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とりあえずハッピー(個人差有)エンド
⭐︎ルート分岐
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外界と室内を隔てるような分厚いカーテンの隙間から、朝日が差し込んで、西日が差し込んで。
月光が差し込んで。部屋が灰色になって、赤くなって、黒くなって。
灰、赤、黒、灰、赤、黒。
何度朝が来て夜が過ぎたのか、春近には分からなかった。
ただ何度も何度も朝が来て夜が過ぎて、その間ずっと自分が幸福だったことは理解できた。
狭いベッドの中で好きな人と抱き合って、互いのキスで目を覚ます。それだけが、今の春近にとっての幸福の全てだった。
春近が目を覚ましたとき、部屋は灰色だった。
うっすらと開けた視界に、次に映り込んだのは目に眩しい金髪。
伏せられた厚い睫毛は、ピクリとも動かない。
彫刻のように計算し尽くされた造形の寝顔は、いっそ寒気すら覚えるほどの美しさで。
睫毛が触れ合うような距離ですら、毛穴一つ見えない白磁の肌。顔色の悪さも相まって、よくできたビスクドールのようだった。
無性に、眼前の恋人が息をしているのか確かめたくなって、重怠い右手を持ち上げる。
「…………」
はたと、光の頬に触れるか触れないかの位置で手が止まった。
どこかぼんやりとした鳶色の瞳が、光の後ろ──部屋の入り扉へと向けられる。ゆったりと、1,2度瞬きして、春近は光を起こさないよう、気遣いながら身体を起こした。
「……ぁ、」
が、直ぐにその身体はベッドに逆戻りする。
目を瞑ったままの光の手が、春近の腕をがっしりと掴んでいた。
瞬きする間もなく、腕の中に春近の肢体を閉じ込め、挟み込むように長い脚を絡める。
ぎゅうぎゅうと春近の身体を向き合うように抱きしめながら、「はるちかぁ」と擦れた声を漏らした。
昨晩念入りに清めらえた身体からは、石鹸とシャンプーの香りがする。光の体臭と混じりあったフローラルな香りに包まれるだけで、春近の身体は僅かに熱を持つ。
「ひ、ひかる……、」
「どこいくの?」
厚い手のひらが、つうと春近の背筋を這っては下穿きの内側へと潜り込んだ。
小ぶりな尻を器用に片手で開いて、その奥の秘所を探り当ててはくにくにと指先で弄ぶ。
昨日散々耕され、柔らかく蕩けたナカは、くぷぅ♡と、歓迎するように光の指先を呑み込んだ。
「ぁ、♡あ、」
「外、出たい?」
恍惚の表情で喘ぐ春近の耳元に、ぽそと囁く。
くち♡くちゅ♡とぬかるんだナカを掻き回すたびに身を震わせる春近に、もう一度「はるちか」と目を細め。春近が焦ったように首を横に振ったので、褒めるようにしこりを撫でてあげた。
「ちが、ドア、カリカリって……っ、♡♡半ペソが、ぁ♡」
「半ペソ?」
ぐにぐに後孔を愛撫していた手を止めて、首を傾げる。
意識を反らせば、確かに扉を引っ搔くような音が聞こえる。
あとは、オ゛ァ~~…という悲しげな鳴き声も。
奥に誘いこむように締め付けてくる肉筒から指を引き抜いて、切なげに鳴く春近の口へと軽く唇を落とした。
とろんと霞がかったブラウンの瞳に、にっこりと微笑みかけては、ゆっくりと身体を起こして。
「半ペソ、起こしに来てくれたの」
ノブを捻ると同時に、隙間からヌルリと入り込んできた猫型怪人を抱き上げる。
「春近にも顔見せてあげて……って。ちょっと痩せたか?」
「ァウン、ゴロニャゴ、ァ゛オ~~~」
「何……」
短い前足をばたつかせながら何かを訴える半ペソに、光は徐々に表情を曇らせた。
