この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

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「車道君の頼みなら聞いてあげたいけどこればっかりは難しいよ・・・。」

俺は神沢の家を出て、その足でボロアパートに向かっていた。
なんか落差が凄いな・・・。
目の前にはそこに住んでいるお嬢様風の生徒会長がいる。
相生山先輩なら・・・生徒会長なら今回の件をなんとかしてくれるんじゃないかと思ったがその考えは甘かった。

「神沢君が喧嘩に巻き込まれたのがやむを得ない理由なら私もなんとかしてやれないこともないんだけど・・・どうしても理由は言えないの?」
理由が言えないわけじゃないが、神沢の恋愛事情をペラペラと喋るのも気が引けるしな・・・仕方ない・・・この方法は使いたくなかったが・・・。
「先輩・・・貧乏なことはまだ生徒会の人達にバレてないんですよね?」
「そうだけど・・・もしかして神沢君の退学をなんとかしないとバラすって言おうとしてる?それは無理よ。」
「な・・・」
「だって車道君はそういう汚い手段を使うような人じゃないでしょ?」
「・・・先輩は俺を良い奴だと思いすぎですよ・・・。」
「でも元々バラすつもりがないのは当たりでしょ?」
「・・・心見透かされてるみたいな気分ですね・・・わかりました・・・手詰まりです・・・俺はどうしてもあいつを退学にしたくないので・・・喧嘩の理由を話します。」

俺は相生山先輩に神沢と鶴里の件を話した。
悪いな神沢・・・自分のためだと思ってここは許してくれ。

「・・・っていうことなんですよ・・・。」
「・・・素敵。」
「・・・え?」
「素敵!恋って本当に美しいよね!なんだー!そんなことならもっと早く言ってくれたら退学になんてさせなかったのに!」
「え?それじゃあ・・・」
「私がなんとかしてあげましょう!」
「先輩・・・ありがとうございます!」
「恋も素晴らしいけど友情も素敵ねー・・・お姉さんは感動しちゃったよ!」

その後は相生山先輩が学校側に上手いこと言い訳したらしく、色々と苦労したのはなんだったんだろう・・・と思うくらいあっさりと神沢の退学は取り消された。
そして神沢は退学が取り消された翌日から何事もなかったようにいつも通りのテンションで学校に来た。

その日の下校時間。
俺が1人下駄箱で靴を履き替えていると神沢がやってくる。
「コーちゃん、俺が鶴里さん好きなの相生山先輩にバラしたんだって?」
あのバカ生徒会長!何故本人に言うんだよ!
「いや・・・あの・・・それは・・・」
「ありがとね。」
「え?」
「俺のために色々動いてくれて・・・本当に感謝してる。」
「・・・バラして悪かったな。」
「謝ることじゃないよ!むしろなにか恩返ししたいくらいだよ!それじゃ、早く帰らないと親父に怒られるから俺は先を急ぐよ!コーちゃん、またねー!」
神沢は走り去っていった。

「・・・俺も帰るか。」
下駄箱を後にして門へと歩いていると正門に桜山が立っていた。
「あんたが神沢君の退学取り消させたんでしょ?お手柄じゃん。」
「別に特にはなにもしてねーよ。」
「・・・あんた、相生山先輩の家のことバラすとか脅したんじゃないでしょうね。」
「それも考えてたけど、それは失敗したよ。」
「そう・・・まあ、あんたはそんなことできるようなキャラじゃないもんね。」
「・・・お前も俺のことを良い奴だと思いすぎだよ。」
「だ、誰があんたみたいな卑屈人間のこと素敵な人なんて思ってるのよ!」
「そこまでは言ってねーよ。鶴里待ってるんだろ?じゃあ、俺は先行くわ。」


そう言って歩いていく背中を私は見送る。
「・・・本当はあんたと帰りたくて待ってた・・・なんて言えないなー・・・。」
そんな独り言を言いながら私は数メートル後ろを歩きはじめた。
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