。
 希少種として保存価値ありだった。

「……おいで」
「うん!!」

 奇妙な生活が始まった。
 今までも子供に懐かれたことはあったが殺されることが分かってて懐いたのは初めて。
 油断させて寝首をかこうってわけじゃない。

「クロノはオイラのこと、悪者だって言ったりしないから」
「悪者?」
「オイラは世界を守るヒーローのほうがいいや」
「……俺はヒーローじゃないぞ、軍人だ」
「世界を守らなきゃいけないから、オイラは殺される、でもいいんだ」
「何でそうも……」
「抱っこ」
「はぁ?」
「オイラ知ってるんだ、タイム星人は足で抱っこして最後の子を運ぶって!!」

 抱っこってあれか、持ち上げる。
 でもいうこときいてついてきた時点で必要ねぇんだよな。
 逆らわないように運ぶためにやることで。
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