「……………………光?」
首を傾げる春近に、返事の代わりに半ペソを渡す。
無造作にスマホを持ち上げ、ウンともスンとも言わないその体たらくに舌打ち。枕元の充電器に繋いで、食い入るように液晶を見詰めた。
「春近」
そして、数分後にようやく名前を呼ばれ、春近は半ペソの顎下を撫でていた手を止める。
「春近は、おれのこと大事?」
視線を手元のスマホに落としたまま投げかけられた問いに、春近は頷く。
「おれのことだけが大事?」
「…………?」
「おれはねぇ、春近だけが大事。……春近は?」
「え、」
緩慢な所作でスマホを置いて。
ぎし、とスプリングを軋ませながら、這うような姿勢で春近の頬へと手を伸ばす。
「春近も、おれだけ?おれだけで良い?おれだけが大事?」
スルと頬を撫でる指先の感触に、春近の思考が濁っていく。深い赤色に、吸い込まれるような錯覚を覚えながら。
「お、れは、…………痛っ!」
指先に走った鋭い痛みに、頭の中のモヤが霧散する。
涙目で視線を落とせば、半ペソが指先にガジガジ歯を立てていて。
「ひ、光も、大事だけど。光が一番大事、だけど」
言葉を紡ぐごとに、赤色がじわじわと深みを増す。
蛇に睨まれ、じわじわと締め上げられていくような圧迫感を覚えながら。それでも春近は、光の瞳を見据えながら、震える唇を開いた。
「大事な物が、他にもあるよ」
「…………」
「……家族とか……それはもちろんだけど。おれ、最近学校も楽しいんだ。緋色くんとか、山田とか。クラスのみんなとかとも、やっと仲良くなれてきて、」
「…………そう」
ややおいて、先に視線を逸らしたのは光の方だった。
春近の頬に添えていた手を、だらりと下げる。
伏せられた瞳の温度は平坦だったけれど、どこか哀愁を孕んでいるように見えた。
「春近」
春近の言葉を遮って、光はゆっくりと身を起こす。
「すこし、外に出てくるね。仕事をサボり過ぎた」
月光が差し込んで。部屋が灰色になって、赤くなって、黒くなって。
灰、赤、黒、灰、赤、黒。
何度朝が来て夜が過ぎたのか、春近には分からなかった。
ただ何度も何度も朝が来て夜が過ぎて、その間ずっと自分が幸福だったことは理解できた。
狭いベッドの中で好きな人と抱き合って、互いのキスで目を覚ます。それだけが、今の春近にとっての幸福の全てだった。
春近が目を覚ましたとき、部屋は灰色だった。
うっすらと開けた視界に、次に映り込んだのは目に眩しい金髪。
伏せられた厚い睫毛は、ピクリとも動かない。
彫刻のように計算し尽くされた造形の寝顔は、いっそ寒気すら覚えるほどの美しさで。
睫毛が触れ合うような距離ですら、毛穴一つ見えない白磁の肌。顔色の悪さも相まって、よくできたビスクドールのようだった。
無性に、眼前の恋人が息をしているのか確かめたくなって、重怠い右手を持ち上げる。
「…………」
はたと、光の頬に触れるか触れないかの位置で手が止まった。
どこかぼんやりとした鳶色の瞳が、光の後ろ──部屋の入り扉へと向けられる。ゆったりと、1,2度瞬きして、春近は光を起こさないよう、気遣いながら身体を起こした。
「……ぁ、」
が、直ぐにその身体はベッドに逆戻りする。
目を瞑ったままの光の手が、春近の腕をがっしりと掴んでいた。
瞬きする間もなく、腕の中に春近の肢体を閉じ込め、挟み込むように長い脚を絡める。
ぎゅうぎゅうと春近の身体を向き合うように抱きしめながら、「はるちかぁ」と擦れた声を漏らした。
昨晩念入りに清めらえた身体からは、石鹸とシャンプーの香りがする。光の体臭と混じりあったフローラルな香りに包まれるだけで、春近の身体は僅かに熱を持つ。
