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二人は将来を誓い合う
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数日後、俺の寝起きする「連合同盟官邸」の表がにわかに騒がしくなった。
あの日以来、俺は水晶玉に布をかぶせて使わないようにしていた。気持が落ち着くまで、彼女を見るのはやめるつもりだった。だって大好きなレイチェルと生で会ってしゃべった刺激が、あまりに強すぎたから――
「開けて下さいなー 戻りましたわー」
どこからともなく、愛する人の声が聞こえる。幻聴か?
「ジュリアン様ー、いらっしゃらないのですか?」
「おかしいなぁ、いつもこの時間はいらっしゃるんだが」
幻聴に誰かが返事をしている。――てことは幻聴じゃない!?
勢いよく執務机から立ち上がって、俺は窓際に走った。
「レイチェル!?」
見下ろすと彼女が玄関前に立っていた! 横には馬車と車夫の姿。
ドタバタと階段を駆け下りて玄関ホールに降り立つと、少し息を整えてから扉を開けた。
「な、なんで、またここへ――?」
息を整えたはずが、うまく言葉が出てこない。
レイチェルは少し困ったようにほほ笑んで、
「いけなかったでしょうか?」
「そんなわけない! でも君は自分の国に帰ったのに――」
「わたくしは親元に居場所なんてないのです」
「うん、それは知って――」
俺は二の句を飲み込んだ。間違っても水晶玉でのぞき続けた危ない男だとは思われたくない。
レイチェルはちょっと首をかしげたが、
「次期国王には処刑された国王陛下のいとこである女公爵様が即位されますし、聖女は妹のクロエが務めますの」
あの妹が、神殿にほとんど幽閉されて生きて行けるのだろうか? 派手なドレスを見せる相手もおらず、一生舞踏会にも出られない日々だ。訊いてみたいが、俺がクロエを知っているわけはないのでやめておく。
「というわけで、わたくしには帰る場所がないのです」
「君の家はここだ」
俺は即答していた。
「俺が連合同盟の盟主を辞めたときには、一緒に俺の故郷に帰ろう。そこに二人で暮らす家を建てるから」
レイチェルはうふっとかわいらしく笑って、いたずらっぽい上目づかいで俺に尋ねた。
「それはプロポーズですか?」
し、しまったぁぁぁっ! 俺にとっては十年来の恋だが、レイチェルにとっては数日前会って話しただけの他人じゃないか! しかもほとんど男子禁制で育てられた清らかなレイチェルにとって、いきなりプロポーズなんて恐怖体験では!?
「す、すまん…… 忘れてくれ」
俺は両手で顔を覆って、なんとか声を絞り出した。
「忘れたくありませんわ!」
「え……」
「あなたは初めて会ったときから、十年来の親友のようにわたくしを理解してくださいました。そんな方、きっとどこにもいらっしゃらないもの!」
そりゃあ君を四六時中のぞいてる危ない男なんて、俺以外にはいないだろうなぁ。
心優しいレイチェルは、俺のプロポーズを受け入れてくれた。
「――というわけで、俺たちは結ばれることになった」
各種族の族長たちに報告すると、
「我々亜人の地域にいてくださるのですか?」
「それは助かる!」
「我々は魔力量が多いとはいえ、聖魔法は苦手でして……」
「レイチェルさんがいてくれれば医者いらずですな!」
みんな手放しで喜んでくれた。俺の恋が実ったことについてではなく、偉大な聖女であるレイチェルが我々の土地に住んでくれることに対して。
「今後も私の聖魔力を役立てられるのね! とっても嬉しいわ」
それが彼女の本心であることは良く分かっている。だが、言っておかねばならない。
「レイチェル、俺は君に聖女の力があろうとなかろうと、君が好きだ!」
見る見るうちにレイチェルの頬が朱く染まってゆく。いとおしい彼女を抱きしめようとしたとき――
「ジュリアン、そういうの二人きりのときにしてくれよ」
ルーピ氏がニヤニヤしているのに気が付いた。
レイチェルは控えめに目をそらしながら、
「あの、ジュリアン? 私は異常に聖魔力が多いのですが、そこは大丈夫でしょうか……?」
「ん? 人族の異常値って俺たち竜人族なら普通だよ?」
獣人の皆さんもうなずいている。
「はっ、そうですわね! 私、ここでは化け物じゃないんだわ!」
「当たり前じゃないか。多種族連合ではみんな違うのが当たり前さ!」
「素敵! ここが私の居場所になるのね!」
俺の首に飛びついて来たレイチェルを、俺はぎゅっと抱きしめた。
「そうさ。いつだって俺の腕の中が君の居場所だよ!」
あの日以来、俺は水晶玉に布をかぶせて使わないようにしていた。気持が落ち着くまで、彼女を見るのはやめるつもりだった。だって大好きなレイチェルと生で会ってしゃべった刺激が、あまりに強すぎたから――
「開けて下さいなー 戻りましたわー」
どこからともなく、愛する人の声が聞こえる。幻聴か?
