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終幕 天上へのお土産
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ぐじゅぐじゅと、粘着質な水音が響く。
前だけはだけた着物から露出した胸板が、じっとりと汗ばんだ背に伸し掛かかっている。布団にうつ伏せる兄様を背後から抱き込むように、かぐやくんはゆるゆると抽送を続けていた。
「温かいですね、兄様は」
「あっ、か、ぐや、もう、赦し……、」
「だめですよ、兄様は穢れていますから。ちゃんと綺麗にしないと、月に上がれません」
「ひっ……!」
「この日のために食事を抜いてきたのです」
────腹が減りました。
くぅ、と響いた腹の音に、兄様の身体が強張る。それを咎めるように、雁首の先端が、ゆるゆるとしこりをこそぐように刺激した。そのしこりは前立腺と呼ばれ、腹に溜まるような快楽は、それを責められたが故のものである。衆道の知識すら無かった兄様は、そんな説明を受ける間も無く暴かれ、体を侵された。
訳もわからないまま、ぬるま湯に浸されるようなもどかしい快感をひたすら与えられ続けて。「こわい、こわい」と童のように泣く兄様を宥めるように、かぐやくんはその筋肉質な下腹部をぐっと指圧した。
「っ、あ、」
「大丈夫です。大丈夫ですからね。それは悦い感覚です。兄様は俺と交わるのが、気持ちよくて仕方が無いのです」
「違……、やめ、やめて、かぐ……」
「嫌と仰るのなら、すぐにやめましょう。ここに俺の子種を注いで、それで終わりです」
彫刻のような真っ白な指の腹が、弄ぶように腹を撫で、軽く指圧し続ける。その度に自身の下腹部から込み上げてくる法悦に、兄様は潤んだ目で喘ぎ続ける他ない。
「だめですよ」
たまらず自身の陰茎に伸びた手を、咎めるように掴まれて。
「後ろだけで悦くなれるようにしましょう」
やはり人外じみた力で押さえつけられたまま、腹の中を擦られ、ほじられる。行き場の無くなった快楽が、体の中を渦のようにのたうち、暴れ回っていた。
「あ、もう、だめ、だめだ、かぐや……!」
「駄目、ではありません。悦い、と言いましょう」
生温い吐息と共に、掠れた声が耳に吹き込まれる。
「……~~~、っ、~~~ァあ~~~…っ、」
溜まりに溜まった快楽は弾け、眼前に火花が散る。びくんびくんと、俎上に上げられた魚のように、白い腹が痙攣する。目を見開いて、声にならない声をあげて。
兄様は初めて、前以外で達した。
収縮する後孔に、蠕動する中。魔羅を締め付ける初物の感覚に、かぐやくんは引き攣った笑みを浮かべた。
「ああ……兄様、兄様。上手に達せましたね」
「あ、ふ……ぅ、」
「お可愛らしいです。兄様」
ず、と、浅いところを引っ掻きながら引き抜かれる陰茎に、力なく喘ぐ。くったりと力の抜けた肢体をひっくり返されて、兄様は虚な目で弟を見上げた。
僅かに赤みの差した目元に、紅を塗ったように真っ赤な唇。湿った前髪の隙間から、恍惚に蕩けた瞳が、爛々と暗闇の中に浮かび上がっていた。寒気を覚えるような美しさだ。ゾッとするような欲火。スルスルと白蛇のように巻きついてきた真っ白な腕に、「なぜ」と譫言のように問いかけた。
「なぜ、こんな…………」
「『なぜ』とは?」
薄ら笑みを佩いたまま、かぐやくんは兄様の首筋に相貌を埋める。
