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23話 鬼が思っていたのと違う

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本日はお仕事がお休み
 
「ちょっと出かけてきます」
「何処へ?」
「地獄に」
「一人でうろついていい場所じゃねぇんだろ本当は……?」
「赤鬼さんと約束があるので」
 
ソファーでタチと遊んでいたエンマ様が顔を上げた。
 
「えっ?」
「そういう訳で行って来ます」
「何か裁判になるような事をしでかしちゃったの!?」
「一度は経験してはみたいですね」
「僕も行く!!」
「赤鬼さんが構わないならいいですけど」
 
 
こうして待ち合わせ場所に向かった
先に到着していた赤鬼が
エンマ様を2度見した
 
 
「来てくださるなら言うでござるぅ!!」
「僕はただレディさんが心配だったんだよ」
「ぐぬぬ……物は持って来たのか?」
「はい」
 
レアなエンマ様カードを渡した
いわゆる光る加工がされたもので
価格も高いが買う者たちはあまり手放さないのでカードショップにも売られていない
 
 
「うむ、約束のカードを渡そう」
「どうも」
「何のカード?」
「どうしでも揃わなかったナンバー23のカードです」
「お店で買えないの?」
「違うんですよ……それは」
「え?」
「こういうのは特定のカードを買うより交換で手に入れた方がスッキリするので」
 
エンマ様がせっかく地獄に来たし行きたい場所があるというのでついて行く事に
赤鬼も彼が行くなら自分も同行させてもらうと付いて来た
たどり着いたのは温泉
 
「三途の川から流れてくる水を沸かしてる場所があって」
「その場所って本当に存在するのですね!?」
「ついでに寄って行こうかな」
「もちろんお供するでござる」
 
三途の川にごく普通にたどり着いた
子供たちが別に石とか詰んでない
てっきり時代に合わない石を積んでは崩されているのかと
 
「歴史研修とかで子供が石を積むツアーならあるよ」
「ツアー!?」
「昔の地獄ではこんな感じでしたツアー」
「鬼たちに縛られて連行されていく」
「鬼って他の方もいるので?」
「沢山いるが今はあまり見かけないな」
「何故?」
「そもそも拙者たちは昔の警官をしていたでござる」
「警官?」
「地獄の階段に悪魔が行く前に暴れる者を暴力で抑えていたでござるよ」
「なるほど」
 
今では天使の役目に変わり鬼たちはそれぞれ別の仕事に就くなどした
裁判に関わる者や転生アドバイザーに『天使』に変わった者も
神様からの任であれば鬼であろうと天使として働けるらしい
 
「あとこの川は決して飲んではならん」
「何故ですか?」
「だってヘドロとか溜まってて汚いから……」
 
たしかに川をよく見てみれば所々に貯まる何か黒い塊
全体的な色もなんというか半透明で
時々泡立っている箇所が見えてそこが虹色に光っている
 
食器洗いの時に見る色合いである
 
「昭和みたいな水質汚染になってしまったのですか?」
「これが流れてくる大元の湖で『天然の洗剤』が噴き出して」
「パワーワードですね」
「そう?天然化粧水!!とか見るけど」
「天然詐欺の奴ですね」
 
どんなものでも自然界にあるものを加工している
プラスチックですら『原油』が材料
それらは魚やプランクトンの死骸ですべては元々ようするに天然なのだ
 
「完全に天然物が身体にいいならそこらへんの土でも身体につければいいと思う」
「化粧品会社からクレーム来そうですね」
「成分で勝負しない方が悪い」
「エンマ様のお言葉をこうして聞けるだけで幸せでござるッ!!」
「そういえばロボット掃除機って地獄に売っているのですかね?」
「売ってはいるけど何で?」
「皆で出し合ってリビングとキッチンだけ掃除して貰おうかって話に」
「ああいいね」
「その役目は全部拙者の物だったのに……!!」
 
泣くほど悲しいらしい
エンマ様に引っ越す前の死神だけが住むアパートについて聞けば
アパートの関係者以外立ち入り禁止
 
 
「何故ですか?」
「死神って上級になると機密文書とか扱うからさ」
「漏えい防止なんですね」
「んー赤鬼のヤンデレ具合が二人ともきにならないなら家政婦して貰ってもいいけど」
「私はともかく三日筋肉さんは嫌がりそうですね」
 
温泉で3人ゆったりする
エンマ様がいればやはり目立つが赤鬼の威嚇で傍には寄って行かない
そして鬼も温泉に入るとは
 
「まじまじと見てどうしたでござるか?」
「鬼さん方って人とあまり変わらないと思って」
「……拙者はそもそも『元は人間』でござる」
「え?」
「肌は真っ赤だが元々は真っ白でござった」
「血で赤く染まったのですか?」
「地獄は太陽が激しかったのだ」
「日焼けだったのですね」
 
鬼にも色々いるがあまりも赤く焼けた為に赤鬼と呼ばれたらしい
本名は左衛門で苗字は無いとの事
当時鬼たちが暴れまわる無法者たちを暴力で支配していたが
神様に目を付けられて悪魔にされる所だったらしい
 
「そこを閻魔様が助けてくれたのだ」
「ヤンデレかと思っていましたが恩返しなのですね」
「故に閻魔様が望むならば離れるのも……ッ仕方なし!!」
「泣くほど辛いなら三日筋肉さんを説得しましょうか?」
「え?」
 
エンマ様に聞いたところ赤鬼の事は別に嫌ってはいないし
一緒に住みたいのは構わないが住まわせて貰った身の上
故に三日筋肉が嫌がっているうちは無理という話で
 
「赤鬼さん三日筋肉さんはぐいぐい頼られると断れないですよ」
「悪い顔をしているでござる」
「レディさん本質は悪魔よりな所があるから」
 
 
 
こうしてシェアハウスにて
 
 
「限界でござるううううう!!エンマ様のおそばにいさせてほしいでござるううう!!」
「わ、分かった!!分かったから道端で駄々こねて泣くなッ!!」
「いいんですか?」
「大の大人が泣き叫びながらだだこねてるのみたらいたたまれないだろ……」
「ほらチョロい」
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