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Ⅲ、二人の皇子
36、モンスター三体とバトル!
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「こいつぁ、さっそくエドモン殿下の依頼達成じゃねえか?」
「行ってみましょう! ――空揚翼!」
レモは俺の腕からするりと抜け出すと、下へ向かって舞い降りてゆく。
魔石救世アカデミーに潜入――と言うには真正面から乗り込み過ぎだが、俺たちは第二皇子エドモンから「疑惑のアカデミー本部を訪れ、危険な魔獣を作っている証拠をつかんで来い」という命を受けていた。
「よっしゃー、ビンゴ!」
下からレモの元気な声が聞こえる。
ユリアを抱えたまま急降下した俺の目に映ったのは、巨大な甲殻類。子供の身長くらいあるはさみを振り上げて、壁をのぼってくる。
「おっきなロブスター! 食べごたえありそう!!」
俺の腕の中でユリアが歓声を上げると同時に、
「烈風斬!」
レモが風の術で斬りかかる。
カンッ
「はじかれた!?」
レモが驚愕の声を上げ、俺とユリアの近くまで浮上する。
「凍れる刃よ!」
続いて俺が攻撃するが――
ガッ!
「受け止めやがった!」
なんつー硬度と反射速度だ。それなら――
「凍れる刃よ、金剛石の如き硬質となりて、我が敵影貫きたまえ!」
なおも迫りくる甲殻類系モンスターに、ダイヤモンド硬度の刃を落とす。
ザクッ!
「すごいわ、ジュキ! はさみを一本切り落とした!」
「いや、頭部をねらったんだが――」
防がれたのだ。
ザワザワザワ……
下の方から、風に揺れる草木のような音が聞こえてきた。
「まだ何かいるのか? ――光明」
光魔法を下に落っことすと――
「げっ」
闇の底にうごめく二体のモンスター。
「うわぁ……」
レモが身震いしつつ、
「あれ、食屍鬼と―― 食虫植物!?」
「――の、巨大化したやつみてぇだな。だが今はこっちだ。――金剛石の如き凍れる刃よ!」
またも、よじ登ってきた甲殻類をねらう。
ザシュッ!
「これではさみの脅威は去ったな。次こそ頭部を――」
「ユリアもロブスター、さばきますっ!」
ごぎゃぐしゃぁっ!!
怪力戦斧一撃の前に、ロブスターの頭部ははじけ飛んだ!
ザワザワッ――
落下するロブスターの真下に移動する食虫植物。
ぼちゃっ
大きく広げた花弁の中心に、ロブスターの巨体が落下した。
「わたしのロブスターがお花さんに食べられちゃうぅ!」
花弁から染み出る粘着質な液体にからめとられ、ロブスターの殻が溶かされてゆく。
「ユリア、今はあきらめな。この戦いが終わったら、師匠にロブスターごちそうしてもらおう。次の敵は食屍鬼だ!」
ゾンビ化したオーガのような黒い影が、壁をよじ登ってくる。
「迷える魂よ、汝を地上に留める柵今解かれ――」
レモが呪文を唱えているあいだに、
「水よ、この者を包みたまえ!」
首から上を大きな水滴で覆って窒息させようとするが、そもそも息をしていないのか、苦しみを感じないのか、変わらぬ速度で這い上がってくる。
「――遥かなる空へ還りたまえ。死霊還天聖光!」
レモの聖魔法が完成した! 神聖な白い光が、暗い地下室を満たしてゆく。
「グワ、アアァァア、ァァァ……」
のどがきしむような不気味な断末魔の叫びとともに、食屍鬼は解け消えた。
カランコロンッ
石の床に魔石の落ちた音がする。
「残るは食虫――、食人植物だけね!」
「ちょっと待て」
俺はやる気満々なレモを止めた。
「モンスター少なくとも一匹は凍らせて、証拠に持って帰るんだろ?」
「そ、そうだったわね……。ザコばっかだからつい倒しちゃったじゃないの」
オレリアンは俺たち三人を眠らせて地下に落とす作戦だったから、彼らが持つ最強のモンスターを用意したわけではないのだろう。甲殻類系モンスター、食屍鬼、食人花――どれをとっても人を食らうことを主眼に置いて選んだふしがある。
「それじゃ―― 水よ、かの者包みて凍てつきたまえ!」
ロブスターの消化に忙しい食人花は、一瞬で凍りついた。
「降りるぜ!」
三人シュタッと石床に着地し――
「ん? これ、石畳のあいだから生えてんのか」
どでかい食人花を持ち上げようとした俺、腕より太い茎が足元に埋まっていることに気付く。
「ぃよっと―― 抜けねえな……」
「う~ん! 抜けないわね」
レモと二人で協力しても、びくともしない。
「わたしに任せて!」
ユリアが進み出た。
「う~~~~~んしょ!」
ゴガァッ!
「うきゃあ!」
数枚の石畳がひっくり返ると同時に、ユリアもしりもちをついた。その両腕には凍った食人花。根っこが抱くのは無数の魔石。
「ちょっとジュキ、水が――」
「やべ。レモ、飛べ!」
俺もユリアを抱えて羽ばたく。
「地下水脈まで根っこが伸びてたのか!?」
煙突状の空間を上へと逃げる。
「ユリア、体重増えたか?」
「違うよっ! お花の根っこに魔石がいっぱい、くっついてるの!」
あ。そうか。
「しかもこの魔石、毒でも出してるみたいにくさいよ…… 頭がだんだんクラクラ……」
「ラピースラの作った怪しい魔石なんだわ。ユリア、大丈夫!?」
レモが上から声をかけるが返事がない。
「水よ、刃となりて根を斬り落とせ!」
「清浄聖光!」
─ * ─
ユリアの運命や如何に!?
