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36話 役目のオワリ
しおりを挟む俺はどうやら眠っていたよう、で起きたらレイニーと目が合った。
「目が覚めましたか?」
「……スキルが誤爆して数百年前の過去が見えた」
「この男がスキルを育てるために異世界転生者を監禁強姦しまくることを決意したシーンです?」
漫画の雲フキダシのようにもくもくと、俺が見ていた夢が俺の頭から出てきていたのだと説明するレイニー。
ホンイツの目的はとっくに知っていたのだが、何故今になって転生者の虐待をやめたのかと聞く。
魔王を討伐するためとはいえ、ニカナ国王の手段を選ばない行いは王子をしていればさすがに耳に入ってくるらしい。やめたことぐらいは遠く離れたカミノにいても分かったのだと。
「魔王はもう倒せるから安心して好きにしろと手紙が届いた」
「誰から?」
「初代」
最初に異世界転生者としてこの世界に来た者らしく、初代と名乗っているらしい。
もういいと言われてハクアを相手に毒を盛られた、というのが何かひっかかる。
自己犠牲で罪を犯したホンイツと身勝手なハクア2人。相性は最悪なのではなかろうか?
「ハクアさんはキノコを用意しただけですね」
「味は美味しいんだよ」
美味しいなら食べてみようかなドクジャンコレキノコ。
自分で出せるドコドコキノコと間違って食べないようにしないといけない。
そんな能天気な考えはともかく、せっかく俺とレイニーで治療して助けたんだ、今度は魔王を口実に自殺されたら何かモヤモヤする。
「あなた1人だけ逃げ出すなんて私が許しませんからね」
「許さないならどうするの?」
「カドマツ様は1階に宿泊部屋がありますからそちらへどうぞ」
「お前は?」
にっこり笑ってレイニーは一言。
「やられた分をやり返してきます」
先ほどのスキル発動のおかげで俺は強烈に疲れていたので、眠気には勝てなくて『分かった』と返事した。
1階へ向かい、寝室を見つけてぐーすか寝た。
翌朝になってようやくやられた分というセリフの意味に気付いて、少しアレな顔をする。
ドールが朝食を運んんできたので、聞けば国王のお部屋にはまだしばらく入らないほうがいいと答えてきた。
昼ぐらいになってようやく見せたレイニーは便秘が解消したかのようなスッキリ顔。
「お待たせしました」
「どうしたのか聞くの怖いんだけど」
「毒が効くなら薬も効くので強烈なドラッグで廃人にしただけです」
えげつないが因果応報なところもあるし、生きてんならもう良し。
そのうち回復もするらしく、永遠に廃人という訳でもないと聞いて少し安心した。
2人で外に出て市場を見に行ったら、珍しくレイニーのほうがやけにいろいろ見て回る。
今までは俺の後ろをヒヨコみたいについてきていたのにレイニーは俺の前を歩いた。
甘酒のミルク割りを美味しそうにストローで飲むレイニー。
カミノでもジーンズでも食べ物や飲み物にほとんど興味示さなかったのに。
「果物の飴?」
『身分証なくてもうちは金さえあれば買えるぞ?』
「あの許可証いちいち出すの面倒だから助かるな」
「そうですね」
『え、許可証ってまさか国王許可証!?』
国王は民に恐れられている様子で許可証を出すと平民はビビってしまう。
飴をおいしそうに食べるレイニーはやけにご機嫌で、甘いものがそこまで好きだったとは意外だった。これまで甘いものを喜んでいたことってあったっけな……と空を見て考えたが、そういえばここからは例の竜宮城がよく見える。
逆に俺が泊めてもらった1階の窓からはちょうどこの位置が開けていて見やすいと思った。
「ここは昔から変わっていないようですね」
「なあレイニー、水のスキルカードくれね?」
レイニーでも発動するのかと軽い気持ちで頼んだのだが――
「嫌です」
「何で」
「いま渡したら私の18禁な過去が広場の真ん中で映像として発動しますから」
「なんかごめん」
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