【完結】あやかし無双伝~水龍王の精霊力をその身に宿す少年は白蛇の妖と言われ化け物扱いされるが、魔道学院ではなぜか美少女たちに追いかけられる~

綾森れん

文字の大きさ
11 / 84

第11話、最強魔術が炸裂する

しおりを挟む
 ゴッグワァアァァアン!!

 すさまじい大音響とともに、土蜘蛛の足元で大爆発が起こった。毛の生えた太い手足が数本、ちぎれ飛ぶ。

 ゴッ、ゴゥン、ゴウン!

 何本も土柱が立ち上がり、飛び交う土くれにボッと火がつく。

「ギ、ギイイィィイイィ」

 耳ざわりな鳴き声のようなものは、土蜘蛛の悲鳴だろうか。その巨体は見る見るうちに炎に包まれ、いだことのない異臭をはなって燃え盛る。

 いまや地下室は真昼よりなお明るい。巨大な炎がすべてを照らし出す。

 俺は額から流れる汗に目をしばたいた。

 地中からはさらに土砂があふれだし、それぞれのかたまりが発火する。古い木の天井を巨大な炎の舌がいく度もめるが、玲萌レモの結界にさまたげられて燃え移ることはない――はずだった。

 土蜘蛛の真上の天井がメキメキと音を立てて崩れ落ちて、俺ははじめて異変に気付いた。

玲萌レモ?」

 振り返ると、肩で息をしながら蒼白な顔の玲萌レモがなんとか風の結界を維持していた。

 俺たちの上にも木片が落ちてくるが、俺の結界が張られたままなので当たることはない。

玲萌レモ、大丈夫か!?」

 俺が駆け寄ったのと、彼女の身体がゆっくりと倒れたのはほとんど同時だった。両腕に汗ばんだ彼女の背中を支え、俺は叫んだ。

「ここからすぐに逃げよう!」

 玲萌レモがなにか言おうとしたその時、建物の崩壊が不自然に止まった。

樹葵ジュキ、あたしの結界、補強した?」

 玲萌レモがかすれた声で問う。俺は黙って首を振ると、迷わず彼女を抱き上げた。

 土蜘蛛の様子も確かめず石段を登ろうとしたとき、階段の上に人影が見えた。

たちばなさま、玲萌レモさん、ご無事ですか!」

 人影の主が叫んだ。

惠簾エレンちゃん……」

 玲萌レモが安堵したようにその名を口にする。

「龍神さまの強すぎる魔力を感じたのでなんとか建物の崩壊を止めようと、わたくし遠隔結界を張ったのですが――」

 そんなことができるのか。さすが優秀な巫女だ。

「助かった。俺のせいで玲萌レモが大変なんだ」

 階段をのぼる俺に抱えられながら、

「ただの魔力切れよ。情けないね」

 玲萌レモが笑った。だがその笑みは弱々しい。

「すまねえ、俺のせいだ。俺が考えもなく全力で術を発動させたから」

 彼女を守るために魔物をやっつけようと思ったのに、俺のせいで玲萌レモを苦しめるなんて、自分が馬鹿で嫌になる。情けねえのは俺のほうだ。

 玲萌レモを両手に抱き上げたまま、崩れかけた石段を慎重にのぼりきると、惠簾エレンが心配した顔で待っていた。「救護之間きゅうごのまに寝台がありますから、そこに玲萌レモさんを寝かせましょう」

 魔道学院では修行の際にけがをする学生もいるから、学内に簡単な治療を受けられる部屋があるのだ。

たちばなさま、玲萌レモさんを背負って救護之間きゅうごのままで行っていただけますか?」

「当然だよ!」

 俺は力強くうなずいた。が、ここだけの話、もはや腕が限界だった! 玲萌レモは小柄で細身なのだが、悲しいことに俺があまりでかくなく、体格差がないからつらい……! 二重に情けねえっ!!

「ひふみ よいむなや こともちろらね――」

 俺が玲萌レモを慎重に床へ下ろすと、惠簾エレン祝詞のりとを唱えだした。俺におぶさる力すらなさそうに見えた玲萌レモの身体に活力が戻っていくようだ。

「わたくしが玲萌レモさんに魔力を補充して差し上げることはできませんが、せめて体力だけでも回復していただきたくて」

 惠簾エレンはそう言って、玲萌レモを背にかかえて立ち上がった俺にほほ笑んだ。

「そうだ惠簾エレン、どうして旧校舎に来てくれたんだ?」

 玲萌レモを背負って旧校舎内を玄関まで歩きながら尋ねると、

「ご神託がおりたのです!」

「ご、ご神託?」

「はい。わたくし時々、神様のお告げが直接、頭に響きますので」

「そいつぁ便利だなあ」

 なんとなく棒読みになる俺。これも神通力じんつうりきの一種なのか? 俺の理解をこえている。

「旧校舎へ入りましたら、ものすごい爆発音が聞こえましたが、一体なにがあったのです?」

 惠簾エレンの澄んだ声に問われて、

「大変言いにくいのですが」

 と思わず敬語になる俺。「肝試しがてら旧校舎の地下に降りてきたら、ご大層な封印がありやして、どんな魔物が眠ってるのかな~ワクワク、と封印を解いたところ、伝説の魔獣たる土蜘蛛さんがお目覚めになりまして。いや~まいったまいった」

 惠簾エレンは思いがけず、くすくすと笑いだした。「まあ、龍神さまったらやんちゃですこと!」

 おっしゃる通りなんですが…… この、俺より年下だよな!? なんだか人生一周してきたような落ち着きっぷりなんだが。

「ぜんぶ俺のせいなんだ。玲萌レモにつらい思いさせて、マジで後悔してるよ」

 本音を打ち明けると玲萌レモが俺の耳元で、

樹葵ジュキ、あたしだって一緒に旧校舎探検、楽しんだし、あの強力な結界を見ながら樹葵ジュキを止めなかったんだから、ぜんぶきみのせいなんてことはないよ!」

 と反論してくれた。彼女の熱い吐息が耳にかかる。きっと熱が出ているのだ。

玲萌レモ――」

 俺が次の言葉を続ける前に、突然惠簾エレンが足を止めた。旧校舎の敷地を出るところで、だ。

「どうした?」

 問いかけるが、惠簾エレンの目が俺を見ていない。

「――しき存在ものはふたたびよみがえる」

 抑揚のない声を発した。

「それ、ご神託?」

 俺の背中から玲萌レモが尋ねた。

「はい」

 と、うなずいたのはいつもの惠簾エレンだった。黒い瞳に光が戻っている。荒れた庭の向こう、俺の術のせいで半壊となった旧校舎を振り返ると心細そうにつぶやいた。

「土蜘蛛復活のお告げでしょうか……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...