こいつがピンチになる未来が見えないとか言わずに、作品フォローして次回をお待ちください!
「行ってみましょう! ――空揚翼!」
レモは俺の腕からするりと抜け出すと、下へ向かって舞い降りてゆく。
魔石救世アカデミーに潜入――と言うには真正面から乗り込み過ぎだが、俺たちは第二皇子エドモンから「疑惑のアカデミー本部を訪れ、危険な魔獣を作っている証拠をつかんで来い」という命を受けていた。
「よっしゃー、ビンゴ!」
下からレモの元気な声が聞こえる。
ユリアを抱えたまま急降下した俺の目に映ったのは、巨大な甲殻類。子供の身長くらいあるはさみを振り上げて、壁をのぼってくる。
「おっきなロブスター! 食べごたえありそう!!」
俺の腕の中でユリアが歓声を上げると同時に、
「烈風斬!」
レモが風の術で斬りかかる。
カンッ
「はじかれた!?」
レモが驚愕の声を上げ、俺とユリアの近くまで浮上する。
「凍れる刃よ!」
続いて俺が攻撃するが――
ガッ!
「受け止めやがった!」
なんつー硬度と反射速度だ。それなら――
「凍れる刃よ、金剛石の如き硬質となりて、我が敵影貫きたまえ!」
なおも迫りくる甲殻類系モンスターに、ダイヤモンド硬度の刃を落とす。
ザクッ!
「すごいわ、ジュキ! はさみを一本切り落とした!」
「いや、頭部をねらったんだが――」
防がれたのだ。
ザワザワザワ……
下の方から、風に揺れる草木のような音が聞こえてきた。
「まだ何かいるのか? ――光明」
光魔法を下に落っことすと――
「げっ」
闇の底にうごめく二体のモンスター。
「うわぁ……」
レモが身震いしつつ、
「あれ、食屍鬼と―― 食虫植物!?」
「――の、巨大化したやつみてぇだな。だが今はこっちだ。――金剛石の如き凍れる刃よ!」
またも、よじ登ってきた甲殻類をねらう。
ザシュッ!
「これではさみの脅威は去ったな。次こそ頭部を――」
「ユリアもロブスター、さばきますっ!」
ごぎゃぐしゃぁっ!!
怪力戦斧一撃の前に、ロブスターの頭部ははじけ飛んだ!
ザワザワッ――
落下するロブスターの真下に移動する食虫植物。
ぼちゃっ
大きく広げた花弁の中心に、ロブスターの巨体が落下した。
「わたしのロブスターがお花さんに食べられちゃうぅ!」
花弁から染み出る粘着質な液体にからめとられ、ロブスターの殻が溶かされてゆく。
「ユリア、今はあきらめな。この戦いが終わったら、師匠にロブスターごちそうしてもらおう。次の敵は食屍鬼だ!」
ゾンビ化したオーガのような黒い影が、壁をよじ登ってくる。
「迷える魂よ、汝を地上に留める柵今解かれ――」
レモが呪文を唱えているあいだに、
「水よ、この者を包みたまえ!」
首から上を大きな水滴で覆って窒息させようとするが、そもそも息をしていないのか、苦しみを感じないのか、変わらぬ速度で這い上がってくる。
「――遥かなる空へ還りたまえ。死霊還天聖光!」
レモの聖魔法が完成した! 神聖な白い光が、暗い地下室を満たしてゆく。
「グワ、アアァァア、ァァァ……」
のどがきしむような不気味な断末魔の叫びとともに、食屍鬼は解け消えた。
カランコロンッ
石の床に魔石の落ちた音がする。
「残るは食虫――、食人植物だけね!」
「ちょっと待て」
俺はやる気満々なレモを止めた。
「モンスター少なくとも一匹は凍らせて、証拠に持って帰るんだろ?」
「そ、そうだったわね……。ザコばっかだからつい倒しちゃったじゃないの」
オレリアンは俺たち三人を眠らせて地下に落とす作戦だったから、彼らが持つ最強のモンスターを用意したわけではないのだろう。甲殻類系モンスター、食屍鬼、食人花――どれをとっても人を食らうことを主眼に置いて選んだふしがある。
「それじゃ―― 水よ、かの者包みて凍てつきたまえ!」
ロブスターの消化に忙しい食人花は、一瞬で凍りついた。
「降りるぜ!」
三人シュタッと石床に着地し――
「ん? これ、石畳のあいだから生えてんのか」
どでかい食人花を持ち上げようとした俺、腕より太い茎が足元に埋まっていることに気付く。
「ぃよっと―― 抜けねえな……」
「う~ん! 抜けないわね」
レモと二人で協力しても、びくともしない。
「わたしに任せて!」
ユリアが進み出た。
「う~~~~~んしょ!」
ゴガァッ!
「うきゃあ!」
数枚の石畳がひっくり返ると同時に、ユリアもしりもちをついた。その両腕には凍った食人花。根っこが抱くのは無数の魔石。
「ちょっとジュキ、水が――」
「やべ。レモ、飛べ!」
俺もユリアを抱えて羽ばたく。
「地下水脈まで根っこが伸びてたのか!?」
煙突状の空間を上へと逃げる。
「ユリア、体重増えたか?」
「違うよっ! お花の根っこに魔石がいっぱい、くっついてるの!」
あ。そうか。
「しかもこの魔石、毒でも出してるみたいにくさいよ…… 頭がだんだんクラクラ……」
「ラピースラの作った怪しい魔石なんだわ。ユリア、大丈夫!?」
レモが上から声をかけるが返事がない。
「水よ、刃となりて根を斬り落とせ!」
「清浄聖光!」
─ * ─
ユリアの運命や如何に!?
こいつがピンチになる未来が見えないとか言わずに、作品フォローして次回をお待ちください!
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