「ジュリアン様ー、いらっしゃらないのですか?」
「おかしいなぁ、いつもこの時間はいらっしゃるんだが」
幻聴に誰かが返事をしている。――てことは幻聴じゃない!?
勢いよく執務机から立ち上がって、俺は窓際に走った。
「レイチェル!?」
見下ろすと彼女が玄関前に立っていた! 横には馬車と車夫の姿。
ドタバタと階段を駆け下りて玄関ホールに降り立つと、少し息を整えてから扉を開けた。
「な、なんで、またここへ――?」
息を整えたはずが、うまく言葉が出てこない。
レイチェルは少し困ったようにほほ笑んで、
「いけなかったでしょうか?」
「そんなわけない! でも君は自分の国に帰ったのに――」
「わたくしは親元に居場所なんてないのです」
「うん、それは知って――」
俺は二の句を飲み込んだ。間違っても水晶玉でのぞき続けた危ない男だとは思われたくない。
レイチェルはちょっと首をかしげたが、
「次期国王には処刑された国王陛下のいとこである女公爵様が即位されますし、聖女は妹のクロエが務めますの」
あの妹が、神殿にほとんど幽閉されて生きて行けるのだろうか? 派手なドレスを見せる相手もおらず、一生舞踏会にも出られない日々だ。訊いてみたいが、俺がクロエを知っているわけはないのでやめておく。
「というわけで、わたくしには帰る場所がないのです」
「君の家はここだ」
俺は即答していた。
「俺が連合同盟の盟主を辞めたときには、一緒に俺の故郷に帰ろう。そこに二人で暮らす家を建てるから」
レイチェルはうふっとかわいらしく笑って、いたずらっぽい上目づかいで俺に尋ねた。
「それはプロポーズですか?」
し、しまったぁぁぁっ! 俺にとっては十年来の恋だが、レイチェルにとっては数日前会って話しただけの他人じゃないか! しかもほとんど男子禁制で育てられた清らかなレイチェルにとって、いきなりプロポーズなんて恐怖体験では!?
「す、すまん…… 忘れてくれ」
俺は両手で顔を覆って、なんとか声を絞り出した。
「忘れたくありませんわ!」
「え……」
「あなたは初めて会ったときから、十年来の親友のようにわたくしを理解してくださいました。そんな方、きっとどこにもいらっしゃらないもの!」
そりゃあ君を四六時中のぞいてる危ない男なんて、俺以外にはいないだろうなぁ。
心優しいレイチェルは、俺のプロポーズを受け入れてくれた。
「――というわけで、俺たちは結ばれることになった」
各種族の族長たちに報告すると、
「我々亜人の地域にいてくださるのですか?」
「それは助かる!」
「我々は魔力量が多いとはいえ、聖魔法は苦手でして……」
「レイチェルさんがいてくれれば医者いらずですな!」
みんな手放しで喜んでくれた。俺の恋が実ったことについてではなく、偉大な聖女であるレイチェルが我々の土地に住んでくれることに対して。
「今後も私の聖魔力を役立てられるのね! とっても嬉しいわ」
それが彼女の本心であることは良く分かっている。だが、言っておかねばならない。
「レイチェル、俺は君に聖女の力があろうとなかろうと、君が好きだ!」
見る見るうちにレイチェルの頬が朱く染まってゆく。いとおしい彼女を抱きしめようとしたとき――
「ジュリアン、そういうの二人きりのときにしてくれよ」
ルーピ氏がニヤニヤしているのに気が付いた。
レイチェルは控えめに目をそらしながら、
「あの、ジュリアン? 私は異常に聖魔力が多いのですが、そこは大丈夫でしょうか……?」
「ん? 人族の異常値って俺たち竜人族なら普通だよ?」
獣人の皆さんもうなずいている。
「はっ、そうですわね! 私、ここでは化け物じゃないんだわ!」
「当たり前じゃないか。多種族連合ではみんな違うのが当たり前さ!」
「素敵! ここが私の居場所になるのね!」
俺の首に飛びついて来たレイチェルを、俺はぎゅっと抱きしめた。
「そうさ。いつだって俺の腕の中が君の居場所だよ!」
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