異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価

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130話 悪化

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「え?」

 話していた異世界転生者、アルさんが急にぐったりしてしまった。
 唸り声のように低い声を出し続けている。
 熱を測ると非常に熱い。

「ほ、ホンイツちょっときてくれ!!」

 ホンイツのほうが異世界転生者の医学には詳しい。
 その逆というか、ヒトの限界や壊し方に詳しければ逆もしかりというワケだ。
俺も勉強はしたが、ちょっと勉強したぐらいで診察できるほどの頭なら俺は大学にも受かっていただろう。
 診察してもらった結果、さきほどの化け物から毒を喰らった可能性があるらしい。
 心配したトングさんも出てきた。

「いますぐ治療しないとけっこう危ない」
「……まずはマキナのところへ行こう」
「あんな闇のスキルしか使えない男の元で解決する?」
「すくなくとも場所が確定する、ヒトに出会っちゃいけないなら――」

 マキナは闇のスキルのせいで人には会わないようにしている。
 壊すと治すしかり、出会いたくないなら出会う方法にも詳しい。
 もし治療のスキルカードがあればホンイツなら使えるとのこと。
 異世界転生者でもこんなふうに弱るのかと問いかける。

「異世界転生者は度を超えて頑丈でも、ずっと攻撃されつづけたりすれば死ぬ」
「お前も出会った時、毒で死にかけてたもんな」
「彼女、僕じゃない誰かに長い事こと監禁されていた形跡がある」
「え? お前の他にそんな奇抜なことする奴が?」
「分からないけど、かなり弱っているのは確か」
「俺はカミノの方角だけ分かる」
「なんだその妙な方位磁石」


 なぜか? 俺は【スキル:偽果実】で最も安いメロンパンを売っている場所が分かるのだ。カミノにはタダでメロンパンを毎時間、定期的にくばるだけの仕事がある。
 つまり最も安いメロンパンはカミノで作られた配布パン。

「つねにって訳じゃないが今は指させる、あっち」
「ドールに運ばせる?」
「お前の人形なんか使用できるか!!」

 一般的な反応なんだろうけど、じゃあ。

「俺もドールに吹雪のなか抱えさせたらまずいと思ってた」
「だろ?」
「というわけでトングさんよろしく」
「え?」
「だって俺、女の子背負って雪山を歩けるほど強くないし……」
「異世界転生者が!?」

 確かに異世界転生者はほとんどがそれくらい軽々とできるのだろう。
 監禁され、暴力をふるわれたと思ったらこんどは仲間が死んでいく。
 魔王に殺された異世界転生者は多い、どれほど辛かったか想像すいることさえ難しい。

「レイニーのおかげで、今のところ俺のまわりでは誰も死者が出てない」
「すごいな!?」
「辛い目にあうほど強いのが異世界転生者だ」
「そうだな」
「レイニーに守りきってもらった俺は弱い、いい誇りだろ?」

 トングさんはそれを聞いてちょっと笑っていた。
 弱いと自慢してくる人間には初めて出会ったそうだ。
 でも誇らしいもんとちょっと膨れる。

「……確かにな」

 トングさんがアルさんを背負った。
俺たちはラップで作ったロープで繋がれカミノ方面を目指す。
景色はどうせ見えないのでスノウゴーレムで雪のトンネルを作ってもらい進む。
そしたら急にホンイツがとまった。

「何かいる」
「え? 敵?」
「……静かに、確認する」

 ホンイツがトンネルの天井をあけて外へ。
 おいでおいでと寝招きするので俺も続いた。
 外ではマキナが怪訝そうにしていたのだ。

「雪山登山はもっと装備しろよ」

 正論だが、今は説明している暇がない。

「【スキルカード:治療】もってないか!?」
「何でカドマツがここに……俺の家にならあるけど」
「使わせてくれッ!!」
「怪我か?」
「彼女、もう意識がなくて――」

 こうしてマキナの家へ。中は外より少し暖かく、布団も貸してもらえた。
 【スキルカード:治療】はホンイツに任せた。
 一応は助かると聞いて一安心。

「えーとトングさんはマキナと初対面?」
「マキナのことは俺もよく知らねぇ――力が暴走するからこの山にいるってことは分かる」
「僕も知らない」
「え、ホンイツも?」
「お前がホンイツか!!」
「うん」
「――ヒヒッ」

 あ~~~まずい。

「怒らせた、闇の――なんていうかスキルが暴走して」
「ふーん」
「前と同じようにお前の『ケツ丸出し18禁』が出てくればまだいいんだが」
「なんて?」

 マキナは笑いながらこっちに襲い掛かってきた。
 【スキル:闇】で黒い霧があたりに充満していく。
 暗闇にされたら攻撃の回避は難しい。


「とにかく驚かせないといけない、病人も危ない」
「大きな音とか?」
「もっと浮気現場を目撃したぐらい驚かさないとダメだ」
「セクハラでもしてみる……いや、駄目か」
「分かった!!」

 俺はスキルで全裸になり抱き付きにいった。

「ケヒ――待て、やめろ」
「戻って良かったぜ……でも俺が凍死しそう」

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