「男同士でまぐわっていることですか?男色家の政治屋はその情交を咎められましたか?それが罷り通る世間であるならば、俺たちの戯れなど些事も些事でしょう。何ら問題はありませんね。兄弟で情を交わした事ですか?兄弟とは俺たちにとって、そのような記号に過ぎません。血は繋がっていないのですから、何ら問題はありませんね。兄様の意思を蔑ろにしていることですか?……ええ、それは申開きの余地もございません。いくらでも謝罪致しましょう」
がり、と。肉を抉るような痛みに顔を歪める。やや於いて首筋に落とされた熱い唇の感触に、兄様は恐る恐るかぐやくんの相貌へと手を掛けた。
「ただ、あなたの愛は、俺を尊重しない」
そしてすぐに後悔した。
もたげられた貌。
「だから俺も、あなたを尊重しない。俺は俺の心の赴くままに、あなたを愛でます」
満月のような黄金色が、ぴかぴか、ぴかぴかと輝いている。闇の向こうから、何か、飢えた獣にでも睨まれているような気になって、兄様の口から引き攣った悲鳴が漏れた。
同時だった。
萎える事もなく質量を増した陰茎が、また熱を以って後孔へと宛がわれる。
「ひ、」
咎める間もなく、内壁を掻き分け這入ってくる熱い肉棒。歓喜に震えた内側が、打ち込まれた熱杭に、歓待するようにむしゃぶりつく。
「囲い、支配し、手籠にしてでも添い遂げるのが俺の愛です」
膝裏を抱え上げられ、腰を突き出すような形のまま真上から中を穿たれる。先刻までのそれとは全く違う。貪り、蹂躙するような律動に、兄様は髪を振り乱して喘いだ。
「俺のことを愛しているのだと言うのなら、」
ぐ、と。
腕を引かれ、一際深いところにそれが嵌り込むのが分かる。
「ご自分よりも、本当に俺が可愛いと仰るのなら」
ぐ、ぐ、ぐ。腰を押し付け合うようにして、亀頭が、奥へ奥へと入ってくる。
「俺の愛に賛同してください」
何かを絶えず小突き、解すような動きに、深層的な恐怖が込み上げてくるようで。
「あ、あ、だめ、だ。来る、なにか、腹……おくに、あ、」
「兄様、兄様。お慕いしております、兄様」
「あ、まって、かぐや、たのむ、おねがいだから、それ以上────!」
「ああ、兄様────」
胎の最奥に、熱い亀頭が嵌まり込む。開いてはならない部分がこじ開けられるような感触に、涙が溢れてくる。
「いれてください」
悩ましげで、気怠げな懇願。
ぐぽ、と。何かが開く音を聞いた。
「~~ぁ、お゛ッぉ゛おおっ?!?!」
眼前に星が散る。甘い痺れが、絶えず尾骶骨から背骨を貫いてはまた駆け上がってくる。高いところから降りられないまま、兄様はぐんと腰を逸らし、獣のような悲鳴をあげた。
ぐぽ、ぐぽっ、ぐぽ。
耳を塞ぎたくなるような音を伴って、激しい抽送が繰り返される。その度に、出っ張った亀頭溝が、弾力のあるひだをこそぐように持っていく。
「~~っぁ、ぐ、~、ひっ、ぎぃっ………!かぐ、かぐや、かぐや……っ!」
「はい、兄様、兄様。かぐやはここにおりますよ」
「やっ、あっ、~~~~ッ、死…………っ、!」
「悦いですか?悦いでしょう?ほら、悦いと言ってください、兄様……っ、」
「悦、いい、からっ………も、ゆる……~~~~あ゛~~~っ……!」
「悦い」と。兄様がそう口にした瞬間。膨張したそれが、胎内で熱く弾けた。
どく、どく、どく、と。遅れて腸の奥に叩きつけられた熱い飛沫に、兄様は赤い舌を突き出して感じ入る。遅れてやってくる、じんわりとした多幸感。
律動が止めど、未だ胎に居座る肉の感触が、脈動に合わせてドクドクと存在を主張していた。
熱い足の指先が、余韻となる快感を拾い上げては、ピンと伸びて弛緩する。