「ひ、ひかる……、」
「どこいくの?」
厚い手のひらが、つうと春近の背筋を這っては下穿きの内側へと潜り込んだ。
小ぶりな尻を器用に片手で開いて、その奥の秘所を探り当ててはくにくにと指先で弄ぶ。
昨日散々耕され、柔らかく蕩けたナカは、くぷぅ♡と、歓迎するように光の指先を呑み込んだ。
「ぁ、♡あ、」
「外、出たい?」
恍惚の表情で喘ぐ春近の耳元に、ぽそと囁く。
くち♡くちゅ♡とぬかるんだナカを掻き回すたびに身を震わせる春近に、もう一度「はるちか」と目を細め。春近が焦ったように首を横に振ったので、褒めるようにしこりを撫でてあげた。
「ちが、ドア、カリカリって……っ、♡♡半ペソが、ぁ♡」
「半ペソ?」
ぐにぐに後孔を愛撫していた手を止めて、首を傾げる。
意識を反らせば、確かに扉を引っ搔くような音が聞こえる。
あとは、オ゛ァ~~…という悲しげな鳴き声も。
奥に誘いこむように締め付けてくる肉筒から指を引き抜いて、切なげに鳴く春近の口へと軽く唇を落とした。
とろんと霞がかったブラウンの瞳に、にっこりと微笑みかけては、ゆっくりと身体を起こして。
「半ペソ、起こしに来てくれたの」
ノブを捻ると同時に、隙間からヌルリと入り込んできた猫型怪人を抱き上げる。
「春近にも顔見せてあげて……って。ちょっと痩せたか?」
「ァウン、ゴロニャゴ、ァ゛オ~~~」
「何……」
短い前足をばたつかせながら何かを訴える半ペソに、光は徐々に表情を曇らせた。
「……………………光?」
首を傾げる春近に、返事の代わりに半ペソを渡す。
無造作にスマホを持ち上げ、ウンともスンとも言わないその体たらくに舌打ち。枕元の充電器に繋いで、食い入るように液晶を見詰めた。
「春近」
そして、数分後にようやく名前を呼ばれ、春近は半ペソの顎下を撫でていた手を止める。
「春近は、おれのこと大事?」
視線を手元のスマホに落としたまま投げかけられた問いに、春近は頷く。
「おれのことだけが大事?」
「…………?」
「おれはねぇ、春近だけが大事。……春近は?」
「え、」
緩慢な所作でスマホを置いて。
ぎし、とスプリングを軋ませながら、這うような姿勢で春近の頬へと手を伸ばす。
「春近も、おれだけ?おれだけで良い?おれだけが大事?」
スルと頬を撫でる指先の感触に、春近の思考が濁っていく。深い赤色に、吸い込まれるような錯覚を覚えながら。
「お、れは、…………痛っ!」
指先に走った鋭い痛みに、頭の中のモヤが霧散する。
涙目で視線を落とせば、半ペソが指先にガジガジ歯を立てていて。
「ひ、光も、大事だけど。光が一番大事、だけど」
言葉を紡ぐごとに、赤色がじわじわと深みを増す。
蛇に睨まれ、じわじわと締め上げられていくような圧迫感を覚えながら。それでも春近は、光の瞳を見据えながら、震える唇を開いた。
「大事な物が、他にもあるよ」
「…………」
「……家族とか……それはもちろんだけど。おれ、最近学校も楽しいんだ。緋色くんとか、山田とか。クラスのみんなとかとも、やっと仲良くなれてきて、」
「…………そう」
ややおいて、先に視線を逸らしたのは光の方だった。
春近の頬に添えていた手を、だらりと下げる。
伏せられた瞳の温度は平坦だったけれど、どこか哀愁を孕んでいるように見えた。
「春近」
春近の言葉を遮って、光はゆっくりと身を起こす。
「すこし、外に出てくるね。仕事をサボり過ぎた」
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