熱い子種が胎の中で泳ぎ回るのを、確かに感じながら。
意思も、願いも、その全てが、温かな法悦に塗りつぶされて行くのを感じていた。
「上手に呑めましたね、兄様」
うっとりと微笑んだまま、かぐやくんは兄様の唇へと齧り付いた。ぶ厚い舌で兄様の口内を好き勝手に蹂躙しながら、甘やかすように緩やかな律動を再開する。
「ん、んん、……っ、かぐ、」
「気持ち良いですか、兄様」
「きもち、い、っ、あ……っ、」
「素直に言えて偉いですね。嬉しいです、兄様」
「っ、ん、ぁん、そこ……っ、ずっと…」
「ここですか?ここでしっかり覚えてくださいね、おれの形」
ちゅこちゅこ、ちゅっちゅと、蕩けた結腸に熱い亀頭が何度も何度も接吻する。精液を塗り込み、自身の形を刻みつけるように、何度も何度も。
その度に、仰け反ってはくぅくぅ切ない声を漏らす喉に、赤い舌を這わせた。
「…………もう、充分ですか?」
「ぁえ、」
「言ったでしょう。『嫌』と仰るならば、子種を一度注いで終わりだと」
白い喉を甘噛みして、しなやかな筋肉がついた腰を引く。
ゆっくりと抜けていく肉棒を惜しむように、みっちりと押し広げられた後孔が絡みついた。
「ゃ、あ」
「よく聞こえませんね」
媚びるような声に、さらに腰を引いて。
「…………っ、」
ぐ、と。
首に回された腕に、二重幅の広い瞳を見開く。
汗ばんだ手でかぐやくんを抱き寄せた兄様は、掠れた声で「かぐや」と懇願した。
「もっと、」
「…………兄様」
「……たり、ない。おれ、まだ腹が寂しくて…………」
────かぐやの子種、もっと注いで?
恥じらいと淫欲に蕩けた黒目が、どろりとたわむ。
自らの下腹部を撫でては子種をねだる声音に、もはや『良き兄』であろうと足掻いた彼の面影は窺えない。
そこに居るのは、快楽に屈服して堕ちきった、一人の雌でしかなかった。
「…………ああ、兄様」
上擦った声を漏らした唇が、わずかに震えては弧を描く。
歓喜と獰猛な情欲を押し殺したようなその表情は、造り物じみた美貌とは不釣り合いな、いびつな形をしていた。
「本当にすべて、頂いてしまっても?」
真っ赤な舌で、ちろと唇を濡らして。
かぐやくんは、あつい身体にまた覆い被さった。
***
ぱちゅん、ぱちゅん。
淫猥な水音と、上擦った嬌声が響く。
激しく良いところをこそがれては、甘やかすように子宮口に鈴口で接吻される。
その度に甘く鳴く声には、組み伏せられたときの反骨精神は跡形も残っていない。
「すき、だいすき」と。ぽってりと赤く吸い上げられた唇が譫言のように繰り返すたびに、かぐやくんは満たされたような笑みを浮かべて、さらに下腹部を熱くして。
「ぁ、かぐ、や、」
詰め込まれた子種でぽっこりと膨れた腹に、腰を押し付けるようにして吐精する。
「ぁ……♡~~~っ、♡♡んぅ~~~~………♡♡♡」
何度目かも分からない種付けに、兄様は幸色に蕩け切った表情で感じ入る。
齧り付くみたいに接吻しては、ぴくぴくと震える身体を、なおも抱き込んだまま中を捏ね回す。
絶頂を迎えてもなお降りることができず、快感から逃れられず。
がりがり、がりがりと畳を引っ掛かく兄様の指先を、かぐやくんは「……来ましたよ」と絡め取った。
「来…?」
「ええ、お迎えがきました。綺麗になりましたね、兄様」
く、と。繋いでない方の手が、兄様の顎先を持ち上げる。
怪しい焦点。光の失せた虚な双眸に、貫くような月光が差す。
大きな大きな満月だった。
何人もの人影が、ゆっくりとこちらへと近付いてくるのが分かる。
「帰りましょう、兄様」なんて。
そんな言葉に、兄様は正気の失せ切った笑みでその足を弟の腰に絡めた。
前だけはだけた着物から露出した胸板が、じっとりと汗ばんだ背に伸し掛かかっている。布団にうつ伏せる兄様を背後から抱き込むように、かぐやくんはゆるゆると抽送を続けていた。
「温かいですね、兄様は」
「あっ、か、ぐや、もう、赦し……、」
「だめですよ、兄様は穢れていますから。ちゃんと綺麗にしないと、月に上がれません」
「ひっ……!」
「この日のために食事を抜いてきたのです」
────腹が減りました。
くぅ、と響いた腹の音に、兄様の身体が強張る。それを咎めるように、雁首の先端が、ゆるゆるとしこりをこそぐように刺激した。そのしこりは前立腺と呼ばれ、腹に溜まるような快楽は、それを責められたが故のものである。衆道の知識すら無かった兄様は、そんな説明を受ける間も無く暴かれ、体を侵された。
訳もわからないまま、ぬるま湯に浸されるようなもどかしい快感をひたすら与えられ続けて。「こわい、こわい」と童のように泣く兄様を宥めるように、かぐやくんはその筋肉質な下腹部をぐっと指圧した。
「っ、あ、」
「大丈夫です。大丈夫ですからね。それは悦い感覚です。兄様は俺と交わるのが、気持ちよくて仕方が無いのです」
「違……、やめ、やめて、かぐ……」
「嫌と仰るのなら、すぐにやめましょう。ここに俺の子種を注いで、それで終わりです」
彫刻のような真っ白な指の腹が、弄ぶように腹を撫で、軽く指圧し続ける。その度に自身の下腹部から込み上げてくる法悦に、兄様は潤んだ目で喘ぎ続ける他ない。
「だめですよ」
たまらず自身の陰茎に伸びた手を、咎めるように掴まれて。
「後ろだけで悦くなれるようにしましょう」
やはり人外じみた力で押さえつけられたまま、腹の中を擦られ、ほじられる。行き場の無くなった快楽が、体の中を渦のようにのたうち、暴れ回っていた。
「あ、もう、だめ、だめだ、かぐや……!」
「駄目、ではありません。悦い、と言いましょう」
生温い吐息と共に、掠れた声が耳に吹き込まれる。
「……~~~、っ、~~~ァあ~~~…っ、」
溜まりに溜まった快楽は弾け、眼前に火花が散る。びくんびくんと、俎上に上げられた魚のように、白い腹が痙攣する。目を見開いて、声にならない声をあげて。
兄様は初めて、前以外で達した。
収縮する後孔に、蠕動する中。魔羅を締め付ける初物の感覚に、かぐやくんは引き攣った笑みを浮かべた。
「ああ……兄様、兄様。上手に達せましたね」
「あ、ふ……ぅ、」
「お可愛らしいです。兄様」
ず、と、浅いところを引っ掻きながら引き抜かれる陰茎に、力なく喘ぐ。くったりと力の抜けた肢体をひっくり返されて、兄様は虚な目で弟を見上げた。
僅かに赤みの差した目元に、紅を塗ったように真っ赤な唇。湿った前髪の隙間から、恍惚に蕩けた瞳が、爛々と暗闇の中に浮かび上がっていた。寒気を覚えるような美しさだ。ゾッとするような欲火。スルスルと白蛇のように巻きついてきた真っ白な腕に、「なぜ」と譫言のように問いかけた。
「なぜ、こんな…………」
「『なぜ』とは?」
薄ら笑みを佩いたまま、かぐやくんは兄様の首筋に相貌を埋める。
「男同士でまぐわっていることですか?男色家の政治屋はその情交を咎められましたか?それが罷り通る世間であるならば、俺たちの戯れなど些事も些事でしょう。何ら問題はありませんね。兄弟で情を交わした事ですか?兄弟とは俺たちにとって、そのような記号に過ぎません。血は繋がっていないのですから、何ら問題はありませんね。兄様の意思を蔑ろにしていることですか?……ええ、それは申開きの余地もございません。いくらでも謝罪致しましょう」
がり、と。肉を抉るような痛みに顔を歪める。やや於いて首筋に落とされた熱い唇の感触に、兄様は恐る恐るかぐやくんの相貌へと手を掛けた。
「ただ、あなたの愛は、俺を尊重しない」
そしてすぐに後悔した。
もたげられた貌。
「だから俺も、あなたを尊重しない。俺は俺の心の赴くままに、あなたを愛でます」
満月のような黄金色が、ぴかぴか、ぴかぴかと輝いている。闇の向こうから、何か、飢えた獣にでも睨まれているような気になって、兄様の口から引き攣った悲鳴が漏れた。
同時だった。
萎える事もなく質量を増した陰茎が、また熱を以って後孔へと宛がわれる。
「ひ、」
咎める間もなく、内壁を掻き分け這入ってくる熱い肉棒。歓喜に震えた内側が、打ち込まれた熱杭に、歓待するようにむしゃぶりつく。
「囲い、支配し、手籠にしてでも添い遂げるのが俺の愛です」
膝裏を抱え上げられ、腰を突き出すような形のまま真上から中を穿たれる。先刻までのそれとは全く違う。貪り、蹂躙するような律動に、兄様は髪を振り乱して喘いだ。
「俺のことを愛しているのだと言うのなら、」
ぐ、と。
腕を引かれ、一際深いところにそれが嵌り込むのが分かる。
「ご自分よりも、本当に俺が可愛いと仰るのなら」
ぐ、ぐ、ぐ。腰を押し付け合うようにして、亀頭が、奥へ奥へと入ってくる。
「俺の愛に賛同してください」
何かを絶えず小突き、解すような動きに、深層的な恐怖が込み上げてくるようで。
「あ、あ、だめ、だ。来る、なにか、腹……おくに、あ、」
「兄様、兄様。お慕いしております、兄様」
「あ、まって、かぐや、たのむ、おねがいだから、それ以上────!」
「ああ、兄様────」
胎の最奥に、熱い亀頭が嵌まり込む。開いてはならない部分がこじ開けられるような感触に、涙が溢れてくる。
「いれてください」
悩ましげで、気怠げな懇願。
ぐぽ、と。何かが開く音を聞いた。
「~~ぁ、お゛ッぉ゛おおっ?!?!」
眼前に星が散る。甘い痺れが、絶えず尾骶骨から背骨を貫いてはまた駆け上がってくる。高いところから降りられないまま、兄様はぐんと腰を逸らし、獣のような悲鳴をあげた。
ぐぽ、ぐぽっ、ぐぽ。
耳を塞ぎたくなるような音を伴って、激しい抽送が繰り返される。その度に、出っ張った亀頭溝が、弾力のあるひだをこそぐように持っていく。
「~~っぁ、ぐ、~、ひっ、ぎぃっ………!かぐ、かぐや、かぐや……っ!」
「はい、兄様、兄様。かぐやはここにおりますよ」
「やっ、あっ、~~~~ッ、死…………っ、!」
「悦いですか?悦いでしょう?ほら、悦いと言ってください、兄様……っ、」
「悦、いい、からっ………も、ゆる……~~~~あ゛~~~っ……!」
「悦い」と。兄様がそう口にした瞬間。膨張したそれが、胎内で熱く弾けた。
どく、どく、どく、と。遅れて腸の奥に叩きつけられた熱い飛沫に、兄様は赤い舌を突き出して感じ入る。遅れてやってくる、じんわりとした多幸感。
律動が止めど、未だ胎に居座る肉の感触が、脈動に合わせてドクドクと存在を主張していた。
熱い足の指先が、余韻となる快感を拾い上げては、ピンと伸びて弛緩する。
熱い子種が胎の中で泳ぎ回るのを、確かに感じながら。
意思も、願いも、その全てが、温かな法悦に塗りつぶされて行くのを感じていた。
「上手に呑めましたね、兄様」
うっとりと微笑んだまま、かぐやくんは兄様の唇へと齧り付いた。ぶ厚い舌で兄様の口内を好き勝手に蹂躙しながら、甘やかすように緩やかな律動を再開する。
「ん、んん、……っ、かぐ、」
「気持ち良いですか、兄様」
「きもち、い、っ、あ……っ、」
「素直に言えて偉いですね。嬉しいです、兄様」
「っ、ん、ぁん、そこ……っ、ずっと…」
「ここですか?ここでしっかり覚えてくださいね、おれの形」
ちゅこちゅこ、ちゅっちゅと、蕩けた結腸に熱い亀頭が何度も何度も接吻する。精液を塗り込み、自身の形を刻みつけるように、何度も何度も。
その度に、仰け反ってはくぅくぅ切ない声を漏らす喉に、赤い舌を這わせた。
「…………もう、充分ですか?」
「ぁえ、」
「言ったでしょう。『嫌』と仰るならば、子種を一度注いで終わりだと」
白い喉を甘噛みして、しなやかな筋肉がついた腰を引く。
ゆっくりと抜けていく肉棒を惜しむように、みっちりと押し広げられた後孔が絡みついた。
「ゃ、あ」
「よく聞こえませんね」
媚びるような声に、さらに腰を引いて。
「…………っ、」
ぐ、と。
首に回された腕に、二重幅の広い瞳を見開く。
汗ばんだ手でかぐやくんを抱き寄せた兄様は、掠れた声で「かぐや」と懇願した。
「もっと、」
「…………兄様」
「……たり、ない。おれ、まだ腹が寂しくて…………」
────かぐやの子種、もっと注いで?
恥じらいと淫欲に蕩けた黒目が、どろりとたわむ。
自らの下腹部を撫でては子種をねだる声音に、もはや『良き兄』であろうと足掻いた彼の面影は窺えない。
そこに居るのは、快楽に屈服して堕ちきった、一人の雌でしかなかった。
「…………ああ、兄様」
上擦った声を漏らした唇が、わずかに震えては弧を描く。
歓喜と獰猛な情欲を押し殺したようなその表情は、造り物じみた美貌とは不釣り合いな、いびつな形をしていた。
「本当にすべて、頂いてしまっても?」
真っ赤な舌で、ちろと唇を濡らして。
かぐやくんは、あつい身体にまた覆い被さった。
***
ぱちゅん、ぱちゅん。
淫猥な水音と、上擦った嬌声が響く。
激しく良いところをこそがれては、甘やかすように子宮口に鈴口で接吻される。
その度に甘く鳴く声には、組み伏せられたときの反骨精神は跡形も残っていない。
「すき、だいすき」と。ぽってりと赤く吸い上げられた唇が譫言のように繰り返すたびに、かぐやくんは満たされたような笑みを浮かべて、さらに下腹部を熱くして。
「ぁ、かぐ、や、」
詰め込まれた子種でぽっこりと膨れた腹に、腰を押し付けるようにして吐精する。
「ぁ……♡~~~っ、♡♡んぅ~~~~………♡♡♡」
何度目かも分からない種付けに、兄様は幸色に蕩け切った表情で感じ入る。
齧り付くみたいに接吻しては、ぴくぴくと震える身体を、なおも抱き込んだまま中を捏ね回す。
絶頂を迎えてもなお降りることができず、快感から逃れられず。
がりがり、がりがりと畳を引っ掛かく兄様の指先を、かぐやくんは「……来ましたよ」と絡め取った。
「来…?」
「ええ、お迎えがきました。綺麗になりましたね、兄様」
く、と。繋いでない方の手が、兄様の顎先を持ち上げる。
怪しい焦点。光の失せた虚な双眸に、貫くような月光が差す。
大きな大きな満月だった。
何人もの人影が、ゆっくりとこちらへと近付いてくるのが分かる。
「帰りましょう、兄様」なんて。
そんな言葉に、兄様は正気の失せ切った笑みでその足を弟の腰に絡めた。
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